2010年03月13日

眠くならない花粉症の薬のしくみ

私と違って私の免疫系は学習意欲が旺盛なのか、花粉への免疫反応は10歳くらいの時に習得済みで、その後も着々とバリエーションを増やし、今では春先のヒノキ科スギ・ヒノキから夏場のイネ科ブタクサ、秋口のキク科のカモガヤまでそれぞれの季節で様々な風媒花の花粉を「敵」だと学習してしまいます。

そんなオールシーズン(冬は除く)花粉症な私にとって抗ヒスタミン剤のアレグラはほとんど常備薬です。

花粉症の薬を飲んでいると言うと「眠くならない?」とよく聞かれるのですが、最近の抗ヒスタミン剤は眠くならない工夫がされているのでほとんど眠くならないはずです。(プラセボなどは有り得ますが・・・)

そもそも何故眠くなるのかと言うと、花粉症の原因となるヒスタミン受容体(H1受容体)が脳にもあるからなんですよね。ヒスタミンと拮抗する抗ヒスタミン剤により脳のH1受容体の活性を落とすと眠くなるようです。

では、どうやって鼻には作用して脳には作用しない様に薬を作るのか、という話です。

経口薬ですと、局所的に機能させるのはとても難しいのですが、「脳」は少し違うんです。

脳と言うのは特殊な器官で、高い恒常性を保つため、通常の器官とは異なる守りがされています。

それは血液脳関門と呼ばれる血液と脳の組織液を隔てる特殊な物理的障壁で、この脳関門は分子量が大きなものや水溶性の高いものは通過できません。


昔の抗ヒスタミン剤はこの脳関門を通過してしまっていたので、眠気の原因となっていた訳です。

本来は逆なのですが、どうにかして「脳関門ではじかれる抗ヒスタミン剤」を作ろうとして作られたのが一般に「第二世代」と呼ばれる抗ヒスタミン剤です。

私が服用しているアレグラと言う薬はIUPAC名では(RS)-2-[4-[1-ヒドロキシ-4-[4-(ヒドロキシ-ジフェニル-メチル)-1-ピペリジル]ブチル]フェニル]-2-メチル-プロピオン酸らしいのですが、ポイントなのは「プロピオン酸」の部分です。

アレグラは、副作用が問題となった抗ヒスタミン剤「トリルダン」を改良した薬です。

このトリルダンという薬は「眠くならない抗ヒスタミン剤」として世に広まったのですが、この薬は心臓に対して毒性がある等副作用もありました。

ただ、「眠くならない」のは事実で、そのポイントは「肝臓でカルボン酸型代謝物」となって機能するところでした。カルボン酸となることで水溶性が増し、脳関門ではじかれる様になった訳です。

しかも、毒性があったのはカルボキシル基がつく前の物質で、カルボキシル基がつくと毒性はなくなります。

ということは、その代謝物であれば、「眠くならない」上に、「毒性もない」薬となる訳です。

それがアレグラです。

ただ「COOH」が一つついただけなのですが、機能はそのままで毒性はなくなった訳ですね。

毒性があっても研究を諦めなかった科学者の成果と言えます。


posted by new_world at 21:20| Comment(5) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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