2005年05月18日

ゆで卵を生卵に? +プリオン病

ゆで卵が生卵になるような、焼いた肉が生に戻るような、そんな反応が最近発見されました。もちろん、そのような反応であって、今のところゆで卵を生卵にすることは出来ませんけどね。

一般に、熱を加えるとたんぱく質が凝集して固まります。ゆで卵になる現象で、これはたんぱく質の構造的な理由から生じる現象です。

たんぱく質はアミノ酸の鎖です。アミノ酸には親水性のものと疎水性のものがあるのですが、水に満たされている細胞内では疎水性アミノ酸同士は集まろうとします。

油が水の上で丸くなるのと同じです。

そのため、細胞内でたんぱく質を合成する時には疎水部分をカバーしながら組み立てる(分子シャペロン)のですが、出来上がったらカバーは外れます。

出来上がったものは“内側”に疎水部分が来るようにできています。

ところが、熱を受けてアミノ酸の鎖が動いてしまい、疎水部分が表に出てしまうのです。

細胞内には大量のたんぱく質が存在し、たんぱく質内には疎水部分は存在します。

そのため、表面に出てしまった疎水部分が互いにくっつきあってしまうのです。

そして、大きな塊になって固まります。

凝集によって、アミノ酸の“鎖”であるたんぱく質は“鎖が絡まった”ような状態になってしまうのです。


勿論、それの防御・再生システムも存在します。

多少体温が上がっても体が固まらないのはそのためです。

ところが、強力に熱ストレスが加わると、防御・再生システムが間に合わず固まってしまいます。

これまでは、“正常な折り畳みが解かれた”状態から再生するシステムの存在は明らかになっていましたが、“凝集してしまった”ものを再生するシステムは見つかっていませんでした。

ところが数年前、HSP104という分子シャペロンが大腸菌から発見されたのです。

これはいわば“ゆで卵”になったものを“生卵”に戻す、“ぐちゃぐちゃに絡まった糸をほぐす”ようなことを行っているのです。


どうやって解いているのかはまだ分かっていないそうです。


たんぱく質の性質は中身よりも実は形が大きな役割を果たしています。中身より外見なんです。ですから、熱運動によって形が崩れたら正常に機能しなくなるのです。

私も最初に習った時は違和感を感じたのですが、実際、アミノ酸配列が80%以上異なるたんぱく質が形が似てるという理由で同じ機能を持っていることはよくあります。

それに同じアミノ酸配列でも性質が全く異なるものもあります。形が違うのです。

その代表が“プリオン”です。

聞いたことがあると思いますが、クロイツフェルト・ヤコブ病や狂牛病の原因とされるたんぱく質です。

今の所、DNA(RNA)のない唯一の感染症です。細菌・ウイルスとは違います。

人間を含め、プリオンと呼ばれるたんぱく質は体内に存在します。

プリオン病を起こす異常プリオンは正常プリオンと同じアミノ酸配列ですが“形が違う”のです。

しかも、仕組みはよく分かっていないのですが、この異常なプリオンが正常なプリオンに接触すると正常なプリオンの形も異常なプリオンと同じものになってしまいます。

正常プリオンは脳に多く存在するので脳の働きに悪影響を及ぼすのです。

まぁ病原菌よりも毒薬に近いですね。しかも、体内で“増える”毒薬です。


このようなたんぱく質の形の変化による病気をフォールディング病といいます。フォールディングとは折り畳みという意味です。

一般に変性したものは凝集し、体積が減ります。しぼむのです。だから、狂牛病の牛の脳などは小さくなっています。

プリオンの機能や異常プリオンの増加のシステムは判明していません。感染方法も分かっていません。

牛to牛であれば脳の一部を1mg食べさせても感染するのに対し、牛to人の場合はそこまで感染力はないと考えられていますが、よくわかっていません。

アメリカ人がインタビューで『オレは強いからかからないよ』とか言っていましたが、普通の病気とは異なりますので、強い齢の話ではありません。

いくら健康でも、フグを食べればしびれます。


posted by new_world at 06:20| Comment(10) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あ〜こわい〜
昨今の病は、原因が半分くらいわかるので、なお恐いです。

固まったたんぱく質がとけるなら
いろいろなことに使えますね
医療・美容・食品〜

でも、こういうことは出来てしまっても
いい物なのでしょうか??

でも、勉強になりました
おおきに
Posted by 京の姉さん at 2005年05月18日 10:38
科学は進歩しますからね。

科学で得られた知識・物質を使うかどうかは人間の心の問題ですね。
でも、知っちゃうと使いたくなるのが人間ですね。
核分裂も使わなければ一つの自然現象ですが、使っちゃえば原子炉や核兵器です。
クローン技術も同じです。


学問としても、生き物から学ぶことはまだまだ沢山あります。
科学は未だ生体システムの域に全然届いていません。

人間が考える以上に生物は上手くできています。

神様が作ったとしか思えない仕組みが幾つも見つかっています。
それでもまだわかっていないことの方が多いです。

大学の授業でも『これは分かっていない』が何度も出てきます。1回の授業で10回くらいこのフレーズが登場することも珍しくありません。

学部生に教える程度の内容でも分かっていないことが多いのです。


まぁだから楽しそうなのですけどね。
Posted by new_world at 2005年05月18日 18:25
プリオン…気にせず肉食べまくってますが、
後々後悔しそうです。早くお薬作ってください^^;

というか自分の専門なのにこのあほなコメントは何だ、、(笑)
Posted by charley at 2005年05月18日 23:20
専門の方にはかなり見苦しい内容になっていると思います。
すいません・・・私の限界です。

私も気にせず食べまくって・・・いや、牛肉は値段がお高いのであまりたべていませんね。
でも、食べ物は基本的に国産のものを買っていますね。「国産だから安全」とは言えませんが、何ともいえない安心感があります。
Posted by new_world at 2005年05月19日 00:24
ぃぇぃぇ、研究室に入る前の人の方が最新の事については
詳しいと思いますよ〜。
専門はどうしても重箱の隅になりがちですので^^;
これからもレベルの高い記事よろしくお願いします(・ω・)
Posted by charley at 2005年05月24日 15:41
レベルに低い記事しか出せないと思いますが・・・出来るだけ頑張ります。
Posted by new_world at 2005年05月24日 22:36
異常プリオンは、どうやって増えるのでしょうか?
Posted by おおくぼ at 2005年12月15日 23:01
おおくぼさん
よく覚えていませんが、確かまだよくわかっていなかったと思います。

異常のものが結合して何らかの酵素反応が起きているんじゃないんですか?

ただ、構造を変えるからには何らかのエネルギー源が要りそうですが、どうなんでしょうね。

すみません、わかりません。
Posted by new_world at 2005年12月16日 17:27
こんにちわ
異常プリオンに含まれる酵素がかんけいしてるんじゃないのですか。
アルツハイマ−病や脳の萎縮に関係があるんじゃないですか。
Posted by むっち at 2007年01月31日 10:37
むっちさん
プリオンに含まれる酵素、という表現が適切なのかは分かりませんが、プリオンが酵素として働いているとはいえますね。

酵素というのは物質名というより特定の機能をする物質の総称で、大体がタンパク質です。酵素の詳しい定義は知りませんが、異常プリオンが持つ性質も酵素作用といえなくはないかもしれません。
Posted by new_world at 2007年02月01日 09:20
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