2005年06月11日

脅威のアブラムシ

理学部の図書館で『アブラムシの生物学』(東京大学出版)という本を見つけました(普通に生物学の教科書みたいです・・・)。
先日アブラムシ関連の記事を書いたばかりだったので、ふと気になって読んで見たのですが、アブラムシが更に怖くなりました。

アブラムシのお腹の中にはひ孫までいるんです。

アブラムシは次世代を胎内で育てます。その次世代の胎内には既に次々世代が育っていて、その次々世代の中には完成した卵母細胞があるのです。

有性生殖をしないから出来る芸当ですね・・・。

怖すぎです。生まれてから3日で子供が生めるのもうなずけます。すでに、生まれるときにはその胎内で育っているのですから・・・。

しかも、動物における蚊と同じように、病原菌などを媒介しますし、栄養の取りすぎで植物の生育を妨げます。

そこで、人は農薬を使ったりするのですが、アブラムシはこの世代交代の速さなどから薬物に対する耐性が着きやすいのです。

病原菌みたいですね・・・まぁ大腸菌は20〜30分で分裂しますが。(人間はDNAの複製だけで20時間弱かかります)


ただ、勿論、アブラムシも欠点があります。

アブラムシは植物の師管に流れる液体を吸いますが、この師管液、栄養価が低いんです。
糖類は捨てるほどある(アリの餌になるやつです)のですが、他の栄養素が殆どないんです。必須アミノ酸すらろくに含まれていません。そのため、アブラムシは体内に菌を飼っていて、その菌が植物が作れるアミノ酸から必須アミノ酸を合成しています。

このようなことをしてまで栄養を確保しなければならないくらいに厳しい食糧事情です。そこでアブラムシは、特定の植物に特殊化することで成長効率や植物の発見能率を高くしようとしたようです。

種によって幅はあるのですが、基本的にアブラムシは寄生できる植物が決まっています。一種かその近縁です。
これは他の昆虫の多くにもいえます。カブトムシの集まる木の種類が決まっていたりするのも同じ理由だと思います。

そして、その他にもう一つ重要な要素があります。

窒素です。

一部の菌で大気からの窒素固定(※)が確認されていますが、アブラムシ内の菌では行われていません。
つまり、窒素も植物に依存しなければならないのです。(ただ、植物の師管液に含まれる窒素化合物は少量で、アブラムシは窒素をリサイクルして効率的に利用しています)

そのため、植物の窒素吸収が減る時期にはアブラムシは活動できません。

植物が窒素を取り込むのは成長するときです。

つまり、春から初夏です(今です・・・)。

夏になると多くの植物は成長が止まります。そのため、アブラムシは食糧難に直面します。
しかも、アブラムシは寄生主がある程度限られているので時期をずらして移り歩くようなことは中々出来ません。(二つの植物を渡り歩くものは結構います。春は木に、夏は草に、見たいな感じで)


ですから、夏になるとアブラムシは活動を弱めないといけないのです。
種によってはもう卵を産んで店じまいしてしまうものもいます。つまり、活動期は春から初夏で、夏から冬は卵で動かないんです。





・・・まだまだ書きたいことは沢山あるのですが、これくらいにしておきます。

アブラムシの生物学』には他にも「遺伝」や「天敵」、「アリ」、「体内の細菌」、「ウイルス媒介」などについて書かれていました。

興味がある方は読んでみてください(上の書名のところのリンク先はアマゾンの書籍情報です)。

値段は結構高い(約6500円)ので、見たい方は図書館で探された方がいいですね。図書館にあるかは分かりませんが・・・。


※窒素固定
大気の窒素を植物が利用可能な硝酸イオンやアンモニウムイオンなどの形に変化させることを窒素固定といいます。ただし、窒素の固定というのは大変難しい技術のようです。

植物が利用可能、と書いたとおり、殆どの植物が窒素固定は出来ません。ただ、一部の植物は窒素固定が出来ます。しかし、その殆どが植物内の菌類によるものです。

窒素固定能力のある代表的な植物は、ソテツ、ヤマモモ、マメ科の植物などです。これらは全て菌を飼っていて栄養を供給する代わりに大気から窒素を取り込んでもらっています。
そして、その植物が他の植物の窒素源になるのです。
つまり、窒素固定能力のある植物は肥料となります。現在では化学肥料を使っているところが多いようですが、転作作物に大豆を育てたり、休耕の田畑にクローバーや蓮華草を植えているところも多いようです。蓮華草やクローバーもマメ科です。
あと、水田ではアカウキクサという植物なども窒素固定用植物として利用されているようです。



posted by new_world at 00:12| Comment(11) | TrackBack(0) | 生態の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すごいですね、アブラムシ。

>完成した卵母細胞
ヒトの場合は、胎児の卵母細胞は第一減数分裂の前期までが終わった状態で出生し、思春期になって第一減数分裂の後期が再開するみたいですね。

これも不思議な機構ですね。
Posted by south_of_the_border at 2005年06月11日 02:44
いつも楽しく拝見させていただいております。

>まぁ大腸菌は1〜2時間で分裂しますが。

大腸菌は最適条件下で20分程度で分裂しますよ。
酵母で1時間〜2時間だったような気がします。


それはそうと、アブラムシのお腹の中を想像したら気持ち悪くなりました。
Posted by takerun at 2005年06月11日 08:30
も〜ほんと今アブラムシ大変ですよ。。。
ユリにこれでもかってほどついてる{{(>∇<)}}
消毒すると花がダメになっちゃうし
カマキリの子も一匹じゃまにあわない(笑)
凄い繁殖力ですね。。。
Posted by マチルダ。 at 2005年06月11日 11:19
south_of_the_borderさん
そうらしいですね。
卵母細胞を少し成熟させておいて、受精時に効率よく受精させるのが目的だと思います。前期は染色体が形成される段階ですし、詳しくは知りませんが、きっと安定的に保存できるのだと思います。

生物には一次分裂の前期で終わるものと二次分裂の中期で終わるものが多いそうです。一次分裂の前期で一時中断されるものも、排卵時には二次中期で排卵されるようです。

二次分裂の中期で終わるものとして有名なのが(日本だけ?)アフリカツメガエルです。
ご存知かもしれませんが、アフリカツメガエルとかでも、受精するまでに分裂がある程度進みます。これに関わる因子を日本人が発見しました(物質までは特定できませんでしたが)。maturation promoting factor(卵成熟促進因子)と名づけていたのですが、他の科学者によって、細胞分裂が起こる前には必ずこの物質が生じることが確認されMphase promoting factor(有糸分裂期促進因子)と呼ばれるようになりました。この後者のMPFを発見した人たちはノーベル賞を取ったのですが、残念ながらその日本人は受賞可能人数の都合上(?)外されてしまいました。
Posted by new_world at 2005年06月11日 12:33
takerunさん
お恥ずかしい・・・
また思い込みで間違えました。勉強不足なので記憶が曖昧です。

ご指摘ありがとうございました。

訂正しておきます。


アブラムシ、凄いですよね。


マチルダさん
てんとう虫とかを沢山放たないといけませんね。カマキリも食べるんですか?
カマキリの卵があればいいですよね。気持ち悪いくらいに沢山出てきますし。
昔、家の中で・・・(子供にはあることです・・・)
Posted by new_world at 2005年06月11日 12:34
はじめまして。
突然のコメント失礼いたします。

アブラムシで検索していたらたどりつきました。
こないだ演習で使ったのがきっかけだったのですが、、アブラムシってほんとにエキサイティングですよね!
「アブラムシの生物学」読みたくなりました。

それから。
なんか、ほかの記事をみてみたら、同じ大学っぽいです!
しかも……熊本にいらっしゃったことが??

私もはるばる熊本から京都に出てきて3年目になります。
なんとなくご縁を感じてしまいコメントしちゃいました。
ではでは。

なんだかおもしろそうなブログなのでこれからものぞかせてください(*^^*)
Posted by 小波 at 2006年05月13日 01:21
小波さん
はじめまして。

アブラムシは凄いですね。初めて知った時には驚きました。

制約はあるものの、少々反則気味な増殖能力ですよね。

まぁそれでも、これまではある程度つり合いが取れていたんでしょうけど、最近はヒトによる環境操作で、大発生しやすくなっているようですね。


同じ大学で、熊本の方なんですか?
それはそれは。
私も中学・高校はずっと熊本に居ましたし、帰省先は熊本です。


面白いかは分かりませんが、ぜひ、読んでみてください。
Posted by new_world at 2006年05月13日 09:25
アブラムシ、やはり大発生しやすくなってるんですか〜。
今の時期、大学内にもいっぱいいますよね。気持ち悪いくらい、笑。

実家が熊本にあるんですね!
なんだか親近感。
私は熊本市の東隣の町に実家があります。
それから、学部は違いますが私も実は生物系だったりします、笑。
今年から理転したばかりなのでぺーぺーですが。
new_worldさんの博識さに驚くばかりです。

勉強しなきゃ。
Posted by 小波 at 2006年05月13日 13:57
小波さん
天道虫などの天敵が少なくなってきているようです。

私の実家は熊本市の東端の方ですよ。結構近いかもしれませんね。

私も大学に入ってから生物は始めたんでまだまだです。(大学入試は物理&化学)
なので、高校から生物をしている一つしたの妹(現名大の農学部)に「そんなのも知らないの?!」って怒られてばかりです・・・。
Posted by new_world at 2006年05月14日 23:43
>熊本市の東端

本当ですか!!!!!
具体的地名を語り始めたいところですが、ネット上なので控えておきます(-_-;)

>妹さん

頼もしい妹さんですね、笑。私も一応生物Uまではやったものの、2年ブランクがあると忘却が激しく。。
おたがいがんばりましょう、笑。

アブラムシと全然関係なくなってしまいました…ごめんなさい。
Posted by 小波 at 2006年05月15日 01:48
小波さん
うちの妹は最強です・・・某T大に落ちたのが悔しかったのか、名古屋で狂ったように勉強してますよ(前から恐ろしいくらい勉強していましたが・・・)・・・

出来損ないの僕には嘲笑しかくれません。



アブラムシの出てくる話は、他にもいくつかあるんで、時間があれば見てみて下しさい。

セイヨウタンポポはクローン
http://blogs.dion.ne.jp/new_world/archives/1236216.html

アブラムシ、関東で大発生
http://blogs.dion.ne.jp/new_world/archives/1238180.html

アリに化けるハチ
http://blogs.dion.ne.jp/new_world/archives/1364635.html

アリは共生しているアブラムシを食べる
http://blogs.dion.ne.jp/new_world/archives/1367928.html
Posted by new_world at 2006年05月16日 23:48
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