2005年06月17日

生体膜2 フリップ・フロップ  (+マクロファージ)

※最後の3分の1は免疫細胞マクロファージの話です。

細胞膜「生体膜1」で書きましたが、二重の膜の表と裏は非対称です。

細胞の内側と外側の膜を構成している脂質の組成が違うのです。


今回取り上げるのはフリップ・フロップという現象で、この膜の非対称性に大きく関わりのある現象です。


フリップ・フロップとは、二重膜の内側の膜と外側の膜で脂質が入れ替わることで、比較的高頻度で行われています。(因みに、フリップが細胞の外側から内側、フロップが内側から外側への移動です。)

ただ、このフリップフロップはエネルギーを結構食います。

「生体膜@」で書いたとおり、脂質二重膜の中間部は向かい合った疎水部分です。しかし、脂質の頭部は親水部分なので、内側の膜と外側の膜を移動する為には親水部分が疎水部分の中を通らないといけなくなります。

水に浮いた油を容器のそこまで持っていくには力を加えないといけません。それと同じで、内側の膜の脂質と外側の膜の脂質を入れ替える時にも力、エネルギーが必要なのです。


では、なぜエネルギーを使ってまでフリップ・フロップをする必要があるのでしょうか?

・・・実はあまりよく分かっていません。



今回は分かっている中から2つだけフリップ・フロップの効果を挙げておきます。

まぁ簡単に言うと、『変化しちゃったのを戻す』のと『あえて変化させる』ことです。

まず挙げられるのが『膜の形成』です。

膜の主成分である脂質は細胞質内のタンパクによって作られます。そのため、膜の材料は細胞の内部から運ばれてくるのです。

膜は二重になっているため、細胞の内部から運ばれてきた脂質を外側の膜へも運ばないといけないんです。


そこで、ある種の酵素が内側の膜の脂質を外側の膜へ移動させていると考えられます。(膜形成の詳しい機構は分かっていません。)


もう一つは、ある種の細胞内情報の外部への伝達です。

有名なのが“細胞が自殺する時”の膜の変化です。

細胞は、外側の膜に出ている脂質を変化させることで、『自分を殺してくれ』と言うんです。

この方法は、次のようなものです。

脂質ホスファチジルセリン(PS)は普段は内側に分布していて、偶然外側に出てきても酵素により内側の膜に引き戻されます。

ところが、細胞死をする細胞ではその酵素が不活性化して、この脂質PSが外側の膜に出てきても内側の膜に戻っていかないのです。

しかし、酵素の働きなしで偶然内側の膜から外側の膜に出ていく確率はかなり低いです。

そこで細胞は、別の種類の酵素を活性化し、2層の膜の脂質をランダムにどんどん入れ替えていきます。

それによって、本来は外側の膜には殆どないその脂質PSが外側に多く出てくるのです。


それを認識したマクロファージ(貪食細胞※)などの細胞がこの細胞を食べてしまいます。


勿論、その脂質PSがその変化で外に出される為だけに内側にいるわけではありません。

その脂質、ホスファチジルセリンは、主要なリン脂質の中で唯一マイナスの電気を持っていて、この脂質が多く分布する内側はマイナスの電気を持つことになります。そのため、プラスの電気を持った物質をつなぎとめておくことが出来るのです。

また、神経細胞における働きも注目されており、アルツハイマーなどの予防のサプリメントとしてホスファチジルセリンを服用する人もいるようです。(これは詳しくは知りません)


※マクロファージ(貪食細胞・大食細胞)
免疫系の細胞の一つで、ほぼ全身に存在します。名前の通り、よく食べる細胞です。

肺では呼吸によって侵入してきた異物を食べていますし、肝臓や脾臓では送られてきた損傷した細胞(寿命が尽きた血液の細胞や攻撃を受け弱ったウイルス・細菌など)を食べています。

マクロファージなどによる免疫は自然免疫と言われ、多くの人が思い浮かべる免疫とは異なります。

普通の人が考える免疫は予防接種やアナフィラキシーショックなどで登場する獲得免疫の方でしょう。

獲得免疫は後天的に獲得する免疫です。過去にかかった病気などを記憶しているものです。

ただ、獲得免疫は記憶している特定の相手には強力な攻撃能力を持つのですが、それ以外には攻撃しません。

それに対して自然免疫は獲得免疫ほど強くはないのですが、様々な異物に対し攻撃を加えることが出来ます。



なぜこの二つが存在するのかと言うと、より多くのものに対応するという目的はあるのですが、より重要なのは、仕事の分担があります。

獲得免疫は種類が多い為、普段は少しずつしか存在しません(そうでないと体中が免疫だらけになってしまいます)。

よって、対象の異物が入ってきてから増えていきます。

ただ、それでは遅いので、とりあえず初めのうちは、常時存在する自然免疫が対処するのです。


免疫についてはまた今度紹介したいと思っていますのでこれくらいにしておきます


posted by new_world at 03:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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