2005年06月25日

免疫の原則

今回は免疫シリーズ第二弾『免疫の原則』です。大まかな免疫、免疫の原則について簡単に書きたいと思います。

私たちの体は、口や鼻からはいってきた異物を咳やくしゃみで物理的に追い出し、鼻水や涙ではタンパク質分解酵素によって異物を分解します。また、汗や皮脂にも殺菌成分が含まれています。

更に、消化器官にはいった異物は胃酸などで分解されますし、それでも失敗して腸まで行かれたら、下痢で流してしまいます。

体内まではいってくればマクロファージやT細胞などの免疫細胞が攻撃します。

このような二重三重の防御システムの原則は『自己と非自己の認識』にあります。

私たちは60兆個もの細胞で構成されていますが、私たちは自己の細胞を攻撃することはまずありません(たまにあります)。

すごいですよね。同じ種同士でも違う個体の細胞はまず異物と認識されます。

移植なんかで言う拒絶反応というやつです。

勿論、血球のように異物と認識されにくいものもあります。

でも、その方法は実に古典的です。

私たちの細胞は“目印”を表面に出してるんです。

免疫細胞はこれを認識して攻撃するかを判断します。

と、これは簡単そうですが、じつはそうでもないんです。

なんせ、私たちの細胞は60兆個あります。勿論同じ種類の細胞も沢山ありますので、60兆種類あるわけではないですが、細胞ごとに独自の“目印”をつけているのです。

なぜこんな面倒なことになっているかと言うと、細胞の目印が“細胞の断片”だからです。

断片といっても一部を切り取っているわけではありません。

作ったあまりなどをある種のタンパクに乗せて細胞膜に浮かべているんです。

なぜ共通のものを持たないかと言うと、その仕組みの応用が楽だからです。

細胞内にウイルスなどが進入してウイルスの部品などが製造されるようになると同じ機構でそれが表面に出てきて“自分の中に誰かいます”という印になるんです。

それをキラーT細胞が殺します。キラーT細胞は非自己の排除が仕事です。

ただ、普通の細胞も異物に対して無防備なのではありません。

細胞は内部にタンパク質を分解する器官を持っていて、そこで異物を分解・排除しています。

このタンパク質を分解する器官は、本来、タンパク質の失敗作を送り込んで分解するところなのですが、細胞表面についた異物に対しても反応します。

細胞表面に異物がついたら、細胞は小胞体という小さな袋で取り込んで、その器官のところまで運ぶんです。そして、分解します。

まぁ名前はどうでもいいですが、この取り込む動作をエンドサイトーシスと言います。

ただ、これは必ずしも細胞にとっていいことばかりではありません。

このしくみは結局は異物の侵入に他ならないからです。

実際に、これを利用して細胞内に侵入してくるウイルスや細菌がいます。

ウイルスや細菌はタンパク質分解酵素を中和するものを持っていて、進入しても分解されません。そして、内部で増殖します。

そして、細胞で手に負えなくなると、細胞は自殺を志願することになります。

ウイルスや細菌が増殖する為に作っているその部品の一部を細胞表面に出して、『もう自己じゃありません』とアピールするんです。

そうすると、それを認識したキラーT細胞はその細胞を殺します。


補足ですが、“目印”を出さなくなった細胞はナチュラルキラー(NK)細胞によって殺されます。


細胞の目印が細胞独自のものではない場合があります。

胎児の目印です。

母体内において胎児の細胞は“非自己”なので、そのままにしておくとキラーT細胞の餌食です。そこで、胎児の細胞は自分の目印ではなく“人類共通の目印”を出します。

生命の神秘ですね・・・。

人類共通って所がいいです。


posted by new_world at 00:39| Comment(5) | TrackBack(0) | 生活の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
自己の細胞を攻撃する疾患って厄介な奴が多いんですよね。
何人か症例で扱いました。
もともと鍼灸は”自己免疫力や自然治癒力を高める”作用があるといわれてますので。
本当に厄介で困りモノです・・・
Posted by waterpark at 2005年06月25日 01:32
となると、いずれMHC(HLA)の話が出てきますね?
スケールがどんどん大きくなってくる予感・・・
Posted by south_of_the_border at 2005年06月25日 03:13
waterparkさん
自己を攻撃するのは厄介ですね。
免疫抑制剤で免疫を抑えたら抑えたで他の所で異常が起きますしね・・・。

south_of_the_borderさん
MHCは近々話す予定です。
最近は生物学の基本的な部分の話が続いていたので、ちょっと応用的と言うか身近と言うか、捉えやすい内容の話をしたいなぁと思いまして。

まだ勉強を始めて3ヶ月(実質0に近いです・・・)ですので、うまく説明できるか心配です・・・。
Posted by new_world at 2005年06月25日 04:14
人間の中で人間ができるって不思議です。
私、抗生物質を飲んでお腹がぴーぴーに
なったのは異物だったんですかね?(笑)
Posted by マチルダ。 at 2005年06月25日 11:34
抗生物質で炎症が起きるのは、抗生物質で腸内細菌が死んでしまうのが原因のようです。
そこで、何も起きなければいいのですが、もし、病原性の菌が替わって増殖してしまうことがあるんです。そうなると、体は排除しようとするんです。
Posted by new_world at 2005年06月25日 20:14
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