2005年06月26日

アリに化けるハチ

アブラムシ関連の話です。たぶん、アブラムシは4回目の登場になると思います。

そして、今回の主人公はエイコアブラバチという蜂です。ご存知ですか?
たぶん知らないでしょうね。私も今日知りました。
この蜂はアリに化けます。
“化ける”と言っても、あくまでハチで、羽もありますし、大きさも化けるアリの半分くらいしかありません。形もあまり似ていません。しかし、アリは目が見えないので問題ないんです。
小学校の時に国語の教科書で出てきたと思いますが、アリは“臭い”で仲間を認識しています。そのにおいはコロニーごとに異なり、仲間の認識に使われています。

このエイコアブラバチはアリと同じ臭いを持ってアリの巣の中に進入するのです。
といっても、コロニー毎に異なる臭いを入手するのは極めて困難です。その過程でこのエイコアブラバチの多くは死んでしまいます。

エイコアブラバチは如何にしてアリの臭いを入手するのでしょうか?

その方法は実に強引で、アリを羽交い絞めにして臭いを自分にこすり付けるのです。
ところが、先ほど話したとおり、このハチはアリの半分の大きさしかないので、エイコアブラバチの多くはアリに近付く際に反撃にあって食べられてしまいます。また、アリを捕まえても救援のアリに食べられることも多いです。
アリは“凶暴な昆虫”なのです。
私たちにはそういった認識はありませんが、アリには強力なあごがあり、同じサイズの虫にとっては脅威なのです。

アリを押さえるのに成功したエイコアブラバチはアリをマッサージして落ち着かせます。動かなくなった隙に、体を密着させて臭いをもらうのです。30分ほどで臭いを得たエイコアブラバチは堂々と巣に侵入します。
ただ、この臭いは表面上つけた香水のようなものですので、いずれ取れてしまいます。
そこで、エイコアブラバチはこの臭いを巣の中で更新していくのです。

その入手方法は“餌”です。

アリは餌を胃の中にためています。空腹のアリは仲間から餌をもらうのです。その行動を利用して、エイコアブラバチはアリから餌をもらいます。
その餌の中に臭いの成分が含まれているのです。
アリはお互いのコミュニケーションを大切にする生き物で、巣の中ではお互いにグルーミングしあいます。毛づくろいではありませんが、お互いに相手をなめるのです。そのため、胃の中にアリの臭いの成分が多く入ってくるのです。

ただ、エイコアブラバチの本当の目的はアリではありません。

アブラムシです。(やっと登場)

エイコアブラバチはある種のアブラムシに卵を産むのです。
そのアブラムシはヨモギの根に寄生する種類で、アリの巣という地下要塞とアリという護衛兵から守られて増殖します。(因みに、アブラムシは穴は掘れませんので、穴の中までアリに運んでもらいます)
ただ、極めて強固な守りですが、アリさえだませれば、そこは天国なのです。
そのため、エイコアブラバチは臭いを得る為に命をかけるのです。

しかし、エイコアブラバチもそこまで“悪党”ではありません。
巣の中に侵入したエイコアブラバチは、アブラムシに卵を産み付けるのを夏まで待つのです。

なぜ“夏”まで待つのかというと、それはアブラムシの生活環に関係します。
アブラムシの時にお話したとおり、アブラムシの増殖は植物の成長と深いかかわりがあり、植物が成長を止めると窒素不足になって栄養失調を起こします。
そのアブラムシが寄生するヨモギは8月から9月にかけて成長が止まります。そうなるとアブラムシは栄養不足になり、羽があるものが生まれ、移動します。

エイコアブラバチは羽があるものが生まれた後のアブラムシに卵を産むのです。

有羽虫が飛び立った後のアブラムシは集合体としては死んでいます。食料がそこをついた城の中に閉じ込められているのと同じなのです。だから、エイコアブラバチに卵を産み付けられても何も変わらないのです。

更に、アリにとっても同様です。
栄養不足で蜜を出さなくなったアブラムシは必要ないんです。
蜂に寄生されようが関係ないんです。
しかも、エイコアブラバチはアリから餌を奪いはするものの、アリを殺すことはありません。
ただ、別にアリには何の利益はないので共生はしていないだけです。

アブラムシ+アリの共生関係+侵入者だけど大きな被害は与えないエイコアブラバチ。

このようなお互いにあまり損をしない関係の中でエイコアブラバチとアリとアブラムシが巣の中で同居しているんです。

もしエイコアブラバチが強すぎたりすると、アリやアブラムシが絶滅してしまいます。
侵入する側のエイコアブラムシも、相手に出来るだけ被害を与えないように侵入することで、自分の種もつないでいくことが可能になるんです。

それにしても、よくもまぁこんなに複雑な生態を獲得できたものです。

まずはアリの巣に、しかも、外からは見えないアブラムシを目当てに、侵入しようと思わないといけません。そのためにはアリが臭いで識別していることを知らないといけませんし、アリの押さえ方や落ち着け方を考えないといけません。更に巣に侵入した後は、アリから餌をもらう動作を覚えないといけませんし、アブラムシの場所まで行かないといけません。そして、アブラムシが増殖が終わるまでぼ〜っと待っておかないといけません。

必要な条件が多すぎますよね。

ここまで特殊化できるのは凄いです。

進化って凄いですね。



posted by new_world at 21:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 生態の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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