2005年07月08日

傷口の下で起こっていること

免疫シリーズ第4弾『自然免疫』です。

自然免疫は、獲得免疫ではない免疫です。

つまり、“二度とかからない為の”免疫ではなく、“初めての相手への”、そして、“獲得免疫が発動するまでの”免疫です。

まぁ免疫の先陣ですかね。

本陣であるB細胞(→抗体)やT細胞(→細胞のチェック・免疫の指揮)などが来る前の免疫です。

自然免疫を担当している代表的な細胞・分子は

1.マクロファージ :食べる・他の免疫系との連携
           →常駐の警備
2.好中球      :食べる(1回だけ)
           →非常時の即戦力
3.補体        :他の免疫系との連携・病原菌に穴をあける=殺す
           →免疫全体の援護
です。

また、獲得免疫との連携に重要なのは

4.樹状細胞 :菌・ウイルスを取り込みリンパ組織まで走り、敵の情報を本陣に伝える
         
です。

私が授業を受けている教官の専門はCの“樹状細胞”らしいです。かのロックフェラー大学の客員教授も勤める世界的な免疫学者らしいですが、見た目はただのおばちゃんで、授業はいまいちです・・・。

ま、それは置いておいて、本題です。

今回想定するのは『傷口から細菌が侵入した』というものにしておきます。全部話すと教科書調になってしまい、わかりにくいんで。図もかけないことですし・・・著作権と私の技術の問題で。



傷口が生じ、そこから細菌が入ってきたとします。

そうすると、まずは、その組織内にいたマクロファージによって取り込まれます。

敵を認識し飲み込むと、マクロファージは様々な伝達物質を放出します。その物質の効果は大きく分けて二つです。

1.炎症を起こす
2.他の免疫を呼び込む

1.炎症とは『痛み』『発赤』『発熱』『腫脹』を伴うものですが、これはマクロファージなどがあえて起こすもので、細菌やウイルスが起こしているものではありません。

炎症には次の三つの現象が背景にあります。

1.血管の拡張→血流の減速・血液量の増加
 ⇒発赤・発熱
2.血管壁の細胞を変化させ、白血球をくっつけやすくする。

3.血管透過性の上昇=白血球の取込みwith他の血液細胞
 ⇒腫れ⇒痛み

つまり、この炎症という現象は白血球を呼び込むためにあるのです。

血液の量を増やして速さを落とし、更に血管壁と白血球の接着を容易にして、且つ、血管壁の細胞に隙間を作らせて白血球を血管から取り込むのです。

その際には様々な血液内成分も同時に取り込まれる為、膨らんで神経を刺激して痛みが生じるのです。

また、痛みは患部を動かさないようにする為でもあります。

動かすと感染が広がったり回復が遅れてしまうので。

蚊に刺されたときにはこんなことが起きてるんですね。


そして、同時に、樹状細胞が外敵を取り込んでリンパ組織に移動し、待機しているB細胞やT細胞に情報を伝達します。

情報を得たそれらの細胞は活性化し、抗体の生産などを行い、患部に向かいます。

ここまでには数日かかります。

本陣が戦の準備をしている間、戦場では第一の援軍である即戦力の好中球が活躍します。

好中球はマクロファージ同様の食細胞で、様々な外敵を認識して食べて行きます。

ただ、好中球は外敵を1回しか食べられないので、食べてはどんどん死んで行きます。

その好中球の死骸はいわゆる膿です。

好中球は平時は血液中を漂っているのですが、炎症時にはマクロファージの伝達物質に引き寄せられて、患部へ集まっていきます。

そうして、幹部に集まったものは外敵を食べては死んで行きます。

これは、効率的な免疫の為の仕組みです。

マクロファージのような何度でも食べられるようなものはとりあえず組織内に最低限配置しておいて、一方で、短期間だけの戦力である好中球はすぐに動員できる状態で血液中を循環させておくのです。

そうすることで、外敵が現れた時にだけ、一箇所に集まって強い免疫作用を引き起こせます。

免疫は諸刃の剣でもあるので、できるだけ、効率よく使わないといけないのです。



そして、もう一つ重要な自然免疫があります。

補体です。

補体とは細胞ではなく物質です。

まぁ酵素というべきですかね。

補体は連鎖反応を起こして様々な補体を作っていきます。

この補体系は自然免疫としても重要ですが、獲得免疫の発動時にも効果を発揮しています。

補体とはもともと『抗体機能を補足する物質』として名づけられたものなのです。

補体は抗体が細菌などに結合するのを助けていて、最初は抗体応答の中で見つけられました。

ただ、今回は獲得免疫時の補体の働きではなく自然免疫時の補体の働きです

補体の自然免疫時の働きには次のようなものがあります。(それぞれ異なる補体が担っています。)

1.細菌の表面に結合し修飾する
 ⇒マクロファージなどに認識されやすくする。
2.伝達物質を放出し免疫系を活性化する。
3.細菌に穴をあける=殺す。

3.の穴をあける補体は最終形で、まずは免疫の活性化と目印付けが任務です。


とはいえ、一番目立つのは3ですね。

ほんと強烈です。

細胞に穴をあけちゃうんですから・・・本当に穴があくんです。


まず目印の補体が細菌の表面に結合し、続いて「槍みたいな補体」が円形に次から次に細菌表面に刺さっていって、穴が開くんです。


ただ、いくら効率的に連鎖的に活性化されていく補体でも、暴走したらとんでもないことになります。

自分の細胞に穴をあけられたら大変です。

そのため、正常細胞の表面には、“槍”の目印となる補体を取り除く仕組みや、補体自体にも、外敵細胞の表面付近でしか活性化しないように出来ています。

つまり、活性化した補体が広がらないように出来ているんです。

まぁ完全じゃないですけどね・・・。



自然免疫はこんな感じです。

結構あちこち省略しましたが、分量としては結構ありますね。図がないので分かりにくいです。とても。

ごめんなさい。




獲得免疫に負けず、自然免疫も綺麗な仕組みです。

免疫シリーズの次回は「獲得免疫」について何か書こうと思っています。


posted by new_world at 00:46| Comment(5) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
補体。懐かしいです。
C5b6789複合体とか覚えさせられました。

あと、蚊の唾液には麻酔作用があるんですね。

やっぱり生き物ってスゴイ。
Posted by south_of_the_border at 2005年07月08日 01:21
勉強になりました
蜂に2回さされたら危ないと聞いたことあります
これも免疫の副作用みたいなことなのでしょうか?
アレルギーも副作用みたいなもの?
んー、難しいです・・・・
Posted by miko3 at 2005年07月08日 07:18
south_of_the_borderさん
穴を開けるC5b,C6,7,8,9の複合体ですね・・・補体って命名が微妙です。C4のあとがC2だったり、(C5)aより(C5)bが大きかったりするのは覚えにくいです。

でも、ほんと上手くできていますよね。

miko3さん
アナフィラキシーショックですね。それは獲得免疫の抗体が原因となっています。
獲得免疫系・アレルギーなどについては、別の機会に(あるかは分かりませんが・・・)紹介したいと思っています。
Posted by new_world at 2005年07月08日 21:20
こんにち▼・。・▼」」」」ーワンワン!!
補体は心強いそんざいですな。
Posted by むっち at 2006年01月15日 16:01
むっちさん
補体ってあまり知名度はないですが、凄く重要な役割を担っています。
Posted by new_world at 2006年01月17日 03:25
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