2005年07月18日

PCR法〜DNAを増やす方法〜

PCR法。凄く単純な仕組みなんですが、凄く重要な技術です。

岡崎フラグメント」でDNAの複製について話しましたが、今回はその次の段階、DNAを人工的に増やすという話です。

今回紹介するのは、DNA鑑定やウイルスの特定などの際に使われるPCR法という方法で、聞いたことがある方も多いかもしれません。


ポリメラーゼ連鎖反応(ploymerase chain reaction)

これは、試験管内で細胞を使わずにDNAを増やす方法です。

手順はとても単純で次の3つを繰り返すのです。

1.熱により二本鎖DNAを1本ずつに分離する

2.プライマーを会合させる

3.DNAポリメラーゼによるプライマーの伸張

これを何度も繰り返すのです。

1回が5分程度で大体20〜30回繰り返します。


この技術の開発によりDNA解像度・速度ともに飛躍的に向上しました。

それまではDNAを増やすのには大腸菌に組み込んで増やしてもらっていましたし、増やさないで行う為には大量のDNAを入手する必要がありました。

しかし、このPCR法は1回(5分)で2倍になるので、10回(50分)繰り返せば1024倍に、20回(100分)で約100万倍、30回(150分)で約10億倍になります。

よって、ごく少量のDNAでも容易に増やすことが出来るのです。

大腸菌に作らせたらこの何倍も時間がかかりますし、DNA以外のタンパクなども増えますので材料も沢山要ります。


そして、なにより、PCR法は温度調節だけなので全自動で行うことが出来るのです。


ただ、この技術を可能にする為には熱に耐性のあるDNAポリメラーゼが必要でした。

DNAが一本鎖になる程の温度(そうなったら死んでしまいます)は私たちの体は想定していませんので、DNAポリメラーゼは熱に負けて機能しなくなってしまいます。

しかし、これは“私たち”のDNAポリメラーゼなら、です。

熱に耐性のあるDNAポリメラーゼが必要な生物から取ってくればいいのです。

つまり、高温地帯に生息する生物です。

高温地帯に生息する菌などにはその高温に耐えられるような機能がついています。それを取り出して、必要なDNAを増やしてもらうんです。


ただ、現在多く使われている耐熱性のDNAポリメラーゼは若干ミスが多いのです。その熱ではDNAの修復機構が働かないのが原因です。

まぁ最近は耐熱性の修復機構が発見され、利用されることもあるそうですが、修復機構なしでも充分な結果を得ることが出来るようです。

このPCR法の開発によってDNAを容易に増やすことが出来るようになり、細胞一つ、DNA1分子からでもDNA解析が可能になったのです。

あと、最近は逆転写酵素(RNAウイルス)を用いた、RNAの解析も行われているようです。



次回は、この次の段階、増やしたDNAを解析する革命的な方法(サンガー法)を説明したいと思っています。(いつになるかは未定ですが・・・)


※熱による二本鎖→一本鎖
DNAは、複製のことを考えか、鎖同士の結合は結構弱いんです。

高校で化学をやったことがある方なら必ず知っている“水素結合”でDNA同士はくっついています。

水素結合は「水を凍らせると体積が増える」原因となっている結合ですが、これは所謂「結合」(=共有結合)に比べて圧倒的に弱いのです。

ですから、温度が上がり分子が活発に動き出すと外れます。

ちょうど、氷が水に、水が水蒸気になるようなものです。


「熱とは物質の運動エネルギー」の事ですので、『温度が上がる=物質の運動が激しくなる』ということです。

暑く感じるのは、空気が速く動き、それがぶつかった時に大きなエネルギーを与えるのです。
逆に寒いと、空気は遅く動いているのであまりエネルギーを与えてくれません。だから、寒く感じるのです。

水が蒸発するのも、水分子がある程度激しく動くようになると、水分子同士の結合が切れて、水分子が飛び出していく為です。

同様に、DNAの二本鎖に熱を加えると、DNAが激しく動くようになり、二本鎖を維持できなくなって、一本鎖に分離してしまうのです。


posted by new_world at 11:34| Comment(2) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも訪問ありがとうございます。
で、久々にコメントさせて頂きます。
PCRってほんとうに増えるんです(正式には増幅っていうんですが)。
将来、遺伝子を使うことになったらいつかはやると思いますので体験してみてください。

RNAの解析でやるのはRT PCR、最近ではReal time PCRという方法があって遺伝子の発現量を見るために使います。
細胞内にたくさんあるRNAは逆転写後、PCR行うとたくさん増えますが(もしくはすぐに増える)、少ないRNAは逆転写しても少量のDNAしかできないので、少ししか増えません(もしくは増えるのに時間がかかる)。

他にPCRのエラーを利用するということもあります。
進化分子工学といって、たまに有用な変異がとれることもありますよ。

あと、ここでは関係ないんですけど、上の記事おもしろいですね。
ちなみに自分は大吉でした。
Posted by miya11 at 2005年07月18日 23:17
こちらこそ、御訪問有難うございます。
まだ授業で習ったり教科書で読んだりしただけなので、いつかやってみたいです。
エラーを利用するんですか?それは知りませんでした。
面白いですね。


大吉ですか?!

・・・。
Posted by new_world at 2005年07月19日 00:06
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