2005年10月15日

食べ物と同位体

同位体ってちょっと難しげな単語ですが、ちょっと面白い性質があります。

今回は、食べ物と同位体の関係についてです。

人間の体も原子でできています。殆どの原子には同位体があり、私たちの体もそれぞれの同位体を含んでいます。

勿論、放射性のある同位体も含んでいます。


そうそう、あれです。

木製のものの年齢を計る放射性炭素年代測定法、あれは、木の中の放射性元素の減少から年代を測定します。

つまり、木の中には放射性元素があるんです。

そして、木の中にあるということは木が死んでしまうと外部との物質の出入りがなくなります

マグマと岩石の関係と同じなんです。放射性炭素年代測定と岩石における放射年代測定は同じなんです。

生きている木は物質の循環のあるマグマと、死んでしまった木は物質の循環のない岩石と同じ状況です。


まぁ放射性同位体があるかどうかは今回のテーマではありません。

今回は、同位体の比がテーマです。

『地球の年齢』の時に書きましたが、地球上どの場所に行っても同位体の比は一定です。


ただ、生物とその残り(死骸など)は例外です。


生物は地球の中でも奇妙な物質系で、生物は生きることで複雑な化学反応を使い同位体の比を狂わせてしまいます

たとえば、植物によって取り込みやすい炭素(二酸化炭素)があったり、動物では取り出しやすい窒素(アンモニア・尿素など)があったりします。

勿論、同位体は中性子一個分くらいしか違わないので、どんなに生物システムが敏感でもそれを完璧に区分けすることは不可能ですし、無意味です。

ただ、中性子一個分でも微妙な差をもっていますので、その差に影響されて、微妙に同位体の比率が変わってしまいます。

しかも、動物や植物は様々な種類がおり、その生体システムも微妙に違います。

そのため、その同位体の影響も様々なのです。

炭素は「陽子+中性子の数」が12個(98.9%)、13個(1.1%)のものがあり、その殆どは12個です。そして、ほんの微量ですが、14個の同位体も含まれています。



植物のは大きく分けて二つの種類があります。

大きく分けるというか、“一部が違う”という方が適切です。

光合成のシステムが一部の種で違い、炭素13を多く取り込むようになりました。

その植物の代表はトウモロコシサトウキビです。

つまり、トウモロコシをよく食べる動物(ヒト)は炭素13が多いんです。

あと、種類や個体(環境・遺伝)によっても微妙に炭素同位体の取り込みやすさが違います。

そのため、それを食べる動物は各々炭素13の割合が違うのです。

勿論、ほんの微量ですので、調べるのは大変です。同じ植物を食べているものなどでは殆ど変わらないかもしれません。

ただ、私たちの場合、少し違います。

ヒトの場合、雑食性というよりも、食べる種類が尋常じゃありません

つまり、食べる植物種の割合によって、炭素の同位体比が変わるのです


穀物にしてもトウモロコシや小麦、米、他にも雑穀と呼ばれる穀物も食べています。

その中で、トウモロコシ、アワ、ヒエなどは炭素13を取り込みやすい種類の植物です。

そのバランスによって炭素13の割合が人それぞれ違うのです。



次に、窒素の話です。

窒素は「陽子+中性子の数」が14個(約99.6%)、15個(約0.4%)のもので構成されています。

そして、動物は窒素をアンモニア・尿素などで排出するのですが、そのシステムが、窒素14の方を多めに排出してしまうのです

そのため、食物連鎖が上の方の動物になるにしたがって窒素15の割合が増えます

これによって、どのような動物を食べてきたか、が分かります。

日本人では、現代よりも江戸時代の人の方が窒素15の割合が高いです。(江戸時代の人は結構身分に寄りますけど・・・)

なぜなら、江戸時代の人は“草食動物”を殆ど食べず、“魚”を中心に食べていたからです。

牛よりも、多くの魚の方が食物連鎖は上です。

魚には肉食種が多いからです。それに、肉食種を食べる肉食種も沢山います。

大型の魚になればなるほどその傾向が強いです。

つまり、マグロなどの大型の魚を多く食べる人は窒素15が多いのです。



今の日本人の窒素同位体比の分布は『江戸日本人』と『アメリカ人』の中間あたりです。勿論、食生活によって個体差はかなりあります。


あと、これは食生活に依存するので、海外へ移動すればその比も変わります

日本に長年いる日本人と、アメリカに長年いる日本人では、その比が大きく異なることになります。

また、日本にいてもアメリカ人のような食生活をすると同位体比はアメリカ人のようになります。


つまり、あなたの食生活によって同位体比は“あなたの色”をしているのです。



posted by new_world at 14:18| Comment(2) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
同位体が異なっても神経伝達物質の作用とかは変わらないですよね。食べ物によって気分や性格が変化するといわれますが、同位元素の違いでも関係すると思いますか?
Posted by yoyo at 2005年10月15日 17:46
yoyoさん
同位体同士の違いは『性質は同じ』とみなしていいレベルだと思います。含まれる量も変化する量もほんのわずかです。その程度の同位体の偏りによる生物への影響は分からないと思います。もしかしたら、違っているかもしれませんけど。
Posted by new_world at 2005年10月15日 21:00
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。