2005年10月17日

ガン細胞とは

ガン細胞の話です。

『ガン検診(PETなど)』『抗がん剤(イレッサなど)』『ガン保険』・・・色々と世間を騒がせているガンですが、実際にガン細胞がどのような細胞か知っている人って少ないですよね。

今日は、簡単にガン細胞を紹介したいと思います。

ガン細胞の基本的な定義は『命令なしに増殖する細胞です。

普通の細胞は“増殖シグナル”を受けて初めて細胞分裂するのですが、ガン細胞は、突然変異によってその命令を受けなくても増殖できるようになった細胞です。



しかし、ただの“無限に増殖する”だけの細胞であれば取り除けば終わりです。

科学的には“増殖する”というのが最も重要な要素ではあるのですが、病気としてのガンは、ガン細胞の“進化”が重要です。


ガンには複数の段階があるのです。


具体的に説明しますと、大腸がんの場合、大腸表面(物が通る部分)の柔毛の上皮細胞(まぁ皮の細胞です)が刺激を受けやすくガン化しやすいのですが、上皮細胞は基底膜というゴムのような少し固い膜の上に乗っています。

そして、次のような段階で進化していきます。

@自律的増殖能の獲得
上皮細胞が突然変異により増殖指令なしに増殖できる(自律的増殖)ようになります。それによって柔毛表面が出っ張ってくるのですが、外側の方は栄養が足りず生きられません
内側に行きたくても、基底膜が邪魔して進めない・・・

A基底膜を破る能力を獲得
基底膜が邪魔だったのですが、上皮細胞だった細胞のうちの一つが基底膜を破る能力を獲得します。そうして基底膜内に侵入し、基底膜内で増殖します。しかし、獲得できる栄養は血管の量に比例する為、そのままではあまり増えることは出来ません。
⇒血管を新しく呼び込みたい・・・

B血管を呼び込む能力を獲得
新しい血管を呼び込むように進化し、血管をどんどん呼び込み更に増殖していきます。しかし、物理的な空間に限界があり、ある程度までしか増えることが出来ません。
⇒場所が足りない・・・

C転移能力の獲得
丈夫な血管壁を通過する能力を獲得することで、体の様々な部位に進出していきます。移動した各器官で適切な形に進化し、その中でどんどん増えていきます。


これは全て突然変異により獲得される機能です。

様々な機能をスムーズに獲得しているように見えますが、実際は違います。

進化、と表現したとおり、そのなかで淘汰が起きているのです。


ガン細胞は他の細胞と違って『幾らでも増殖できる』能力を持っているため、細胞が多く生まれ、比較的短時間に多くの突然変異が起こるのです。また、遺伝子異常によって突然変異の頻度が上がることも多いです。

その中で、たとえば@の状態のときに“基底膜を破ることが出来る細胞”一つ生まれたとすれば、それは基底膜を破り内側に侵入できるのでより多くの栄養を獲得でき、より多くの細胞分裂を行うことが出来るのです。

そして、そのたった一つの細胞由来のガン細胞で埋め尽くされるのです。

それの繰り返しの中、次第に環境に適した能力を獲得していきます。


典型的なダーウィン進化といえます。


機能を獲得し、その細胞が増殖するためには時間がかかりますので、ガンの進行はゆっくり階段のように進みます。

ウイルス感染などのときとは違います。

また、獲得した能力は基本的に遺伝しますので、次の世代にも引き継がれます。

一度効かなくなった抗がん剤は時間をあけてもまず効くようにはなりません。


ただ、そのとき、上皮細胞としての機能は失われています

イモリが再生の時にやっている“脱分化”が起きているのです。この場合の脱分化は、イモリの場合と違い、完全な脱分化ではありません。

この脱分化は「機能を失った」というよりもある意味、機能を獲得しているんです。


その機能は『自立して生きる』機能です。


つまり、上皮細胞のままであれば、基底膜やそのそばの細胞と協力してしか生きていけないのです。

そのため、上皮細胞としての機能を失うことで、より自立した段階へ進むのです。

独立
です。

まぁ独立といっても栄養は人間からもらうのですけど。


細胞の社会の中で、上皮細胞という役割を担っていた細胞が、その役割を捨て、その社会において特別な役割を持たないままその社会の栄養を受けて増える能力を持ったのです。

何もしなくてもお金が入ってくるシステムを考え付いたようなものです。

それがないと、ガン細胞はガン細胞たり得ないのです。

これは比較的初期の段階で獲得する機能で、『無限に増殖可能』という機能に並ぶ重要な機能といえます。

ただ、これは、基底膜内に進出した後には必要ですが、基底膜外で増殖している間はあってもなくてもいい機能です。どこに入れたらいいのか分からなかったので、最後に入れておきました。


まぁ厳密さにはかけますが、ガン細胞はこんな感じです。ガン細胞がどんな細胞なのか、少しは分かってもらえたんじゃないかと思います。

 

今日はパリーグの優勝決定戦らしいですね。そういえば、セリーグの阪神優勝は聞いていましたが、パリーグはまだ決まってなかったですね。でも、うちは田舎なのでテレビ東京系(テレビ大阪)が映らないんですよね(500mくらいいけば映るらしいです・・・ちょうど狭間)。まぁそこまでしてみるものでもないですけど。元ダイエーホークスファンとしては、ソフトバンクに有終の美を飾れなかった去年(リーグ一位⇒プレーオフ敗退)の雪辱を果たしてもらいたいです。



posted by new_world at 18:40| Comment(10) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも、興味深く・・読ませて頂いておりますが、コメントは始めてです・・。
自然科学の分野には、昔から興味があるのですが・・実は、高校時代に一時期、地学部に籍を置いていたこともあり、宇宙や地殻変動、気象現象等には、今でも興味を持っています。
ただ、興味はありながらも、頭の構造は文科系のため、残念ながら・・なかなか理解できません。
ただ、ここのBlogは、私でも比較的理解しやすく、語っていただいていますので、非常に興味深いです・・とは言うものの・・どれだけ自分自身消化できてるかは、はなはだ疑問ですけれど・・・?
Posted by funky-cat at 2005年10月17日 22:14
ガンは嫌ですね。。。
すみませ〜ん。。。すっごいこといろいろ書いてあるのに
こんな書き込みで(笑)
Posted by マチルダ。 at 2005年10月17日 22:50
こんばんは。
腫瘍増殖因子のautocrineなんてのもありましたねぇ・・(遠い眼
Posted by south_of_the_border at 2005年10月18日 00:19
こんばんは!
いつも科学の話を楽しみにしています
今回のプレーオフは一点を争う
実に好試合の連続でしたね。
オリオンズ時代から応援してきた
私にとって実にうはうはうはうは
失礼しました。また遊びに来ます
Posted by edonag at 2005年10月18日 00:34
がんは(も?)怖いですね。
でも、今回のお話で「がん細胞ってすごいなぁ」とも思いました。
その柔軟さ、したたかさ、辛抱強さをなかなか人間が獲得できないのが残念。
もしがんになったら、この話を思い出します。
自分の体の中でいったいどんなことが起きているのかということが分かれば、何とかできそうな気がします(←根拠はありません)
Posted by bow_n at 2005年10月18日 12:25
funky-catさん
はじめまして。コメント有難うございます。
科学は面白いです。予備知識がなくても分かる科学は沢山あるのに、「数式ばかりで難しい」みたいな先入観があるからか、あまり浸透していないような気がします。ほんと面白いんですけどね・・・

知って役に立つ内容はそこまでないかもしれませんが、身近な生き物やそこらで起きている現象がどんな仕組みになっているのかを知るのは楽しいことだと私は思います。

分かりやすいかどうかは説明する人間の能力によりますので、私の説明じゃ分かりにくいところが沢山あると・・・でも、できるだけ、誰にでも分かるような内容を、誰にでも分かるように紹介していきたいと思っています。
Posted by new_world at 2005年10月18日 21:34
マチルダ。さん
いえいえ、いつもコメント有難うございます。

ガンは嫌ですね・・・でも、ガン化のメカニズムは面白いです。ただ、自分の中でも起こると思うと・・・



south_of_the_borderさん
オートクリン型シグナル(?)。自分に命令するんでしたっけ・・・なんかで読んだような気がします。
Posted by new_world at 2005年10月18日 21:43
edonagさん
ロッテ勝ちましたね。おめでとうございます。
ホークスは負けちゃいました。今年も1位チームが負けて、何かプレーオフの制度についての議論が起きてるみたいですね・・・1位チームの半月のブランクがどうのこうのとか。そんなに違うもんなんですかね。ただ普通に負けただけだと思いますけど。
これで阪神が負けたらまた議論になるんでしょうね・・・。

野球の世界もいろいろ大変ですね。



bow_nさん
ガンは凄いですね。まぁでも、細胞の防御機構が働いているんで、なかなか出来ないみたいです。簡単にできてもらっても困りますしね。

聞いた話では、『子供を作れるまでは細胞はガン化しないように出来ている』らしいです。普通は20年くらいはかかるそうです。ねずみの細胞は1年くらいでガン化するそうですが。
Posted by new_world at 2005年10月18日 21:53
こんばんは

父が直腸癌で死んだので、
大腸癌の話を興味深く読ませていただきました。
癌細胞は本当に強力な生命力を持っているのですね。
人間から生命を奪うものなのに生命力というのもおかしいですけど。

抗がん剤があっても効果の出る人、出ない人がいることも
記事を読ませていただいてなんとなく納得できました。
放射線治療をしても癌細胞は死滅しないし
モルヒネを射っても疼痛は消えないし。

進化、進化を繰り返す化け物なんですね…。
Posted by 雨がえる at 2005年10月19日 02:01
雨がえるさん
ガン細胞は凄いです。これを抑えるのはかなり大変だと思います。

一部の生物では殆どがん化しないものも存在します。植物などがそうです。
プラナリアにしても植物にしても全能性の細胞を保持していながら何故かガン化しないのです。

そのあたりの解明は人間のガン克服への鍵になるかもしれませんが、まだ少し先の話のようです。

それまではガン細胞は私たちが生み出した最強の生物でしょうね・・・。
Posted by new_world at 2005年10月20日 08:22
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