2005年10月24日

寺田寅彦

寺田寅彦という人物をご存知ですか?
私は短編集を1冊しか読んだことがないのであまりよく知らないのですが、この人は明治〜昭和にかけて生きた地球物理学者(東大教授)で夏目漱石の門下生だった科学者兼文学者です。

寺田寅彦の文章を初めて読んだのは、数年前、京大対策の国語の授業の時でした。

あの時は衝撃を受けましたね・・・西洋科学が入ってきたばかりの明治・大正期の人なのに、とても鋭い視点で科学をとらえていました。

その中で、もっとも印象的だったのは、寺田氏の未知の領域に関する指摘でした。

『知れば知るほど未知の部分は増えていく』

人間が認識できる未知の部分は、既知の付近の事柄でしかないので、既知の部分が増えれば増えるほど、ふくらむ風船の表面のように未知の部分との接点が増えてしまう・・・。

国語の問題なんて普通は終わったら忘れてしまうのですが、この文章は衝撃的で、凄くよく覚えています。


ヒトは“次から次に”新しい発見をするのですが、100年前には“考えもしなかった”ことで今の科学者は悩んでいるのです。

地球の人口はどんどん増え、科学者の数もどんどん増えているのに、考えるべきことは一向に減らずどんどん増えています。

以前であれば、ダビンチのような万能学者もいたのですが、今の時代では、科学者が専門化しないと手に負えないくらいに調べるべきことが増えてしまっています。

科学が進めば進むほど科学者が沢山いないといけなくなるのです。

世界の殆どは未知の領域なんでしょうね。その未知の領域は減っていっているのでしょうけど、ヒトが認識できる未知の領域は増える一方なんです。


人間の頭が進歩すればいいのですが、進化というものは凄く遅くて、そんな千年やそこらでは変わるはずもありません。

私の父親は昔からよく『人間は、決して頭はよくなっていない』と言っていました。『ギリシアの哲学者ほどの思考力を持つ人間が今の時代にいると思うか?』と。

まぁ父親は『今が昔より優れていると思うな』とか『知識が多いことを驕ってはいけない』とか言う意味で言っていたんだと思いますけど。


進化のスピードの問題もありますが、それに加えて、哲学者や科学者は結構社会ののけ者にされがちな職業ですからね・・・子孫を残せなかったのかもしれません。

今でも、科学者や哲学者は変人扱いですしね・・・。


posted by new_world at 00:54| Comment(5) | TrackBack(0) | 日本の歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
寺田寅彦は映画『帝都物語』に出てきます。原作は荒俣宏で角川文庫から出ています。
「知れば知るほど未知の部分は増えていく」というのは、ソクラテスの「無知の知」と同じですね。
井戸の中の蛙は、その世界しか知らないので、井戸の中を全部知ってしまえば終わりです。

          ☆
古代でも、現代でも専門家と万能な人はいると思います。
ちなみにダヴィンチ=万能の天才説は、後世が作り上げたお話です。
参考文献
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4047033596/qid=1130083860/sr=1-71/ref=sr_1_2_71/249-9454061-0014728
実際のダヴィンチは器用貧乏で苦労しました。
現代では、ファン・ノイマンはかなり広い範囲を網羅しましたし、エジソンも広い範囲を網羅しています。
ただ、調査や実験は人とお金がかかりますので、個人では難しい場合が多いですね。特に理系の場合。
Posted by オオクボ at 2005年10月24日 01:17
あと昔も今も頭がいい人の人口に対する割合は同じだと思います。これは証明できませんが・・・・
ただ歴史に名を残す人は、頭のいい人か権力者か奇人・変人がほとんどだと思うので、どうしても昔の人の方が頭のいい人が多いと思いがちです。

「天才の仕組み」についての参考文献
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/400600057X/qid=1130084350/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/249-9454061-0014728
 
      ☆
あと現代の人が古代の人より、利点があるとすれば、古代の人の発明を共有できることです。
数学や工学などをみても、現代人だけでは、ゼロから発明できません。けれど、その発明を理解し、利用することができます。
      ☆
科学者は、変人扱いでも保護されて、尊敬されていると思います。企業や国の研究施設で研究費と給料が出るのが、その証拠です。
現代とは対照的に、古代ギリシャのソクラテスは危険視されて毒を飲むよう命令されました。
Posted by オオクボ at 2005年10月24日 01:32
オオクボさん
科学者・哲学者として有能さが先天的なものなのか後天的なものなのかは判断しようがないですね。英才教育を受けた人が有能な人間になるわけでもないですし、有能な人間の子供が有能になるわけでもないです。

建国当初は最も有能であった天皇家からでも、有能な人材が出ることは稀でした。摂関家も同じです。同じ一族から多数の人材が出ることは中々ないです。まぁ天皇家に関しては政治力よりも武勇に優れていたかもしれませんが・・・。

有能さは偶然の産物としか言えないのではないかと思ったりもします。

特定の分野における有能な人材が生まれるのは、その分野を行う人の数によって変動するのは確かでしょうね。平安時代に文学が発展したり、ユダヤ人から多数のノーベル賞科学者が輩出されたりするのは、その分野に対する教育が充実していたり、熱意が高かったりするからだと思います。


少し前に結構な範囲を網羅した科学者がいたって言うのは本で読んだことがあります。
ダヴィンチくらい前になると、確かに“伝説”が沢山あるでしょうね。未だ生きている人に対しても“伝説”が出来るくらいですから・・・。
Posted by new_world at 2005年10月24日 02:49
オオクボさん
最近の科学者は優遇されていますね。大昔であれば迫害され、数百年前はお金持ちしか出来ませんでした。伯爵兼科学者、みたいな科学者が沢山います。
時代のニーズか知りませんが、今は科学者になりやすい環境であることは確かです。

でも、科学者よりも資産家の方が子孫を残しやすいと思います。まぁお金持ちも何らかの能力を発揮することで資産を得たわけですから有能ではあるんでしょうけど。(相続しただけの人は違いますけど・・・)

あと、科学者には子供を作ることに熱心でない人が多いような気もします・・・研究熱心というのもありますが、研究費は出ても給料は低いって言うのもあります。経済力がないと子供は養えませんから。

子供の養育費はかなりかかります・・・私も、年間200万円近く親から支援を受けています。私立大理系だと年300万はいるでしょう。東京だと家賃だけで京都より年3〜40万円は多くかかります。
最近は奨学金制度も整っては来ていますが、まだまだ不十分です。

まぁ遺伝的要素がどの程度あるかは分からないので科学者が子孫を残せなくても問題ないかもしれませんが。
Posted by new_world at 2005年10月24日 03:06
そうですね、確かに現代の、日本では養育費が大きな負担になってますね。

あと学問の分野での才能が遺伝に左右されるかどうかは難しいですね。私は後天性の方が大きいと思っていますが・・・。
ユダヤ人は長い歴史の迫害による職業差別と住む場所の差別と、相反する選民思想によるサバイバルな訓練によって多くの天才を生み出してきました。

ただ金持ちや学者の子供は、教育環境が整っているので、英才教育しやすいと思います。

昔は、読み書きとソロバンができれば、あとは学校に行く必要ないという時代がありました。

万有引力で有名なニュートンは、貧しい家の出だったので、親は学校に行くよりも、家の手伝いをさせようとしましたが、親戚の援助で学校に行くことができました。
小説『赤毛のアン』もそんな話ですね。孤児院で男の子と間違われて貰われた女の子が、努力して学校に行き、学校の先生になり、新聞記者や作家になるお話です。
(^^)
Posted by オオクボ at 2005年10月24日 22:27
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