2005年10月26日

ガンと遺伝子

ガン細胞は遺伝子の突然変異で進化します

その遺伝子の突然変異の中で、もっとも基本的な3つの遺伝子の突然変異を紹介したいと思います。

ガン化の中で最も基本的な異常は細胞周期(細胞分裂の流れ)の異常です。

細胞分裂が持続』したり、『頻繁に突然変異』を起こしたりするんです。


これに関わる3つの重要な遺伝子があります。Ras、Rb、p53と呼ばれる遺伝子です。

一つずつ説明します。

@Ras遺伝子
:増殖シグナルを伝えるタンパク(Rasタンパク)を作る遺伝子
Rasタンパクはシグナルを受けて構造が変化し、それによって次のシグナル分子にシグナルを伝えます。そして、細胞が分裂します。まぁ細胞分裂のスイッチの役割です。

Ras遺伝子に異常が生じ、常に活性化状態のRasタンパクが出来てしまうと、細胞が分裂し続けてしまうのです。

ARb遺伝子
:細胞周期の進行を抑えるタンパクを作る遺伝子
この遺伝子が抑制されることで細胞周期が進むのですが、突然変異によってこのタンパク質が作れないと、抑制がかからなくなり、不十分な状態でも細胞周期は進んでしまいます。そうすることで不完全な細胞分裂が起こりがん化しやすくなるのです。

Bp53遺伝子
:チェックポイント機構の要のタンパクを作る遺伝子

これもAのRbに似ているのですが、これは細胞周期の複数の段階でチェックポイント機構を働かせているタンパク質を作る遺伝子です。チェックポイント機構とは、たとえば、46本の染色体が倍になる際に、全てがきちんと倍になっているか、などを確認する機構です。p53タンパクはこれに深く関わっているタンパク質で、これが欠損するとチェックポイント機構が機能せず、一部の染色体が複製し終わっていない状態で細胞が分裂しはじめ、染色体の一部が破損してしまうのです。


ガン関連の遺伝子は二種類に分かれます。

ガン遺伝子
ガン抑制遺伝子です。

@のRasがガン遺伝子、AのRbとBのp53はガン抑制遺伝子にあたります。

この大きな違いは、それが優性か劣性かです。

ガン抑制遺伝子は劣性ガン遺伝子とも呼ばれます。


@のRas遺伝子の場合、少しでも異常Rasタンパクが作られてしまうと細胞周期は進んでしまいます

つまり、ちょっとでも異常が起きたらガン化するんです。

しかし、A、Bの場合、少しでもABが正常に働いていると正常な細胞分裂が行われます

@は正常状態に抑制作用がなく、異常のものは細胞を増殖させる方向へ促進する働きがあります。

ABは正常状態が細胞周期を抑制する作用=ガンを抑制する作用のあるもので、異常のものはガンを促進するわけではなく、単にその機能を失うだけです

この二つの差が大きくなるのは、ヒトの染色体が二組あるからです

父由来、母由来の二つです。

そのため、ABの遺伝子は父由来・母由来の両方の遺伝子で機能を失わないとガン化しないのです。

@の変異の確率をXとすると、ABの変異の確率は“Xの2乗”になるのです。

単純計算だと100人に1人だったのが1万人に1人になります。起こる確率が格段に下がりますよね。

まぁしかし、実際は、ABの父由来・母由来両方への変異もXの2乗ほど低い確率ではないことが分かっています。

その仕組みはよく分かっていないそうです。



因みに、“発ガン物質”というのはDNAに損傷を与える物質のことです。

ただ、今の科学技術では化学式などからだけでは全ての発がん物質を見抜くことは不可能です。

そのため、まずは菌を使ってDNAへの影響を実験して調べます。


最後に、その実験方法を簡単に紹介したいと思います。

いわゆる“発ガン作用”とかいうものを調べるのですが、実際にガンができるまで待っていては時間がかかりすぎます

そのため、まずは突然変異の起こりやすさ計るのです。

サルモネラ菌などの菌を使うのですが、実験に使う菌はある種のアミノ酸を体内で作れない菌を用います

そして、それを育てるシャーレ内にはそのアミノ酸を含まない培地を使うのです。

つまり、そのままなら死んでしまうんです。

その中では突然変異によってそのアミノ酸を作れるようになったものしか生き残れません

ただ、そのアミノ酸生成能の獲得は突然変異は比較的高頻度でおきやすいもので、自然な状態でもぽつぽつと生き残る菌が生まれます。

まぁ起こりやすくないと実験にならないんです。起こりやすいからこそ発がん性が低いものも調べることが出来るんです。

その菌をぬったシャーレの中央に発ガン作用が疑われている物質を起きます。

もし、その物質が発ガン作用、つまり、DNAへ損傷を与えるものであれば、その周辺で菌が増殖します

つまり、菌のDNAが攻撃され突然変異が起こったのです。

これによってその物質の発ガン作用の大まかな判断が出来ます。

もしこれでDNAへの損傷があると判断された場合はマウスなどに高濃度のものを服用させて実際にガンが生じるかを確かめるのです。


ただ、このときに注意すべきことが一つあります。

それは、人間の体の中には肝臓があるのです。

つまり、肝臓で物質は化学変化を起こしてしまいます。その変化によって発ガン作用を手に入れる物質も少なくないのです。

そのため、菌のシャーレにおく場合には、マウスの肝臓からの抽出液を加えます

そうすることで、そこでもその化学変化が生じて適切な結果を得ることが出来るのです。



posted by new_world at 21:33| Comment(2) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「○○が発ガン物質を含む」と報道されると、「おおー、危ない」と思いますが、そうやって調べられていたんですねー。
実際に人がガンになってから発表したんじゃ、あまりに遅いですもんね(^_^;)

そういう方法を考えていてくれる人がいてくれると思うと心強いです。

それでも、まだ人間の体内で起こることは予想を超えてしまうんですね。
うーん、すごいです(-_-;)
Posted by bow_n at 2005年10月27日 21:33
bow_nさん
ヒトだと10年がかりになってしまいますし、マウスでも数ヶ月かかってしまいます。ところが、菌ですると一晩くらいでできちゃったりするんです。

とりあえず、DNAに損傷を与えないものを見つけておくんです。

そうすれば、次に調べるものが減りますし、どのくらい害があるかも大体分かります。まぁ最終的には哺乳類で試してみて、結論は出すみたいですけど。


人間が予想できることってほんのわずかなんです。
Posted by new_world at 2005年10月29日 09:40
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