2005年12月05日

老化A 代謝とは?

今回は老化の話ではなく代謝の話だけになると思います。代謝は長いんで・・・。

@代謝の概要:エネルギーの通貨“ATP
代謝って言う言葉は一般に広く使われていますが、代謝がどのような現象なのか知っている人は少ないと思います。

まず、代謝って何を作る為に行っていることだと思いますか?

私は、まず『エネルギーの供給』があると思います。

高校の家庭科の授業で、クエン酸回路(TCAサイクル)によってエネルギーを作っているとか習いませんでした?

TCAサイクルとはミトコンドリアの中で行われているアセチルCoAからNADHなどを取り出すサイクルです。

といっても、分かりませんよね。

アセチルCoAとかなら聞いたことくらいあるかもしれませんが、NADHなんてまず知らないと思います。


ということで、このミトコンドリアを利用したエネルギーの供給について説明したいと思います。

まず、体の中ではエネルギーの通貨があります。

私たち生物はある物質をエネルギー源として利用するように作られているんです。

それはATPと呼ばれ、アデニンにリン酸が3つ付いたやつです。

食べ物などから得た“エネルギー”をATPに転換して使っているんです。

ちょうど、アメリカに行ったら円をドルに換えるようなものです。



ATPこれです。(別に必要ないですが)

アデニンはDNAの“塩基”配列の塩基のひとつ(TAGCのA)です。

なんでアデニンがエネルギーの通貨に使われているのかは知りません。

理由は知りませんが、とりあえずアデニンにリン酸が3つ付いたものが生物の統一のエネルギー源です。


ATP⇒ADP+リン酸+エネルギーなんです。(ADPはAに2個リン酸が付いたもの:D=ジ≒ダブル、T=トリ≒トリプル)


この逆の反応(ADP+リン酸+エネルギー⇒ATP)でATPを作るのが代謝の一つの機能です。



Aミトコンドリアの機能
ミトコンドリアがエネルギーを作っている』ということは聞いたことがある方が多いと思いますが、ミトコンドリアはこのATPを凄い効率で作る器官なんです。

“凄い効率で作る器官”と書いたとおり、ミトコンドリアを用いずに“凄くない効率で作る”こともできます。(→C)

つまり、代謝には2種類の経路があるんです。

途中までは同じなんですが・・・というか、ミトコンドリアに持っていかれる前までで終わって、最後に“ちょっとした処理”を行う経路があるんです。


ミトコンドリアは生物内に取り込まれた生物だということは聞いたことがあると思います。

昔の映画に『パラサイト・イブ』とかありましたよね。

あれでミトコンドリアの知名度が上がったようです。

ミトコンドリアはもともとは別の単細胞生物で、それが他の単細胞生物に取り込まれたものだと考えられています。(⇒根拠を書いた昔の記事)

代謝の経路も、付け足しのようにミトコンドリアが介入しています。



Bミトコンドリアのエネルギー製造法とNADHという電力源
では、もうちょっと詳しく経路を説明したいと思います。

全体図を描きましたのでまずはこれを。(点線は細胞膜:脂質二重膜→参照記事)
※図中では思わずブドウ糖をグルコースと書いてしまいました。文中ではブドウ糖に統一したつもりです。

代謝略図
















(上の図の右下、実は、『3つのNADHなど』が正しいです。)

まず、食べ物を消化して“ブドウ糖(グルコース)”を得ます。(簡単の為に、脂質の経路は考えません。脂質からもアセチルCoAが出来ます)

ブドウ糖は体内を循環し細胞に取り込まれ、細胞内でブドウ糖(炭素×6)は分解されてピルビン酸(炭素×3)という酸になります。

ピルビン酸がミトコンドリアに運ばれて、CoAと反応し、アセチルCoAとなり、そのアセチル基が分離してTCAサイクル使われます。

CoAはピルビン酸のアセチル基を分離させるための物質です。

このアセチル基が重要です。

アセチル基は炭素を2つ持っていて、これがCが4つのオキザロ酢酸に結合してCが6つのクエン酸になります。

そして、クエン酸が多段階の反応を経て、2つの二酸化炭素を排出しつつNADからNADH生成などの反応を行いながら、またオキザロ酢酸に戻ります。(アセチル基で付加された2つの炭素は二酸化炭素になりました。)


で、このNADHですが、これがまた凄く重要な物質なんです。


NADHエネルギーを貯めるダムを作る為に使うんです。


NADHから直接ATPを作ることは出来ません

ミトコンドリアは、別の方法でエネルギーを蓄積し、それを利用してADPからATPを合成しています。


それが水素ポンプ


水素をポンプのような仕組みでくみ上げてミトコンドリアの膜の間に水素イオンをためていくんです。

ちょうどダムに水をためるようなものです。

そして、別の場所ではそれを放流してその水素イオン流れを利用してADPにリン酸を結合させてATPを作っているんです。(イオンの濃度差によって自然と水素イオンはミトコンドリア内に流れ込みます)

この水素イオンをくみ上げる原動力を生み出すのがNADHなのです。

原動力とは電子です。NADH電子(2e-)+NAD++H+によって、電子を供給するんです。

その電子によってO2+4H+→2H2Oという反応を起こしながら、水素イオンを膜の間に流し込み、その水素イオンが放流される時にATPが生成されます。(ここで酸素が使われています。この為に呼吸するんです。)

これが、凄く効率の良いATPの生成です。




Cミトコンドリア以外のATP獲得方法:“解糖”
ただ、上の図を見てもらったら分かるとおり、細胞はブドウ糖をピルビン酸に分解する際にもATPを作っています。この部分を“解糖”といいます。

これが細胞が本来持つATP供給機構だと考えられ、これによって生きている生物もいます。

ただ、ミトコンドリアはこの15倍もの効率でATPを生成します。しかも、使われないNADHやピルビン酸を用いてです。

それと、ミトコンドリアを用いない経路でもNADHが作られるのですが、先ほど話したとおり、NADHは電子を分離しやすい物質で、細胞にとっては有害です。

よって、このNADHはすぐに処分する必要があります。

NADHをそのまま排出するのではなく、代謝で一緒に生じたピルビン酸ととりあえず反応させて、乳酸やエタノールを作り、その後でそれを細胞外に排出するんです。

理由は聞きませんでしたが、たぶん、できるだけ早くNADHを処理する為だと思います。


こういうのを“発酵”といいます。


お酒を造るあれです。

お酒のエタノールは微生物がNADHを処理する為に変化させたものなのです。


お酒を造る酵母にはミトコンドリアもあるのですが、ブドウ糖が大量にある状態ではミトコンドリアを用いずにブドウ糖の“解糖”だけでエネルギーを作ります。

その際に排出されるエタノールがお酒の素です。


また、ミトコンドリアが水素イオンのダムを作る際に酸素を水にする反応を起こすので、酸素が足りない状態においても発酵が行われます

酸素が少ないとミトコンドリアの機能が低下するんです。




D体の中の発酵
酸素不足でミトコンドリアを使わない代表は、筋肉です。

筋肉に乳酸がたまって痛むって聞いたことがないですか?

筋肉では大量のエネルギーを使いますので、それだけ沢山の酸素も消費します。

そのため、筋肉では主に酸素の必要ないブドウ糖→ピルビン酸の経路によってエネルギーを得るんです。

筋肉ではブドウ糖(グルコース)をグリコーゲンとして貯蓄しています。

筋肉を動かしすぎて、乳酸の排出が間に合わなくなると乳酸がたまって痛みが生じるんです。



あと、もう一つ発酵をしている重要な細胞があります。

ガン細胞です。

ガン細胞は優れた増殖能力を備えているのですが、代謝経路はブドウ糖の解糖のみで発酵が行われます。

理由はよく分かっていません。筋肉と同じような理由かもしれませんが、ガン細胞はブドウ糖をグリコーゲンとして蓄積する能力はありません。

そのブドウ糖を大量に必要とする性質を利用して、最近流行のPETというガン診断に見られるような、ブドウ糖の分布を見ることによってガン細胞を見つけることが出来るのです。

ブドウ糖の分布は、少しだけ放射能のある物質を修飾したブドウ糖を体内に注入して、それを撮影することで見ることが出来ます。




E余談
今回は代謝の話ばかりで老化の話とかは全然なかったですが、代謝は代謝で面白いと思うんで、許してください・・・。

というか、私個人としては老化の話より代謝の話の方が面白かったんです・・・つまり、今回がメイン??

一番力が入っているような気がします・・・何回かに分けようかとも思いましたが、何となく全部書いてしまいました。時間は凄くかかりましたけど。



次回は代謝の悪影響と、長寿の個体の目的、インシュリンの話とかを書く予定です。



老化はまだまだ分かっていないことが多いので、すっきりした解説はできませんが、テレビとかでやってる健康法ではなく、理学的に、老化の基本を紹介できたらと思っています。


あ、書き忘れていましたが、代謝には他にも重要な機能があります。

生体高分子の合成などです。

代謝の過程で生じる分子を利用して、生体高分子やアミノ酸を作っています。

また、上の図でも出てきたアセチルCoAはアセチル基を供給しますので、有機物の炭素骨格を伸張することができます。(TCAサイクルでも炭素4つのオキザロ酢酸に炭素2つをくっつけて炭素6つのクエン酸にしています)

代謝にはエネルギーの供給という面と私たちの体の材料を供給するという働きがあるんです。



posted by new_world at 19:24| Comment(12) | TrackBack(1) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
難しい。。。
私には意味不明(笑)

ミトコンドリアしか頭に残りませんでした(*´∇`*)
Posted by マチルダ。 at 2005年12月05日 22:04
ATPってアデニンとリン酸なんですね。そのことでふと思ったのですが、ミトコンドリアには個体差あるいは生物種による差はあるのでしょうか?

いずれにせよ勉強になりました○Oo。.(T¬T)/~~~オヤスミナサイ・・
Posted by e_team at 2005年12月05日 23:23
前回に続きこんにちは。
難しいです。。

NAD+ と NADH の酸化還元反応で巻き込まれるイロイロな物質生成がエネルギー代謝なのですか?

とすると NADH→ 2e- + NAD+ + H+ では
何も生み出さずに反応してしまっている感じでしょうか。。

ちんぷんかんぷんです。ごめんなさい。
Posted by plauderei at 2005年12月05日 23:29
アデノシン3リン酸でしたっけ・・・。
アデニンにリン酸がリン酸結合によってできていて、そのリン酸結合が離れる時にエネルギーが発生するって習ったような記憶が・・・。

う〜ん、わかったような、わからなかったような・・・。
ゆっくり時間をかけて勉強したら面白い所なんだと思います。まだ、高校の生物の教科書を保存しているのですが、なかなかそこまで時間をまわせなくて・・・。
Posted by やまさん at 2005年12月05日 23:54
マチルダ。さん
すみません・・・内容はそこまで難しくないはずなんですが、何しろこの分量です。

全く知らないなら訳が分からなくなりますよね。

暇なら最後のあたりをちょっと眺めてみてください。

最後の方は、お酒とかガン細胞とか具体例なんで。



e_teamさん
ミトコンドリアには個体差があるようです。

ミトコンドリアのDNAから種を特定したりしますので。

しかも、ミトコンドリアDNAは変異が多く、ヒトとチンパンジーでも9%くらい違ったと思います。種のDNAでは1%程度しか異なりませんが。



plaudereiさん
すみません・・・ちょっと調子乗りすぎました。

もっと何回かに分けて書くべきでした。

一気に読むと、真ん中あたりでは最初のことは忘れてしまいそうです・・・。



代謝の中心がどの物質かといわれてもちょっと困りますね。
私としては、分解されるグルコースや脂質を除けばアセチルCoA→TCAサイクル→NADH≒電子→ATPが代謝のエネルギー部分の軸だと思います。

NAD+に関しては、再利用されて再びNADHを作る為に使われますので何も生み出さないという感じでもないですね。

ちんぷんかんぷんにしてしまってすみません・・・。

ちょっと章分けはしてみましたが、やはり、長さが目立ちます・・・。
Posted by new_world at 2005年12月06日 00:11
やまさん さん
高校では生物を取られていたんですか?
それなら微かには覚えていたりして、少しは分かりやすいかもしれませんね・・・それでも難しかったということは、予備知識なしでは厳しい内容だったみたいですね。


はい、ATPはアデノシン3リン酸とも言い、アデノシントリフォスフェイトで、リン酸が一つ取れて安定化することによって得られるエネルギーで様々な反応を導きます。
Posted by new_world at 2005年12月06日 00:44
こんばんは,懐かしいですww
昔クエン酸と何かを(ピルビン酸か?)
を舐めた記憶があります.生物の時間に(笑)
代謝は面白いですね,水車を見ているようで,
あのサイクルを見つけた人はホントにすごい!
あと,
>もう一つ重要な発酵をしている細胞があります。
ガン細胞です。
ガン細胞は優れた増殖能力を備えているのですが、代謝経路はブドウ糖の解糖のみで発酵が行われます。ガン細胞はブドウ糖としてエネルギーを蓄積する能力はありません。
初耳で興味津々でした.といいますか,自身にガン細胞の知識が0に近いことに気がつきました(‥;)
Posted by at 2005年12月06日 01:14
続きを読みに来ましたら、章分けされていました。
ありがとうございます。

続きを楽しみにしています。



発酵が出てきたので、いつか二日酔いの話もお願いします。
Posted by plauderei at 2005年12月06日 23:42
密かに地方の国立の理学部生物学科を夢見ていたので、生物は選択していましたよ!まだセンター試験が共通一次試験と呼ばれていた頃の話です。
でも、算数が大の苦手だったので、浪人をきっかけに文転しました(汗)
今から思うと遊びたかったのかも知れませんが。

クエン酸回路とか懐かしいです・・・。
苦手なところでした・・・はい。
Posted by やまさん at 2005年12月07日 00:57
できたものをもう一度使って、新たに必要なものを取り出すとか、
有害なものを無害にして排出するとか……
なんとうまくできていることかと感心しています。

今日の理解はそこまで限界になってしまいましたd(゚∀゚;)
Posted by bow_n at 2005年12月07日 08:44
惺さん
代謝は凄い複雑ですが、ぱっと見た感じは凄いと思えますね。全部覚えろって言われたら嫌いになるかもしれませんが・・・。

ガン細胞も凄いですよ。

体内に出来たら最悪ですが、そのメカニズムは凄い面白いです。




plaudereiさん
すみません・・・寒くて続きを書く気力が無かったです。

今日、続きを書いたんですが、いまいちだったんで、また、体勢を立て直して老化の話は書こうと思っています。

二日酔いですか?

考えておきます。
Posted by new_world at 2005年12月07日 23:41
やまさん
そうでしたか。

代謝は嫌う人が多いみたいですね。原理とかは面白そうなのですが、どうしても複雑で覚えることが多いんで。

大学生も嫌うって教官は話していました。

私は物理だったんで、大学入って、というか、つい最近知りました。

面白そうなシステムです。



bow_nさん
呼吸自体も有害な酸素を取り除く働きがきっかけですしね。

ちょっと複雑ですから、最初聞いただけでは分かりづらいと思います。

気が向いたらまた眺めてみてください。
Posted by new_world at 2005年12月07日 23:45
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