2006年01月07日

海と川のカニの卵の違い

カニやエビなどの甲殻類は、昆虫の進出できなかった海において昆虫と同等の生態的地位を占めているのですが、その幼生がちょっと面白いんです。
幼生が何で必要かわかります?

人間の場合、確かに“子供”の状態で生まれはしますが、大きな変形はしませんよね。

でも、昆虫や甲殻類などの節足動物を含め、無脊椎動物の多くは幼生という段階を踏みます。

幼生は生体とは似ても似つかない全く別の生き物のような形をしています。




幼生は『自立した胚』と言われます。

』とは受精卵から個体になるまでの段階です。

その胚の一部の段階を自立させるのです。

これは戦略です。

卵の中で個体として完成させるまで作るのではなく、途中からは外部環境に任せてしまうんです。

そうすることによって卵を作ることに必要なエネルギーが減り、多くの卵を作ることが出来るようになるのです。

胚を自立させることによるリスクと卵を増やすことによる利益のつりあった状態が幼生の段階なんです。


たとえば、カニの幼生はこんな感じです(このHPから借りました)。

実際はもう少し細かく段階が分けられているんですけどね。



カニの幼生






ただ、この幼生、とても興味深い違いがあるんです。

海と川の違いです。

同じカニでも、海のカニ(=海に住む無脊椎動物)と川にすむカニ(=淡水にすむ無脊椎動物)では変態の過程が全く違うんです。




甲殻類においては、幼生は複数の段階を踏むことが多く、より進化した種ほど多くの段階を踏みます。

しかも、似たような段階を踏んで成体となります

個体発生は系統発生を繰り返す』といわれていますが、甲殻類においてはこれが殆ど正確にリピートします。

進化した甲殻類ほど新たなタイプの幼生を獲得していくんです、元からある幼生もしっかり残して

さっきの絵に『メガロパ』と言う幼生がありましたが、あれはエビに近い段階にあたります。(『ゾエア』はフジツボに近い段階だそうです。)

ところが、海に住む無脊椎動物は殆ど全て幼生の段階があるのですが、川にすむ無脊椎動物では幼生の段階が殆どなくなってしまうんです。

同じカニでも、川のカニでは海のカニが踏む幼生の段階の殆ど全てを卵の中で行われてしまうんです。


この原因の一つとして、幼生の段階では淡水の浸透圧に耐えられなかったのではないかと考えられています。

でも、どうして対応できなかったのかは知りません。

ただ、海の環境が卵の中の環境に近かったので幼生として独立できたとすると何となく分かる気はします。

そして、老化のときに書いたとおり、発生は厳しいプログラム下に置かれていますので、幼生の段階を変化させることは困難で、より生体に近いごく一部の成長した幼生でしか淡水には対応できなかったのかもしれません。

多くの無脊椎動物の幼生がかなり似た形をしているのも発生というプログラム化に置かれていると説明できますし。



とはいえ、同じカニでも海にいるものと川にいるもので卵が全然違うというのは面白いですよね。

海のカニの卵は幼生まで作れる程度のもので、川のカニの卵は個体に近い状態まで成長させる能力を持っているんです。


posted by new_world at 00:01| Comment(7) | TrackBack(0) | 生態の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ふだんカニのことについて考えることはないので面白かったです.
川と海の環境の違いが同じカニでもこんなに違いを生むんですね.

酸素の薄い高山に住む民族と低地に住む民族とでは
多少の肺の活動ぶりに差はあっても,根本的に形が違うなんてことはないですもんね.

ゾエアは聞いたことがありましたがメガロパは初めてです.
ちりめんじゃこに時々入っている海老みたいなのはメガロパ...?
Posted by fuku×2 at 2006年01月07日 13:26
小学生のころからゾエア・メガロパの存在は知ってました。
(生物好き^^)
沢蟹のメスがおなかにうじゃうじゃ稚蟹をつけているのは
見たことがあるのですが、海の蟹の幼生はまだ見たことがありません。

一度に生まれる幼生の数も海川では違いますね。
海蟹のメスは無数の幼体をちりみたいに放つけれど、
最終変形まで生きていられる子はごくわずか・・・
川蟹から生まれる幼生はせいぜい15匹〜20匹程度。
外敵が多いのは川蟹も同じだけど、稚蟹の形であれば
プランクトンよりは身の守りようがあるからなのかな?
自然って良く出来ていますよね。
Posted by maria at 2006年01月09日 12:01
fuku×2さん
環境の違いって結構大きいんですよね。

でも、そこまで違うものかと私も驚きました。ヒトだったら腸の長さとかが結構違うって聞いたことがある気がしますけど。

まぁ同じカニとはいえ種が違いますからね。ヒトとチンパンジーとかだと結構違いますよね。





mariaさん
卵の数もそうですね。大きくなるまで卵の中で育てるには卵を大きくしなくてはならないので作れる数は減ってしまいますよね。

大きいとそれだけ捕食者が減るんで生き残りやすいんじゃないですかね。プランクトンサイズだと小魚にでも食べられてしまいますからね。

ちゃんとバランスがあるんでしょうね。
Posted by new_world at 2006年01月11日 01:11
私は今、カワのカニを探しているのですけど、なかなかいません。
どぅいう所にいるのでしょうか??
Posted by サラ★ at 2007年04月05日 11:08
サラ★さん
どうでしょうね。私もあまり記憶にはないですが、綺麗な川とかの石の下とかにいるってよく言いますよね。
Posted by new_world at 2007年04月09日 20:17
▼o・_・o▼コンニチワン♪
海と川の違いはやっぱり海水と淡水でしょ。
となると、浸透圧の違いですね。幼生の状態で維持できるかどうかになるわけですね。
面白いですね。環境が発生のメカニヅムを変えてしまうわけですね。勉強に成ります。
Posted by むっち at 2007年10月05日 10:38
むっちさん
この違いは中々面白いですよね。

私も、知った時は『なるほど!』って思いました。
Posted by new_world at 2007年10月08日 14:29
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