2006年01月08日

老化F ウェルナー症候群

久々に老化について書いてみたんですが、いまいち教科書的で味気ない内容になってしまいました・・・。

ウェルナー症候群という遺伝病があります。

これは成人の早老症と呼ばれ、通常よりも20年以上早い老化症状を伴う病気です。“20年以上”ですので、10代の頃まではそこまで正常な個体と違いはありません。

20歳を越えたあたりから白髪や声の老化などが見られるようになり、30代で白内障や糖尿病を発症、40代で動脈硬化やガンを発症し、平均年齢は46歳前後だそうです。


ただ、このウェルナー症候群の重要性は、この病気がたった一つの遺伝子の疾患によって起こるということです。

1992年にウェルナー症候群の原因遺伝子ウェルナー遺伝子が特定され、数年後にその機能が明らかになりました。

ウェルナー遺伝子が作っていたタンパク質(酵素)は、DNAヘリケースの一種で、細胞の核内においてDNA-DNAやDNA-RNAの二重鎖をほどく働きをしています。


二本鎖を解く働きをしているのですが、これが上手く働かないと、バラバラにすべきDNAがくっついていたり、バラバラにしたものが間違ってくっついたりして、DNAの配列がおかしくなってしまうんです。

このヘリケースの機能不全によって、ゲノムの安定性が崩れ、それによって細胞死やガン化が高頻度で起こってしまうのです。

ただ、このヘリケースの機能についてはまだまだ分かっていないことが多いそうです。DNAの修復にも関与しているとも言われています。


まぁまだ見つかって10年も経っていませんしね・・・。



あと、この遺伝子までは特定できたのですが、その研究を進めていくにあたって、ちょっとした問題が生じました。

マウスにも同様の遺伝子が見つかったのですが、その遺伝子を壊したノックアウトマウスにおいては早い老化現象は見られなかったそうです。

この原因についてはヘリケース自体の働きの違いやヒトとマウスの寿命の違いなどが考えられています。

ヒトにおいてはヘリケースが体のあちこちで存在しているのですが、マウスにおいては生殖細胞に集中して存在しているそうです。

また、ウェルナー症候群は複製が上手く行かなくなることで異常が蓄積することが原因だと思われているのですが、寿命が2年と、ヒトの40倍のスピードのライフサイクルで生きるマウスにおいて、その異常の蓄積も40倍となる必然性があるのかが分からないんです。

でも、マウスとヒトで同じ遺伝子を持ちながらその機能が違うということも興味深いことではありますね。

今後の研究に期待です。



※早老症
ああ、あと、かなり教科書的な内容ですが、いわゆる早老症についても少し書いて見たいと思います。


早老症という言葉を聞くと、プロジェリアという単語を思い浮かべる人が多いと思います。(まぁプロジェリアという単語自体が早老という意味なのですが。)

テレビなどでもたまに取り上げられたりしていますよね。

プロジェリアと呼ばれる病気は優性の突然変異で、生後1年くらいで老化に似た症状が出始め、成長速度は次第に低下、体重は3歳児程度、身長は5歳児程度で止まり、平均寿命が12歳程度と極めて短い病気です。

『優性の突然変異』とは両親由来の2つのDNAのうち片方で生じるだけで発現します。劣性であれば、両方で起こらないと発現しません。

プロジェリア患者は誕生時は正常なのですが、1歳頃から毛髪や皮下脂肪が喪失し、次第に成長速度が鈍化し、皮膚が薄くなり、血管が浮いて見えるようになり、老人斑が体中に現れ、骨量も低下・・・

顔は早老顔貌とよばれるくちばしのような鼻と発達の悪いあごが特徴です。

また、知能は年齢相当かそれ以上あります。

死因の大半は冠動脈の疾患・・・心筋梗塞とか狭心症です。


早老症患者に診られる生理的な現象としては『成長ホルモンレベルが高い』『基礎代謝率が高い』『テロメアが短い』『DNA修復機構の機能低下』などが上げられます。

確かに、老化との関係が深いと思われる変化が起きていますね。


原因遺伝子については私は詳しく知りません。




老化の研究はまだまだ途上ですが、今後脚光をあびる研究題材になるでしょうね。

あまりに複雑すぎて今までの科学では殆ど手に負えなかった領域ですが、ミクロの生物学やナノな工学技術の発達によって、次第に手に届く題材になってきていると思います。


◇関連図書
老化はなぜ進むのか (ブルーバックス)




posted by new_world at 16:55| Comment(10) | TrackBack(1) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにち▼・。・▼」」」」ーワンワン!!
早老、老化、遺伝子、DNA今話題のことばがいっぱいでたのしくよませてもらいました。
Posted by むっち at 2006年01月15日 15:32
むっちさん
すこし分かりにくいですよね・・・特別言いたいこともなかったんで。

こういう病気もあります、みたいな紹介的な記事でした。
Posted by new_world at 2006年01月17日 03:15
卒業研究でプロジェリアについて調べようと思っているのですが
日本にプロジェリアの患者はいますか?
Posted by なお at 2006年01月24日 18:11
なおさん
返事が遅れてすみません。

プロジェリア患者ですか?どうでしょう・・・いわゆるプロジェリアは突然変異で確率的な問題なので、どこにでも生まれると思います。日本は人口が多いのでいるのではないでしょうか・・・私は知りませんけど。
Posted by new_world at 2006年02月02日 18:55
ウェルナー症候群は日本人にかなり多いです。でも全ての人が希望を捨ててはいけないですよね
Posted by みかん at 2006年04月01日 00:02
みかんさん
やはり、日本人にも多いんですね。

老化の速度の問題はなかなか理解が難しいところではありますね。
生物種によって寿命は大きく違いますし、同種内でも結構なさがあります。また、同じ個体でも時期によって感じる時間は結構違うものです。

楽しい時間はすぐに過ぎるとか、小学生の頃はそれが永遠に続くような気がしたとか、年齢や状況によって感じる時間はかなり違ってきますよね。

このメカニズムはよくわかりませんが、個体の状態によって時間感覚が大きく変化するのは疑いようがありません。

早老症の場合にどのような時間感覚が生じるのかは理解しようがありませんが、早老症はあくまで「老化のような症状がでる」のであって、「早く老化する」わけではなく、必ずしも、時間感覚まで変化しているとは限りません。

子供のような時間感覚を維持できているとすれば、12年という72歳の6分の1しかない物理時間は、感覚的にはその倍にも3倍にもあたる時間かもしれません。

早い老化の苦しみを受けるのは事実でしょうけど、物理時間ほど短いものではないのかもしれません。
Posted by new_world at 2006年04月02日 19:31
日本にプロジェリア患者はいまのところ見つかっていません

両親が認めない例も多々ある様なので

はっきりとした数字は分かりませんが・・
Posted by るぅ at 2006年10月19日 21:12
るぅさん
そうなんですか?1億もいればいそうなものですが。

ただ、今の技術では治しようのない病ですしね・・・。
Posted by new_world at 2006年10月22日 01:07
▼o・_・o▼コンニチワン♪
日本人はそういった遺伝的な病気は表に出したがらないですから、見つからないかもしれないですよね。
Posted by むっち at 2007年10月05日 10:29
むっちさん
そうですね。あまり日本人はそういったものを公開したがらないですね。

長い間、閉鎖的な環境で形成された文化だからか、世間体とかを特に気にする民族ですよね。


科学的に見れば、遺伝病というものは進化の失敗とも見れますね。(まぁ失敗か成功かは現時点ではっきりさせることはできませんが)
Posted by new_world at 2007年10月08日 14:27
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