2006年01月12日

昆虫の繁栄の裏側《後半》 幼虫とサナギの開発

前回は脊椎動物が昆虫を追って空へ進出し、現在かなり繁栄しているという話で終わりましたが、今回はその続きです。空の脊椎動物が繁栄する為には、昆虫が繁栄する必要があります。

食べられるだけの昆虫がどうやって繁栄することができたのでしょうか。



陸上に進出して大量のエネルギーが必要となった脊椎動物達の餌になってしまった昆虫は、より多くの卵を産まなくてはならなくなりました

そのため、上陸の際に一旦卵の中に封印した昆虫の祖先形を復活させたのです。

しかし、陸上生活をするためにはある程度の装備を持たないといけません。

そこで生み出されたのが、幼虫というシステムです。

幼虫は不要な器官を全て退化させ、陸上生活に堪えられる最低限度の装備を持ち、ただ食べるだけの生命体として生み出されました

そのため、昆虫の幼虫はあんな形をしているんです。

しかも、種によっては昆虫を土の中にもぐらせます。

土の中というのは栄養的には劣るかもしれませんが、捕食圧が陸上に比べるとかなり低いんです。

陸上の幼虫も保護色や毒針などで身を守っていますが、やはり、土の中の方が安全らしく、結構たくさんの幼虫が土の中にもぐっています。


そして、その幼虫は、成虫とは全く違った生活をすることが多いですよね。

ここがまた重要なポイントです。

つまり、幼虫は成虫とは全く違った生態的な地位を得ることになったのです。

複数の環境に適応できた、ということです。

そのため、それぞれの環境にかかる負荷が減り、逆に繁栄することにつながったのです。

不幸中の幸いというか、次善の策が功を奏したのです。




ただ、この“別の生き物”のような幼虫というシステムを作った以上、成虫になる際に埋めるべきギャップも大きくなったといえます。

それを行うのがサナギという段階です。

サナギは一種の外骨格です。

幼虫においてはスムーズに成長するために固い外骨格は基本的に持ちません。(トンボは原始的な昆虫で幼虫⇒サナギ⇒成虫という形をとっていないので、ヤゴは外骨格を持っています。こういう形態を不完全変態と呼びます。)

ただ、空を舞う成虫は、外敵から身を守るために固い外骨格が必要なのです。(まぁ蝶や蛾はそこまで固さは変わりませんけど・・・)

それを作る過程がサナギなんです。

サナギという外骨格の型を作り、変形すべき部分を変形させ、それに裏打ちする形で外骨格を作るのです。

幼虫において発達していた筋肉も一旦溶かしてしまい、新たな型のもとで作り直したりします。


サナギというシステムの開発によって、成虫とは全く異なる幼虫というシステムが可能になり、より確実な成虫への成長が可能になったのです。

このシステムにより、捕食圧が極めて高い昆虫という種族が、確認されている生物種の半分以上が昆虫という、ある意味昆虫の時代と言われるほど繁栄できたのです。(まぁ微生物などがもっと沢山いるはずなので、実際の比率はそこまで高くないと思われています。)




余談ですが、昆虫の成虫の寿命はかなり短いですよね。

殆どの昆虫の成虫は1〜2ヶ月で死にます

カゲロウなんて成虫となれば数時間や数日の命です。

セミも数週間で死んでしまいますよね。

まぁ例外的にクワガタムシの一部が1〜2年、女王アリや女王蜂は10年近く生きるものもあります。(ただ、女王蜂以外の働き蜂は1〜2ヶ月で死んでしまいます。)

その短命の原因は、成虫が脱皮しない、というか、成虫は細胞分裂をしないというところにあります。

一部の昆虫においては再生能力を持つものもいますが、多くの昆虫は傷つけばそれまでです。

そのように、殆どの昆虫が短命なのは成虫が長生きする意義がないからだと考えられています。

成虫は子孫を残せばそれでいいのです。(働きアリなどには生殖能力はありませんが)

成虫は子孫を残せれば後は捕食者の餌となるのです。

それは、無駄な機能を成虫に残さないという目的もありますし、捕食者から若い個体(=自分より後に羽化した後発の個体)を守るという目的もあります。

さっさと卵を産んでしまわないといつ食べられるか分からないですし、卵を産んでしまえば食べられてしまった方が種にとっては有利なのです。

成虫にはだらだらと生きている余裕なんてないんです。

私達から見ればとても味気ない生活ではありますが、これが生物の本来の姿なのかもしれませんね。


posted by new_world at 17:25| Comment(9) | TrackBack(0) | 生態の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
さなぎの意味をはじめて知りました。
学問は面白いのですね。羨ましい。
Posted by 駄目と無駄 at 2006年01月12日 20:41
ん・・・ん・・・知れば知るほど虚しいような・・・(^_^;)
雨上がりに、地中から這い出した無色半透明のリボンのような虫をみることがあり、年甲斐もなく、とんで逃げますが・・・色素もなく、目も消化器もない生物。
どんな任務を背負って生きているのか・・・。
土の中って、未発見の妙な生物がたくさんいるのでしょうね・・・ぞぞぞぞ〜っ(*_*)
Posted by rococo at 2006年01月13日 12:31
初めてコメントさせて頂きます。
以前ある方がコチラのブログを紹介していまして、拝見させて頂いたんですが、その時は余りにも難解で・・・orz
今回の前・後編・とても面白かったです!
羽・翼の件、なるほどと思いました。人間の世界にしても現在社会の繁栄は飛行機の発明無しには考えられないですし・・・。
Posted by 1ststep at 2006年01月13日 12:45
駄目と無駄さん
サナギとか幼虫とか当たり前のようにあるので普段は気にしませんが、ちゃんと背景があるんですよね。

沢山の学者たちが一生懸命考え調べた結果でもあるんですけど。




rococoさん
半透明のリボンのような虫ですか??見たことないですね・・・何なんでしょう。
哺乳類くらい大きくなると、私達に近い感覚で生きていますが、昆虫や微生物のレベルになるとなかなか理解できないです。
生命の本質に近いと言えばそうですが、私達の場合、繁殖よりも他の事に対する意識が強いので、なんとなく違う感じを受けるんですね。

私達は新しい生命の本質を体験しているのかもしれませんね。
Posted by new_world at 2006年01月14日 13:50
1 ststepさん
はじめまして。
何も考えずに書くと説明が雑になって難しくなっちゃうんですよね・・・特に量が多いときは書くのに疲れて説明がおざなりになりがちです。
あと、分野的なものもあるでしょうね。
生態学みたいな大きな生物学の場合、イメージがしやすいので分かりやすいのかもしれません。著作権と技術の都合上、殆ど図を使わずに説明しているので、イメージできるかどうかで全然変わってきますよね・・・私はテキストなどで図を見ていますのでイメージできているのですが、それを言葉で説明するのは難しいです。

飛ぶことで地面との摩擦から開放されますのでよりスムーズに動けるようになりますからね。移動が楽になることも重要な利点だと思います。鳥や昆虫は凄い距離を移動したりしますからね。
Posted by new_world at 2006年01月14日 13:55
こんにち▼・。・▼」」」」ーワンワン!!
昆虫はさなぎの時期がありますよね。一番無防備なときをすごすことになりますが、きがかりです。
Posted by むっち at 2006年01月15日 11:25
むっちさん
サナギってあまり動かないので逆に気付かれないんじゃないでしょうか。それに、型ですので結構硬いですし。動かないのは事実ですが、たぶん無防備ではないんだと思います。
Posted by new_world at 2006年01月17日 03:10
▼o・_・o▼コンニチワン♪
ブログのタイトルですが「何と不思議がいっぱい」ではどうですかね。
変かな。
「ダーウインが見た」はどうですか。
Posted by むっち at 2008年08月06日 11:28
むっちさん
ブログのタイトルですか・・・なんかもう、このままでいいかなって思ったりもします。ある意味ユニークですし。

「何と不思議がいっぱい」「ダーウィンが見た」ですか。

ただ、最近、科学系の話から遠ざかりつつありますからね・・・科学系のブログである事をメインにすべきか迷っています。

Posted by new_world at 2008年08月09日 13:24
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