2006年01月17日

地球の自転軸の震え〜木村栄のZ項〜

100年以上前の話ですが、日本に木村栄(ヒサシ)という一人の学者がいました。

彼は、地球の自転軸の震えについて新しい理論を世界に提唱した、明治時代の科学者です。緯度は北極星の角度から分かりますよね。

これは北極星が地球の自転軸の方向にあるためです。

でも、実は、地球の自転の回転軸は揺らいでいるのです。

もし回転軸がぶれていると、北極星の角度がぶれることになりますよね。

次の図を見てみてください。

回転軸のぶれ

















北極星は充分に遠いので、地球のあらゆる面に同じ方向から光がさしているとみなせます。

図を見れば分かるとおり、回転軸がずれると同緯度における北極星の角度が変わってしまうのです。

まぁ実際はほんの少しですけどね。



勿論、これは北極星に限ったものではありません。

地球が傾くわけですから、見える星座は全て傾きます。

その傾きを計測することで地球の回転軸のブレを調べようという試みがあったのです。

当時の理論は、『地球の自転軸は少し傾いたコマのようにぶれている』というものでした。

それを証明しようと同じ緯度上の複数個所において星空の観測が行われたのです。

それに新興国日本も参加しました。

木村栄はそのリーダーだったのです。

この国際的な試みは日本が参加する最初の学術的な国際協力だったといわれています。

日本の学者達も一生懸命努力し、アメリカやヨーロッパに負けないように観測を行いました。

ところが、ドイツの本部から次のような通達が来ます。

日本の観測記録は理論からの誤差が大きすぎる。

日本の精度は他の観測所の半分程度とみなす。


木村栄らは悩みました。

観測には自信がありましたし、観測器具にも何の問題もありませんでした。


そこで、木村栄は『現在想定している極運動以外の自転軸の変化があるのではないか?』と考え、他の観測記録を調べるなどして、新しい理論に至ります。

当時の理論式に新しい項(まぁ新しい式です)をつけ加えたのです。

これによって観測の精度が格段に上がることになったのです。

その項はZ項と呼ばれています。

ただ、このZ項、原因はさっぱり分かりませんでした。(だから名前もZ項なんでしょうね。)

一体何が地球の自転軸に影響を及ぼしているのか、当時の知識では分からなかったのです。

それが分かるのは70年後です。

地震波によって地球の内部構造が明らかになり、1970年ごろ、とうとう、木村栄のいた観測所の研究者若生康二郎が、Z項の原因が地球が流体の核を持つことによるものであることを突き止めたのです。



地球は表面から地殻⇒マントル⇒核(外核+内核)という構造をとっています。

地殻は私達がいつも見ている地球で、マントルは固体ですが比較的流動性があります。

その内側にある核は二層に分かれていて、主成分は共に鉄と思われていますが、圧力の問題で外側では液体、内側は固体の核になっています。

Z項という自転軸の変化は、この液体の核が原因だったのです。(詳しい機構については知りません。中に液体があることによって、地球全体の回転に影響を与えるのは何となく分かりますけど。これは月に液体の核がないことを示すことにもつながったんだと思います、たぶん。)

1902年当時はマントルの存在すら分かっていなかったのですから、地球の真ん中に液体の層があるなんて考えてもいなかったでしょうね・・・


とはいえ、このZ項は国際的にも高い評価受けました。

木村栄は、文明開化後初の国際的な業績を残したとして、学士院恩賜賞と文化勲章の第1号の受賞者となりました。


posted by new_world at 21:53| Comment(4) | TrackBack(0) | 地球の科学・暦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すこし元気が出る話が読めました。
ありがとうございます。
またお願いいたします。
Posted by 駄目と無駄 at 2006年01月17日 22:15
駄目と無駄さん
どうもです。科学というより伝記っぽいないようですが、日本の科学史においては重要なことなんです。
Posted by new_world at 2006年01月19日 20:50
とってもすごい科学者wwwwwww
尊敬してしまいます!
Posted by たいやき at 2008年11月12日 11:31
たいやきさん
科学者は現代世界を支える大黒柱の一つです。
まぁ、どちらかというと、目立つ大黒柱と言うより、縁の下の力持ち、屋台骨、家の基礎のようなものですかね。

私も、一度は科学者を志した人間ですが、その待遇の悪さに方向を変えてしまいました。科学者がもっと優遇される時代がくれば、もっと社会は発展すると思います。

もちろん、私のような“本当に生活をかけてでも科学者になりたい”訳ではない人が増えたからと言って、単純に人数対比で進歩するとは限らないですが、頭数が増えるだけでもできることはかなりあるんです。
Posted by new_world at 2008年11月23日 09:26
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