2006年06月02日

カエルの目とオタマの目

全てのカエルでそうなのかは知りませんが、カエルの視覚とオタマジャクシの視覚は微妙に違うところがあります。

色の見え方です。とりあえず、光の認識について簡単に説明したいと思います。

光の認識は、目にある視細胞中の視物質が光のエネルギーを取り込むことで生じます。

エネルギーを取り込むと言うのは、光のエネルギーによって、視物質の一部がちょっと変化するんです。

その視物質に生じた変化を、細胞内の通常のシグナル伝達の仕組みに変換して、シグナルとして視神経の方まで伝達するんです。

特殊なのは視物質の変化の部分だけで、あとは体の中では一般的な伝達システムです。

そして、大量の視細胞から受けた情報を段階的に統合して行き、最終的には複雑な信号として脳の方へ伝え、私たちは光を認識しています。


カエルもそうです。

目で認識した情報を脳に伝えて処理します。

ただ、カエルの場合、私たちと違って、成長において、ちょっと特殊な変化をします。

幼生から成体への変化です。

オタマジャクシがカエルになるんです。

ここで重要なのが、環境の大きな変化です。

田んぼの中などで生きるオタマジャクシと主に陸上で生活するカエルでは明らかに周辺の世界が異なります。

その違いの一つに、光も含まれます。

たとえば、見える色です。

水中と空気中では屈折率が違いますので目の構造自体も変化するのかもしれませんが、それについては私は知らないので、今回は色の認識についてだけ書きたいと思います。

まぁ色と言っても、水中でも空気中でも、基本的に物の色は変化しません。

水の中でも青いものは青いですし、赤いものは赤いです。

でも、オタマジャクシのいる田んぼの中では、田んぼの中では水がにごっているんです。

たかが濁りではないかと思われるかもしれませんが、これは、結構大きな違いで、にごっていると光が散乱されやすいんです。

私たちの感覚からすれば、昼間と夕焼けみたいな違いでしょうか。

どの程度違うのかは知りませんが、とりあえず、光が散乱されやすいんです。

そのため、散乱されやすい青い光よりも散乱されにくい赤い光の方が若干多くなります(※)。


そのため、オタマジャクシの目の認識は、カエルの目よりも、ちょっと赤めにずれているんです。

勿論、そんなに簡単にずらせるわけではないのですが、かといって、全く無理なわけでもありません。


ちょっと化学な話になります。

視物質は、炭素の単結合−二重結合の連続によって光のエネルギーを受け取るのですが、その長さが長いほど長い波長の光に対応できます。

視物質には基本的にビタミンA(レチノール)由来の物質が用いられていて、ビタミンAは下のような構造をしています。

レチノールこの、右端のOHの部分が=Oになったものがレチナールで、これが視物質の要の部分となります。

このレチノールをみれば分かりますが、右の鎖の部分と左の環の部分がありますよね。

右の鎖を伸ばすのは難しいのですが、左の環の部分に二重結合を加えることは可能です。

環の左下の部分を二重結合にすることで、二重結合−単結合の連続を伸ばすんです。

そうすることによって、少し光に対する応答が変化し、より赤い光を認識できるようになります。




オタマジャクシの目には、カエルの目よりも二重結合が一つ多いレチナールが用いられているんです。




同様の変化が、うなぎやサケにも起きているそうです。

これは、海水と淡水の違いです。

海水に比べて、淡水はにごっている場合が多いので、うなぎの目も淡水で生活する時には二重結合が一つ多いレチナールが用いられているそうです。

また、深い海中では青い光が多く、二重結合が少ない方の視物質を用いる方が、短波長(青)に対応しやすくて効率的であるからだとも考えられています。


posted by new_world at 14:18| Comment(2) | TrackBack(0) | 生態の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この記事とは関係ないのですが、近況報告のところを読んで大笑いです。
結晶化って、やっぱ誰にでもできるのですね〜。
精製も自分達でやったのでしょうか?

ちなみに、結晶化条件の最適化も、構造解析も誰でもできますよ(笑)

自分達でできなかった結晶化が学生実習でできてしまったら・・

自分だったら落ち込みます。

それにしても、学生実習といえば、
結果が分かってる実験ばっかりやらされて
つまらなかった覚えがありますが、
結果の分からないテーマをやらせるところもあるのですね。

自分の時もそうだったらよかったのにな〜
とうらやましいです。
Posted by rie at 2006年06月04日 00:04
rieさん
去年の実習までは精製もやっていたらしいですが、精製二失敗してその後の実習が出来なくなるグループがたまに出ていたらしく、今回からはたんぱく質の精製は指導員の方がやってくれていました。

精製の前の段階のトランスフェクション・プラークアッセイもやったのですが、なんか、全く別の実習みたいになって、一貫性が失われていましたね。


確かに、学生実習に負けると悲しいですよね。
私も、なんか、ちょっと間違ってないかなって思いました。
でも、下手な鉄砲も数打てばあたるんでしょうね・・・


分からないことをする実習は珍しいみたいですね。
他の実習は基本的に結果が見えているものが多いようです。
Posted by new_world at 2006年06月05日 01:52
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