2007年01月30日

花粉症の原因“風媒花”〜風で花粉を飛ばす植物〜

スギヒノキカモガヤブタクサシラカンバ・・・花粉症の原因植物は基本的に風媒植物という風で花粉を飛ばす植物です。(植物名のリンクはWikipediaに飛びます。)

被子植物、裸子植物の送粉システムは、風による風媒、水による水媒、虫による虫媒、鳥による鳥媒などに分けたりしますが、風と水をまとめて風媒、虫と鳥をあわせて虫媒(もしくは動物媒)などと言ったりもします。

裸子植物は、被子植物のように蜜や花びらを作ることが出来ないので、基本的に風媒で、針葉樹と呼ばれるものなどがそれにあたります。

スギやヒノキ、マツイチョウなどが裸子植物です。

そして、被子植物の中にも、お米やカモガヤといったイネ科、ブタクサのようなキク科、あとはドングリを作るクヌギなどのブナ科の植物の中に風媒のものがいます。

原始的な裸子植物が風媒なので被子植物における風媒も昔の名残かと思われた事もありましたが、実際は、虫媒だった様々な植物が再び風媒になったという事が分かっています。また、ブナ科のクリなど、風媒から再び虫媒になっている種もあります。

ちなみに、被子植物の中で特に原始的だといわれるのは、モクレンスイレンシキミなどです。ちゃんと花びらをもった虫媒の植物です。(ただ、最も原始的な花と呼ばれるセンリョウには花びらはありません。)


風媒の植物の花(裸子植物の場合、厳密には花とは呼びません)には虫や鳥を誘うための花びらや蜜などはなく、私達の目から見れば“花が咲かない植物”ということになります。まぁ被子植物の風媒花の場合、虫媒だった頃の名残で花びらが残っているものもありますが。


風媒には色々と問題があります。

@花粉を届ける効率が悪い
花粉を届ける効率を考えれば、蝶々のように花から花へ渡ってくれる虫媒の方が圧倒的にいいです。風に頼んでも届けてくれる確証はありません。

そのため、風媒植物は花粉を大量に作り煙のように送り出します。花粉症の時期になるとよくテレビでスギの木から黄色い花粉の煙が出ているところが流れていますよね。あんな感じで、凄い量の花粉を作って飛ばしています。

庭木によく使われる松も同じで、松も初夏に煙のように花粉を飛ばします。私も小さい頃、松の木をたたいて遊んでいました。たたくと花粉の煙が舞うんです。

私が花粉症であることが分かった時は、「絶対に松の花粉が原因」と母親に言われましたね・・・実際はカモガヤとブタクサでしたが。


イネ科など小さな植物では煙のようには見えませんが、花粉の量は大きさに対してかなり多いようです。

そうしないと受粉できないのでしょうがないのですが、虫媒の植物に比べると明らかに花粉の無駄遣いです。


A花粉散布範囲が狭い
さらに、風による送粉は、散布距離まで短いんです。

ほとんどの風媒植物の花粉は100mくらいで落ちてしまうそうです。まぁスギ花粉のように風に乗って凄い距離を移動するものも一部ありますが、だいたいは飛んで数百mです。なので、イネ科の花粉症などは、原因植物が近所に生えていないと花粉症になることはありません。

また、花粉を遅れる距離が短いということは、近くに同種の植物がないと受粉が出来ないということです。さらに、風に舞う花粉は昆虫に様に器用に障害物を避けたりはできないので、他の植物にぶつかって落ちてしまうことも多いんです。

そのため、植物の密度の高い(=障害物が多い)熱帯雨林などでは風媒植物はあまり見られません。熱帯雨林などで見られる風媒植物は、森林の縁に生えていたり、周りの木よりも背を高くして花粉を何とか届けています。

また、花粉を遠くに飛ばすことが出来ないので、風媒植物は“群”を作る傾向があり、針葉樹林のように、同じ種類の木が密集して生えていることが多いんです。イネ科の植物もよくかたまって生えていますよね。




ただ、イネ科やブナ科などでもともと虫媒だったいくつかの植物が、(それぞれ別々に)風媒になっています。つまり、風媒にも利点があるのです。

風媒植物は花粉を大量に作る必要はありますが、花びらや蜜を作る必要がありません。蜜を出したり綺麗な花びらを作って虫や鳥を誘うためには大きなエネルギーが必要です。虫媒花は花粉を効率的に届けることが出来ますが、虫を呼ぶために色々と工夫が必要なんです。

しかも、そこには競争も生じます。より目立つ花、より多くの蜜を出すものが生まれれば、淘汰されて滅びてしまいます。

お店のようなものですね。客寄せをしないとつぶれてしまうんです。

しかし、風は平等に吹いてくれます。そのため、風媒植物は自分のことだけを考えて、花粉を上手くばら撒いて、花粉を上手くキャッチする仕組みを発達させています。

さらに、風は常にあるので、不景気でお客さんが減っても大丈夫です。

気候や病気の影響で昆虫の数が減った場合に虫媒植物は大きな打撃を受けます。さらに、共進化でお互いに協力するように進化していた場合、特定種族のみの減少でも大打撃です。(風は進化しないので共進化は生じません。)

これは寒い地域における針葉樹林の形成とかかわりがあります。

熱帯のように虫も鳥も年中沢山いる万年好景気な環境であれば虫媒植物は常に受粉機会にめぐまれているのですが、高緯度の寒い地域では長い冬の間は虫は眠っていますし、その絶対数も少ないんです。

それで、地球上なら大体どこにでも“生息”している風を利用した風媒植物が繁栄することになります。



温帯においても風媒植物は比較的よく見られます(中心は虫媒ですが)。イネ科の植物は、草原を形成する主要な植物です。

なぜ風媒のイネ科が繁栄しているのか私は知りませんが、たぶん、草原が作れれば、風媒の弱点が克服できるからだと思います。密集していれば風頼みでも充分に受粉できますし、草原だと障害物も少ないです。そういえば、イネ科の植物なんかの花は、周囲の植物よりも少し高めに出てきていますよね。ススキみたいに(ススキもイネ科です)。

また、温帯の森林を構成しているブナ科の風媒植物は、春先に花粉を飛ばします。これは、温帯の森林においては、冬場に(障害物となる)葉の数が減るからです。裸子植物のスギやヒノキの花粉もそうですね。あれも、冬の終わりから春(2〜4月)にかけて飛ばされています。(そろそろスギ花粉の季節です。年によって差はありますが、2月上旬〜中旬に関東〜九州の太平洋側から次第に北へ向かって花粉飛散が始まります。北陸・東北は3月頃からです。)





こんな感じで、色々な制約を受けながらも、あれこれ対応策を立てて風媒の植物達は生きています。

まぁでも、生物の住みやすい温暖で湿潤な環境では生き残るのが難しいので、追いやられている感じはしますけどね。


posted by new_world at 14:08| Comment(2) | TrackBack(0) | 生態の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
まるで、資本主義と共産主義みたいですね。(笑)

北海道にはスギが殆どありませんので、スギ花粉症の方はいませんが、代わりに白樺花粉症の方がかなりいます。
私は花粉症ではないのですが、ハウスダストアレルギーなので予備軍ですね。(苦笑)
Posted by 深夜勤務クン. at 2007年01月31日 02:59
深夜勤務クン さん
そんな感じもしますね。

北海道と同様に欧米にもスギはないのでスギ花粉症は見られないようです。ただ、それぞれに花粉症の原因となる風媒植物が生息していて、たとえばアメリカでは、ブタクサ花粉症がかなり多いそうです。

何かアレルギーを持つ人は花粉症にもなりやすいみたいですね。私も、いくつか(軽度ですが)アレルギーを持っています。
Posted by new_world at 2007年02月01日 09:25
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