2007年09月23日

ビタミンA〜視覚の要〜

一応視覚を研究している私にとっては最も馴染みのあるビタミンで、栄えある通し記号一番目、“A”のビタミンです。


レチノイド物質名としては、レチノール、レチナール、レチノイン酸などで、レチノイドとも呼ばれます。

私がいつも使っているのはレチナールで、視細胞にあって光を受容している視物質は『タンパク質+レチナール』で出来ています。
これらの物質名が網膜(retina)に由来するように、ビタミンAは視覚系の要となる物質です。ビタミンA欠乏症としてよく知られているのが「夜盲症」で、レチナール不足により視物質の再生が追いつかなくなり目が見えにくくなる病気です。(ビタミンA不足ではなく、網膜などに異常があることで生じる夜盲症もあります。)

レチノイドは“A”のビタミンですが、実際はビタミンB1の発見が最初です。レチノイドがAのビタミンとなったのは、ビタミン発見のあと、ビタミンの命名者(×発見者)が脂溶性のものをA、水溶性のものをBとしたためで、脂溶性だったレチノイドが“A”のビタミンとなりました。

ビタミンの名称のアルファベットは基本的に“命名された順”ではありますが、必ずしも“発見された順“ではないんです。




レチナール




レチノイドの構造は、六員環に炭素鎖一本伸びた“ひしゃく”の様なもので、視物質では、そのひしゃくの取っ手の部分が折れ曲がったもの(11-cis retinal)が、オプシンと呼ばれるタンパクの中に入っています。光を吸収することでその折れ曲がりがまっすぐ伸び、それによって外側のオプシンタンパクの構造を変えて“生体内での情報”を作ります。

まぁ光に反応するバネみたいなものですかね。(光の吸収には共役構造という=と―の連続が重要となりますが、ちょっと難しくなるので省きます。視物質の可視光吸収の話は別の機会に書くかもしれません。)

このレチナールのオプシンタンパク内での構造の変化は超高速で、約200フェムト秒・・・これは現在確認されている中で最速の異性化反応です。

そして、光を受けて取っ手の伸びたレチナールはオプシンタンパクから外れ、オプシンタンパクはまた折れ曲がったレチナールを取り込むことで視物質として再生します。(視物質=オプシン+レチナール)

ビタミンAの摂取不足によりレチナールの量が減るとと視物質の再生が通常よりも少なくなり、目が見えにくくなるんです。



ビタミンAのもっともメジャーな機能はこの視覚のスイッチの役割ですが、ビタミンAは高等動物においては細胞の増殖・分化の誘導なども行うとされています。

そのため、ビタミンAの不足は成長不良を引き起こします。

少し難しい表現になりますが、レチノイン酸受容体などが遺伝子の転写(=タンパク質の合成)制御に直接関与していて、また、甲状腺ホルモンやビタミンDの遺伝子に対する作用の制御にも関わっているそうです。

ビタミンAやD、甲状腺ホルモン、ステロイドホルモンなどは“低分子脂溶性リガンド”(リガンド=シグナルを伝える分子)とよばれ、それらの受容体は核内受容体といって、特定のリガンドが結合することによって細胞の核の中のDNAに直接作用してその制御を行っています。(脂溶性の分子なので細胞の膜をそのまま透過できるんです。)

つまり、DNAからタンパクが作られるタイミングや量を制御しているということです。

単純に言えば、ビタミンAがなくなるとそれらが行われなくなるので、細胞でのタンパク合成がうまくいかなくなって、細胞が増えたり特定の機能を発揮することができなくなるんです。

最近は、この分化・増殖を促進する機能を利用した医薬品も開発されているそうです。




ちなみに、ビタミンAとよく一緒になって言われる分子にβカロチン(もしくはβカロテン)というものがあります。

これはプロビタミンA(=ビタミンAになる前の物)などとも呼ばれますが、なぜこれがプロビタミンAなのかは構造を見れば一目瞭然です。


βカロチン




これは、レチノイドが二つ向かい合って結合した形なんですよね。

これを二つに分割することでレチノイド×2とすることができるんです。


ビタミン


posted by new_world at 21:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は足りてないんですかね、Aが。。。

夜、歩いてる時に目がなれるまで時間がかかりますよ〜?鳥目って言うんですかね?

母は完全に見えてる道も見えないことがありましたね。。。
しばらく手探り、みたいな(笑)
今は別の状態で暗い所がダメですが(汗)
Posted by マチルダ。 at 2007年09月24日 09:10
マチルダ。さん
暗闇に慣れる(暗順応といいます)速さとビタミンAは確かに関係があるのですが、必ずしもビタミンA不足が原因とは限りませんよ。

「夜目が聞く」という表現があるように、暗闇での見え方には個人差があるようですし。

夜目が聞く理由はよく知りませんが、暗いところでの情報処理の能力ですかね。同じ映像を見ていても、見える人と見えない人がいますし・・・暗い環境でよく作業をする人とか、薄暗い中でのものの見方を会得しているのかも知れません。
Posted by new_world at 2007年09月28日 00:49
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