2007年11月18日

光のビタミン −ビタミンD−

以前、ビタミンの話をいくつか書きましたが、一つ、書き忘れていた物がありました。

ビタミンの中の変わり種、ビタミンDです。

どう変わっているかというと、このビタミン、ビタミンなのに体内で合成できるんです。

ビタミンの語源は vital amine = 生存に必須なアミン であり、本来は摂取する必要のある=体内で合成できないアミン(実際はアミンだけではなかったのでvitamine は vitaminと改名されました。)をさしていました。

しかし、このビタミンDは、摂取する必要はあるのですが、体内でも合成でき、しかも、どちらか片方が欠けると、多くの場合不調が生じるんです。

もちろん、多く摂取すれば体内で合成しなくてもいいのですが。


この摂取が必要かつ体内合成も必要という特徴がビタミンDの特定をかなり難しい物にしたそうです。

しかも、体内合成をするために必要な物がまた意外な物で・・・


ビタミンDを体内で合成するのに必要な物は、紫外線、つまり、“日光”です。


日光の不足でビタミンD不足が引き起こされるんです。


ビタミンD不足によって生じるのはカルシウム代謝の異常による成長不良や骨格異常、“くる病”と呼ばれる病気です。

特にカルシウムを多く必要とする子供においてその症状は顕著に表れ、極端に日照不足の地域において、くる病が多く発生しました。

“極端な日照不足”なんていう環境は自然に生活していればほとんどあり得ないのですが、人類史上、ある時期においてその状況が長期間続いたことがありました。

産業革命期です。

産業革命期は今と違って“環境問題”なんていう概念もなく、都市部の空は年中煙に覆われていたそうです。

その地域において、子供を中心にくる病が蔓延したんです。

“蔓延”という表現は原因が分かっている今となっては正しくはないですが、当時はきっと、蔓延していると考えられたと思います。まさか、日照不足が原因だとは考えるはずもないですから。


ただ、日照不足が原因ですから、日光に当たる環境に移れば回復します。

つまり、都市部から離れれば回復するんです。

大勢のくる病患者がいましたから、郊外に移り住むことになった子供もいたようで、そういうところから「くる病の治療」例がちらほらと出るようになったようです。

また、ビタミンDは食品からも摂取可能ですので、ある特定の食品を多く与えた場合にも回復が確認された事例があったようです。

ただ、そこから原因を究明できる人は、結局、20世紀まで現れませんでした。


20世紀になり、ビタミンという概念が浸透して行くにつれて、ビタミンDという存在が明らかになっていきます。


ビタミンDの同定につながった研究は他のビタミンの研究やくる病の研究の他にもう一つありました。

それはコレステロールの研究です。

実はビタミンD、皮下に蓄えられたコレステロール(7-デヒドロコレステロール)に紫外線があたることで作られるんです。

これは皮下に限らず他の生物、まぁ、食品に対しても同様で、紫外線を当てた食品の摂取によってくる病の治療も行われました。(ただ、紫外線照射で食品の風味が損なわれるので、親物質である7-デヒドロコレステロールが同定されてからはそこからビタミンDを合成するようになったようです。)

干椎茸などにビタミンDが多く含まれているのも、日光により合成された結果です。



20世紀前半のビタミンD体内合成システムの解明によりくる病は治療可能になり、今ではあまり見られなくなりました。

ただ、このビタミンD不足、意外なところで見られるようになっています。

一つは黒人。

国際化により、本来は日光の強い地域で生活していた黒人が日光の極端に弱い地域にまで移住することが見られるようになりました。

黒人は紫外線を防御するメラニンが多く分泌されており、皮下にまで紫外線が到達しにくい構造になっています。

そのため、ある程度の光量がないと日光不足になるんです。

もちろん、食べ物からも摂取可能ですし、極端に日照が少ない地域に行かなければ問題ないのですが、それでもちらほらそういう事例が見られるようになったようです。

これは極地域などに生活する人たちにもみられる現象で、太陽がほとんど顔を出さない時期が長い極地域においては肌が白い人種においてもビタミンD不足が見られるそうです。

そのため、そういった地域では食品からの摂取が重要となり、ビタミン摂取の知恵が自然と根付いているそうです。

生肉を食べるのもその一つだと言われています。



それと、黒人移民、極地域の人たちの他にも、意外なところでビタミンD不足が見られます。

いわゆる“紫外線対策”です。

日焼け止めによる皮膚上での紫外線の大幅なカット、これが行き過ぎるとビタミンD不足になるんです。

特に、最近は子供に日焼け止めをぬる親が増えています。この行為自体はガン予防という観点では間違っていないと思いますが、行き過ぎは禁物です。

日照不足は成長不良・骨格異常につながるんです。

もちろん、食品から摂取するように心がければ問題ないのですが、それよりもある程度日光に当たるように心がける方が楽だと思います。

UVカットガラスでなくても紫外線は半分くらいはカットされますし、室内では明るくして日焼け止めを落とすなどの対策をした方がいいと思います。

もちろん、強い直射日光は肌に悪いので日焼け止めや服などで防いだ方がいいと思います。







今回のビタミンDの話で一応用意していた3つのビタミン(A・B・D)の話は終わりですが、また何かおもしろい話があれば書きたいと思っています。

ビタミン


posted by new_world at 11:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
知らないことは沢山ありますね〜。o○

同じ人間でも、黒人さんと白人さんではやっぱり違いますよね。。。
日焼けしすぎて水ぶくれになる黒人さんって居るんですかね?

日光に当たるというのは大切なんですね☆
Posted by マチルダ。 at 2007年11月19日 10:23
マチルダ。さん
私も知らないことだらけです・・・。

地域間の変異が少ないことが特徴としてあげられる人類ですが、適応しなければならないところは適応しているんですよね。

人間地球ならどこででも生きて行けそうな気がしますが、ちょっとくらいは制約があるようです。

白人は赤道直下では厳しいですし、黒人は極地域には不向きです。

肌の色などの形態的な違いというのは、ちゃんと意味があるんですよね。
Posted by new_world at 2007年12月06日 16:21
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