2010年03月14日

アレロパシー〜ヨモギの強さの秘訣〜

ヨモギって結構あちこちに自生しています。しかも、もさっとヨモギの集合体を作っています。

ヨモギは日本人にはなじみの深い植物で、ヨモギ団子など食用に用いられたり、お灸のもぐさなんかも実はヨモギだったりします。

ところで、このヨモギ、凄く強い植物なんですよね。

というのも、ヨモギはアレロパシーという能力を持った植物の一つなんです。

アレロパシーというのは他感作用とも呼ばれ、周囲の植物(や動物・微生物)を弱らせる(引き寄せる)物質を葉や根から分泌したりする機能の総称ですが、ヨモギが持っているのは周囲の植物を抑制する能力です。

ヨモギは、集合体が地下茎でつながっていて、そこから周囲の植物を弱らせる物質を分泌しているんです。つまり、周囲に毒をまいて自分達だけ生き残っている訳です。

セイタカアワダチソウなんかも集団で空き地を占領していますよね。あれもアレロパシーで周囲の植物を抑え込んでいるからです。

また、ソバなんかも周囲を抑制する能力を持っており、江戸時代から雑草を枯れさせる為に数年に一回ソバを育てたりしたそうです。除草剤付き植物って感じですかね。


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2010年03月13日

眠くならない花粉症の薬のしくみ

私と違って私の免疫系は学習意欲が旺盛なのか、花粉への免疫反応は10歳くらいの時に習得済みで、その後も着々とバリエーションを増やし、今では春先のヒノキ科スギ・ヒノキから夏場のイネ科ブタクサ、秋口のキク科のカモガヤまでそれぞれの季節で様々な風媒花の花粉を「敵」だと学習してしまいます。

そんなオールシーズン(冬は除く)花粉症な私にとって抗ヒスタミン剤のアレグラはほとんど常備薬です。

花粉症の薬を飲んでいると言うと「眠くならない?」とよく聞かれるのですが、最近の抗ヒスタミン剤は眠くならない工夫がされているのでほとんど眠くならないはずです。(プラセボなどは有り得ますが・・・)

そもそも何故眠くなるのかと言うと、花粉症の原因となるヒスタミン受容体(H1受容体)が脳にもあるからなんですよね。ヒスタミンと拮抗する抗ヒスタミン剤により脳のH1受容体の活性を落とすと眠くなるようです。

では、どうやって鼻には作用して脳には作用しない様に薬を作るのか、という話です。

経口薬ですと、局所的に機能させるのはとても難しいのですが、「脳」は少し違うんです。

脳と言うのは特殊な器官で、高い恒常性を保つため、通常の器官とは異なる守りがされています。

それは血液脳関門と呼ばれる血液と脳の組織液を隔てる特殊な物理的障壁で、この脳関門は分子量が大きなものや水溶性の高いものは通過できません。


昔の抗ヒスタミン剤はこの脳関門を通過してしまっていたので、眠気の原因となっていた訳です。

本来は逆なのですが、どうにかして「脳関門ではじかれる抗ヒスタミン剤」を作ろうとして作られたのが一般に「第二世代」と呼ばれる抗ヒスタミン剤です。

私が服用しているアレグラと言う薬はIUPAC名では(RS)-2-[4-[1-ヒドロキシ-4-[4-(ヒドロキシ-ジフェニル-メチル)-1-ピペリジル]ブチル]フェニル]-2-メチル-プロピオン酸らしいのですが、ポイントなのは「プロピオン酸」の部分です。

アレグラは、副作用が問題となった抗ヒスタミン剤「トリルダン」を改良した薬です。

このトリルダンという薬は「眠くならない抗ヒスタミン剤」として世に広まったのですが、この薬は心臓に対して毒性がある等副作用もありました。

ただ、「眠くならない」のは事実で、そのポイントは「肝臓でカルボン酸型代謝物」となって機能するところでした。カルボン酸となることで水溶性が増し、脳関門ではじかれる様になった訳です。

しかも、毒性があったのはカルボキシル基がつく前の物質で、カルボキシル基がつくと毒性はなくなります。

ということは、その代謝物であれば、「眠くならない」上に、「毒性もない」薬となる訳です。

それがアレグラです。

ただ「COOH」が一つついただけなのですが、機能はそのままで毒性はなくなった訳ですね。

毒性があっても研究を諦めなかった科学者の成果と言えます。
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2009年10月03日

アイとアユムのご褒美システム

少し前の話ですが、シルバーウィークの初日に、お台場の科学未来館で、京大霊長類額研究所の公開講座を受けてきました。

松沢所長のお話と4人の研究者の方の研究紹介があったのですが、それぞれに興味深い話が多く、来年も受けてみたいと思いましたね。

まぁ具体的な内容についてはもしかしたら別の機会に書く事があるかもしれませんが、その講演の中で聞いてちょっと衝撃を受けた話を書きたいと思います。

それは、アイとアユムのご褒美のシステムです。

アイとアユムと言うのは、テレビとかでもたまに出ていますが、短期記憶力などの研究の対象となっているチンパンジーです。

画面上に1、2、3・・・とバラバラに配置されていて、それがぱっと消えた後に、その数字があった場所を1から順番に触れていく、みたいな実験です。

チンパンジーの短期記憶力は私たちヒトの記憶力よりも優れていて、最速で0.2秒(眼球の動きよりも速く)で5〜6くらいの数字の場所を記憶してしまうそうです。


そして、正解すると小さなリンゴ等が出てくるそうです。

いわゆる「ご褒美」ですね。

ただ、このご褒美、ちょっと衝撃的なカラクリ(?)があります。

実は、このご褒美、その日のエサの一部だそうです。
つまり、成功しても失敗しても一日に食べられる量は同じ・・・

ご褒美と言うより、お小遣いの前借り的なものです。食べ過ぎは良くないですからね。

とはいえ、銀行員をしている私は、融資というそれと同じような仕組みで食べているので、それは酷いとは言えませんけどね。

アイとアユムのご褒美は、「エサそのもの」ではなく、「早く受け取る事が出来た」と言う事で、同じだけもらえるとすると、お金で言う金利の分は得している訳です(笑)
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2008年07月06日

サイトカインストーム〜新型インフルエンザで若者が倒れる?〜

私も詳しい事は知らないのですが、H5N1型のインフルエンザウイルスの人への感染においてサイトカインストームと呼ばれる症状が確認されているそうです。

サイトカインについては何年か前に説明した事がありますが、マクロファージから分泌されるある種の伝達物質の総称です。

炎症について簡単に振り返っておきますと、マクロファージが病原体を飲み込むとサイトカインやロイコトリエンなどの炎症を引き起こす物質を産生します。

炎症と言うのは、血管の拡張とそれによる血流の増加と血流速の低下、血管壁の内皮細胞の活性化による白血球を接着する分子の発現、そして、血管壁の内皮細胞同士の結合の低下による血管透過性の亢進による血液中の液体や蛋白の組織への移動、の大きく分けて3つの過程により生じます。これにより免疫物質・細胞の動員、物理的な障壁の形成、そして、修復の促進が行われます。また、痛みを発する事で患部を示し、固定させる働きもします。



サイトカインストームと言うのは、サイトカインが過剰に産生されることでこの炎症反応が過度に生じて起きるもので、高サイトカイン血症とも呼ばれ、敗血症の一部にもサイトカインの過度の産生によるものがあります。約100年前のスペイン風邪でも多くの若者がサイトカインストームによって命を落としたとされています。

現在トリからヒトへの感染が確認されているトリインフルエンザにおいても同様の反応が見られるようで、トリインフルエンザの死者は確定数で385名が感染し内243名(63%)がなくなっているそうですが、その中でも若者の占める割合が高いようです。

もちろん、若者が感染しやすい環境にあったとも考えられますが、ヒトからヒトへの感染は確認されていないので学校などにおける集団感染はなく、若者が極端に感染しやすい環境にあったとは言えません。

もし、これがヒトからヒトへの感染の段階へウイルスが進化した場合、同様に若者が多く倒れる可能性が示唆されています。必ずそうなると決まった訳ではないですが、可能性は高いのです。

自分が健康だからと、新型インフルエンザを甘く見るのは危険なのです。
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2008年05月18日

瞳の色の違い

(以前書いた「目の色」を修正したものです)
虹彩の色、いわゆる目の色っていくつかありますよね。日本人は基本的に濃い茶色をしていますが、他の地域には青色や灰色、黄色っぽい人もいます。

この違いは、メラニン色素の量で、これは、肌と同じです。

肌の色と同様に、光を防ぐ働きがあります。

目は光を見るものですので、常に明るいところにさらされる事になります。そのため、太陽光の強い地域では、光を受信する網膜に到るまでに、余計な光をカットするしっかりとした遮光板を作っておく必要があるんです。それが虹彩の色として現れているんです。

虹彩はカメラで言うしぼりの役割をするもので、瞳孔の大きさを変化させて光を受信する網膜に入る光の量を調整しています。そのため、そこを光が透過してしまっては意味が無いんです。

そこで、光の強い地域の人は黒っぽい虹彩を持つ事になります。

逆に、緯度の高い光量の少ない地域の人は、光を遮断する必要がないため虹彩が黒くなる必要はありません。ただ、肌はビタミンDなどを作るために必要な一定量の紫外線の供給のためにメラニンを減らす必要があるのは分かりますが、なぜ目の色が青くなる必要があるのかは私はよく知りません。

肌の色よりも目の色が濃いところからも、目が光を積極的に遮断しようとしてるのは確かです。


とはいえ、実際に、青い虹彩では光を充分に遮断する事ができないため、青い虹彩の人には明るい地域ではサングラスが必要になります。

よく、地中海岸や東南アジアを旅行する白人は眼鏡をかけていますが、あれはファッションではなく本当に必要だからなんです。もし、日本人がまぶしいと感じるような環境であれば、青い目の人は相当まぶしく感じているはずです。

サングラスも日焼け止めも、高緯度地域を離れた白人の人にはかなり重要なものなんです。


他の記事で紹介しますが、逆に黒人の人が高緯度の地域に行って体が異常を来す事もあります。

地域間で遺伝的変異の極めて少ないヒトですが、必要な部分はきちんと適応しているんです。
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ヒトの視覚

(以前書いたヒトの視覚を修正したものです。)


魚は色が見えると思いますか?犬は色が見えると思いますか?

また、ヒトはどうやって色を見ていると思いますか?

視覚を中心に生活している私たちヒトですが、視覚のメカニズムを知っているヒトは少ないと思います。

私は大学で視覚の(特に光受容に関する)勉強をしていましたが、視覚と言うのは他の感覚器に比べ、リアルタイムの処理と情報の統合という点で優れているように思います。

たとえば、現在観測されている中で世界で最も速い化学反応は視覚の入り口の部分の反応です。また、網膜には5種類もの神経細胞が層状に並んでいて情報統合などを行い脳へ送り出しています。

このように、目と言う感覚システムはとても興味深いシステムなんです。

今回は、その中でも、色の認識について、他の生き物との違いを紹介したいと思います。


ところで、色を最も重視している生き物って何だと思いますか?

まぁ色々といるでしょうが、その一つに蝶があげられると思います。

昆虫の視覚は私たちの視覚とは構造的に大きく違うので今回は取り上げませんが、アゲハチョウの色認識は相当高度で、ヒトが3種類しか持っていない色認識のセンサーを5種類以上も持っています。

この色認識のセンサーと言うのは、ヒトで言えば、光の三原色に対応し、「青」「緑」「赤」の光を強く受信するセンサーで、色はこの3つのセンサーが受けた刺激が統合される事で見ています。それが多いと言う事は、より細かに色を分析できると言う事になります。

蝶の例のように、生物ごとに色の認識システムは結構違っていて、たとえば、ニワトリとネズミ、ヒトではどれも色認識のセンサーの種類の数が違います。

これは、鳥類、ほ乳類(一部の霊長類を除く)、一部の霊長類、という色識別の種類分けになるのですが、一番多いのは鳥類で4つ、ほ乳類は一般的に2つ、ユーラシア大陸系の霊長類は3つです。

ただ、4つというのが原型のようです。

最初の質問に半分答えてしまいましたが、魚の目は4種類の色認識のセンサーがあり、きちんと色が見えているはずです。

魚類はもっとも原始的な脊椎動物に属しますが、色はヒトよりも多い4種類のセンサーでちゃんとみています。

魚類に限らず、爬虫類も4種類の視物質を持っており、人間以上の色覚水準を備えているといえます。

ただし、これだけは言っておかないといけないのですが、色が見えているからと言って、ちゃんと見えているかは別物です。つまり、目は神経系なので、情報は入ってきてもそれを処理できなければ意味が無いと言う事です。つまり、同じレベルの情報が入力されても、高性能なコンピュータと低コストなコンピューターでは結果が異なると言う事です。

外界の環境や外敵の接近、餌の発見、獲物の追尾など各生物で求められる視覚の種類が異なります。そのため、同じような目を持っていても、見えているものは違うんです。

同じヒトでも、プロには見えて素人には見えないものって結構ありますよね。


また、さきほど、「ほ乳類(一部の霊長類を除く)」と表現しましたが、実はここがまた面白いところなんです。

ネズミは2種類の色センサーしか持っていませんが、私たちはそれを3つ持っています。

魚やは虫類は4色ですので、ほ乳類で2つ減り、霊長類で1つ増えている事になります。

ここからは、何故ほ乳類は2つ減ったのか、何故霊長類で1つ増えたのか、その2点について説明したいと思います。


ヒトを含む一部の霊長類以外のほ乳類は、『赤』と『青(紫)』の2種類の光センサーしか持っていません。

しかも、驚くべきことに、目の発達した哺乳類といわれる霊長類にすら光センサーが2種類のものが存在します。

新世界ザルと呼ばれる、アメリカ大陸(←新大陸・新世界)などに生息する霊長類です。(ヒトは元来アフリカのサルで、最近、約3万年前にアメリカに進出しました。)

つまり、そこが境目ということです。

:視物質の増加

アフリカ・ユーラシアのサルは3つありますが、アメリカのサルは他のほ乳類同様に2つしかないんです。(この完全なる地域分離もサルの面白さでもあるのですが、これはまた別の機会に。)


ではまず、何故、哺乳類において色覚が衰えているのかと言う点を説明します。

これは哺乳類の進化の過程に答えがあります。

世の中には“色覚が十分な効果を発揮しない世界”があるのです。

“夜の世界”です。

光の量が少なく色の識別が難しい夜間に生活するようになった、そう、哺乳類は夜行性になったのです。恐竜が栄えた時代を生き抜くため、哺乳類は暗い世界に逃げたのです。

そのため、“色を見る”よりも“暗闇で見える”力の伸ばしたのです。

夜に働く光センサーは別にあって、それは光を受容する細胞の種類も少し違います。夜の景色を思い出していただければ分かると思いますが、私たちも、夜には色が見えませんよね。

それは、夜に働くセンサーは1種類しかなく、光を分析できないので色が見えないんです。色が見えるように種類分けしてしまうと、感度が落ちてしまうからです。10個のセンサーをおくスペースがあるとして、5個のセンサーで赤を、5個のセンサーで青をとらえて統合処理するよりも、10個のセンサーで一番多くくる光の強度のみをとらえた方が有効なんです。

この夜行性化したほ乳類が、恐竜絶滅後、昼行性に進化したのが今の昼間生活している私たちのようなほ乳類です。

ウシや馬も、二種類しか持っていません。



そうなると次の、“ユーラシアの霊長類は何故3色目を取り戻したのか、どうやって失った3色目を取り戻したのか”が問題となります。

何故3色目が必要だったのか?

それは、私たちの食料に関係があります。

私たちヒトを含め、霊長類の主食には果物がありました。ビタミンCが作れないのも、果物を多く食べるので必要なかったからです。

そのため、熟れている果実とまだ青い果実を区別する必要があったのです。

完全2色性の色弱のヒトは、葉っぱとみかんの区別、また、青いみかんと黄色いみかんの区別がつきにくいと言います。つまり、3色目を獲得する事で、効率的に栄養価の高い果物が取れるようになったのです。

今でこそ食べ物はテーブルに並びますが、野生ではそうはいきません。そうなると、3色の個体と2色の個体で生存能力に大きな差が出てしまいます。それで、ユーラシアの2色性のサルは競争に負け、滅びたのです。

しかし、その進化が起こっていないアメリカのサルでは未だに2色性です。ヒト以外のサルはベーリング海峡を越えられませんので、移動が生じないのです。



では次に、3色目の獲得方法について説明します。

ほ乳類全般は赤と青の二色しかセンサーがありません。魚やカエル、ヘビにはある緑を失ってしまっているからです。

なんと、“赤色の光受容体を重複させ緑色に変化させた”のです。

って言ってもよくわかりませんよね。

そんなにすぐに無いものは作れないので、まぁ言うならば、赤のセンサーの一部をいじって緑のセンサーにしたっていう感じですかね。

赤色のセンサーを作る遺伝子を複数に増やして、その一つを緑色になるようにいじるんです。

いじると言っても、すべて偶然の突然変異ですけどね。


視物質の波長特性


この図からも、赤と緑が近いのが分かりますよね。

最近分岐したものであるため、遺伝子がすぐ近くに存在します。

ただ、遺伝子が近い故に、遺伝子の交差により高頻度で色覚異常が生じてしまっています。

遺伝子の交差については説明が面倒なので省きますが、遺伝子がすぐそばにあるので、互いに影響を与えやすく、片方が変になったり、お互いが重なってしまったりしてしまうんです。

その遺伝子がX染色体にあり、劣勢な遺伝であるため、この色覚異常は殆ど男性にしか見られません。X染色体、Y染色体と言うのは性を司る遺伝子を含む染色体で、男性はXY、女性はXXという組み合わせで持っています。

つまり、男性のX染色体にあるセンサーの遺伝子に異常があるとどうしようもないのですが、女性の場合、Xを2つ持っているので、片方がつぶれていてももう片方で作られるんです。

しかも、女性の場合、更に興味深い事に、その片方のX染色体にある情なセンサーが正常な感度を持っている場合、それが4色目のセンサーとして働く事すらあると言われています。

実際のデータなどは持っていませんが、4色性の女性が色覚に優れていると言うデータがあるという話を聞いた事があります。

女性の4色化の方はまぁプラスの変化なのでいいのでしょうが、それが男性で起きると困った事になります。つまり、男性は2色化もしくは2.5色化です。(ただし、4色性の母親の子供は色弱になる可能性が高いです)

遺伝子の異常により、片方のセンサーの遺伝子が異常をきたした場合、緑もしくは赤のセンサーがおかしくなります。最悪の場合、完全な2色になってしまいます。

実際は、2.5色と言う表現のように、赤色が見えにくい、というような事になるのですが、それでも充分に不利な性質です。

さきほど述べた通り、染色体の数からこの現象は男性に多く、その率は男性全体の5〜8%と言われています。これは日本人のAB型血液の率と同じであり、もう異常とはいえない数です。アメリカ人男性ではAB型が少なく(3%)色弱者が多い(8%)ため、AB型の人よりも多くなっています。

そのため、赤、緑系の色と言うのは使い方を考えるべきだと思います。特に、深紅のような深い赤は避けた方がいいですね。緑側の2色性のヒトには見えません。見えにくい、ではなく、見えないんです。背景と同じ色に見えるはずです。

信号のように位置が固定されているものであれば「どこが光っているか」で分かるのですが、たとえば、プレゼンの文字色、レーザーポインタの色など、そういう所に赤色を使うと、数%の男性はそれが見えないか見えにくいと感じるんです。

1000人のフォーラムなどでプレゼンをするときには、50名近くは赤色が見えにくいと言う事を意識してプレゼンをくむ必要があると思います。

実際は、見えないと言うよりも見えにくい程度のヒトが多いため、本人もそれに気付かず、自動車免許を取るときなど、その検査結果で色覚異常と言われて驚くヒトが多いようです。



最後に、サルの世界での色盲について面白いデータがあります。

自然界に生息するサルには色盲が遥かに少ないのです。

1000頭に1頭程度だそうです。

ヒトに比べて緑と赤の視物質を司る遺伝子が離れているわけではありません。

これは、自然淘汰です。

人間の場合、色覚異常でも生きていられるので、“遺伝”する色覚異常は遺伝して増えていきます。

ところが、自然界ではそうはいかないのです。

色覚異常は生存に直接影響するのです。葉っぱと果実の区別や果実の熟れ具合の判断が苦手であると、生存競争に不利になります。そのため、かなり淘汰されているようです。

あと、先ほど示した通り、白人に比べ、日本人にも色弱者は少ないようです。

もしかすると、日本においては、色覚異常のあるヒトが欧米に比べて生存が厳しかったのかもしれません。


(※2枚の図は京都大学理学研究科七田研究室HPから引用)
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2008年03月24日

遺伝子と、たんぱく質とアミノ酸

以前にも記事に書いた気がしますが、今回はDNAとアミノ酸、たんぱく質、それぞれの関係について紹介したいと思います。ごくごく基本的なところなので、高校生以上の生物履修者には当たり前すぎることだと思います。


たんぱく質とは何か。

それは「アミノ酸の鎖」です。私たちの体を構成するたんぱく質は10万種類ほどあるといわれていますが、その全てが20種類のアミノ酸が鎖のように連なることで作られています(アミノ酸についてはビジュアル生理学というサイトのこのページを参照してください)。



遺伝子とは何か、つまり、生き物を作るために保存しておく必要のある情報は何か。

それはアミノ酸の配列。

実は、私たち生物が遺伝子によって記録しているのは、たった一つ、アミノ酸の配列だけです。

まぁ厳密に言えば、その遺伝子を、記された情報をそのままに表面を加工することで更なる情報を付加はしているのですが。ちょうど、文章とフォントみたいな感じでしょうか。太字とか斜体とか下線とか、そんな感じの修飾も情報として重要だといわれています。(エピジェネティクスと呼ばれている分野です。)


と、話を戻します。

私たちが本当の意味で保存しているのは、アミノ酸の配列だけです。あとの修飾は、その読み方に関する情報などであるといわれています。

遺伝子、物質名でいう“DNA”は、デオキシ リボ核酸の略称で、私たちは4種類のデオキシ リボ核酸を並べることで情報を作っています。

つまり、遺伝子は4種の記号(文字)のみで書かれた設計書なんです。

その4種類は構造の一部分、塩基と呼ばれる部分が違います。よくDNAの塩基配列って言いますよね。違うところは塩基の部分だけですので、その部分が情報に当たるんです。

その塩基部分の名称がグアニン、シトシン、チミン、アデニンであるため、塩基配列はその頭文字からG,C,T,Aと略されます。

たとえば、とある遺伝子の配列は

 CTAAATTGTA AGCGTTAATA TTTTGTTAAA ATTCGCGTTA AATTTTTGTT
AAATCAGCTC ATTTTTTAAC CAATAGGCCG AAATCGGCAA AATCCCTTAT
AAATCAAAAG AATAGACCGA GATAGGGTTG AGTGTTGTTC CAGTTTGGAA
CAAGAGTCCA CTATTAAAGA ACGTGGACTC CAACGTCAAA GGGCGAAAAA
CCGTCTATCA GGGCGATGGC CCACTACGTG AACCATCACC CTAATCAAGT
TTTTTGGGGT CGAGGTGCCG TAAAGCACTA AATCGGAACC CTAAAGGGAG
CCCCCGATTT AGAGCTTGAC GGGGAAAGCC GGCGAACGTG GCGAGAAAGG
AAGGGAAGAA AGCGAAAGGA GCGGGCGCTA GGGCGCTGGC AAGTGTAGCG
GTCACGCTGC GCGTAACCAC CACACCCGCC GCGCTTAATG CGCCGCTACA
GGGCGCGTCC CATTCGCCAT TCAGGCTGCG CAACTGTTGG GAAGGGCGAT
CGGTGCGGGC CTCTTCGCTA TTACGCCAGC TGGCGAAAGG GGGATGTGCT
GCAAGGCGAT TAAGTTGGGT AACGCCAGGG TTTTCCCAGT CACGACGTTG
TAAAACGACG GCCAGTGAGC GCGCGTAATA CGACTCACTA TAGGGCGAAT
TGGAGCTCCA CCGCGGTGGC GGCCGCTCTA GAACTAGTGG ATCCCCCGGG
CTGCAGGAAT TCGATATCAA GCTTATCGAT ACCGTCGACC TCGAGGGGGG
GCCCGGTACC CAGCTTTTGT TCCCTTTAGT GAGGGTTAAT TGCGCGCTTG
GCGTAATCAT GGTCATAGCT GTTTCCTGTG TGAAATTGTT ATCCGCTCAC
AATTCCACAC AACATACGAG CCGGAAGCAT AAAGTGTAAA GCCTGGGGTG
CCTAATGAGT GAGCTAACTC ACATTAATTG CGTTGCGCTC ACTGCCCGCT
TTCCAGTCGG GAAACCTGTC GTGCCAGCTG CATTAATGAA TCGGCCAACG
CGCGGGGAGA GGCGGTTTGC GTATTGGGCG CTCTTCCGCT TCCTCGCTCA
CTGACTCGCT GCGCTCGGTC GTTCGGCTGC GGCGAGCGGT ATCAGCTCAC
TCAAAGGCGG TAATACGGTT ATCCACAGAA TCAGGGGATA ACGCAGGAAA
GAACATGTGA GCAAAAGGCC AGCAAAAGGC CAGGAACCGT AAAAAGGCCG
CGTTGCTGGC GTTTTTCCAT AGGCTCCGCC CCCCTGACGA GCATCACAAA
AATCGACGCT CAAGTCAGAG GTGGCGAAAC CCGACAGGAC TATAAAGATA
CCAGGCGTTT CCCCCTGGAA GCTCCCTCGT GCGCTCTCCT GTTCCGACCC
TGCCGCTTAC CGGATACCTG TCCGCCTTTC TCCCTTCGGG AAGCGTGGCG
CTTTCTCATA GCTCACGCTG TAGGTATCTC AGTTCGGTGT AGGTCGTTCG
CTCCAAGCTG GGCTGTGTGC ACGAACCCCC CGTTCAGCCC GACCGCTGCG
CCTTATCCGG TAACTATCGT CTTGAGTCCA ACCCGGTAAG ACACGACTTA
TCGCCACTGG CAGCAGCCAC TGGTAACAGG ATTAGCAGAG CGAGGTATGT
AGGCGGTGCT ACAGAGTTCT TGAAGTGGTG GCCTAACTAC GGCTACACTA
GAAGGACAGT ATTTGGTATC TGCGCTCTGC TGAAGCCAGT TACCTTCGGA
AAAAGAGTTG GTAGCTCTTG ATCCGGCAAA CAAACCACCG CTGGTAGCGG
TGGTTTTTTT GTTTGCAAGC AGCAGATTAC GCGCAGAAAA AAAGGATCTC
AAGAAGATCC TTTGATCTTT TCTACGGGGT CTGACGCTCA GTGGAACGAA
AACTCACGTT AAGGGATTTT GGTCATGAGA TTATCAAAAA GGATCTTCAC
CTAGATCCTT TTAAATTAAA AATGAAGTTT TAAATCAATC TAAAGTATAT
ATGAGTAAAC TTGGTCTGAC AGTTACCAAT GCTTAATCAG TGAGGCACCT
ATCTCAGCGA TCTGTCTATT TCGTTCATCC ATAGTTGCCT GACTCCCCGT
CGTGTAGATA ACTACGATAC GGGAGGGCTT ACCATCTGGC CCCAGTGCTG
CAATGATACC GCGAGACCCA CGCTCACCGG CTCCAGATTT ATCAGCAATA
AACCAGCCAG CCGGAAGGGC CGAGCGCAGA AGTGGTCCTG CAACTTTATC
CGCCTCCATC CAGTCTATTA ATTGTTGCCG GGAAGCTAGA GTAAGTAGTT
CGCCAGTTAA TAGTTTGCGC AACGTTGTTG CCATTGCTAC AGGCATCGTG
GTGTCACGCT CGTCGTTTGG TATGGCTTCA TTCAGCTCCG GTTCCCAACG
ATCAAGGCGA GTTACATGAT CCCCCATGTT GTGCAAAAAA GCGGTTAGCT
CCTTCGGTCC TCCGATCGTT GTCAGAAGTA AGTTGGCCGC AGTGTTATCA
CTCATGGTTA TGGCAGCACT GCATAATTCT CTTACTGTCA TGCCATCCGT
AAGATGCTTT TCTGTGACTG GTGAGTACTC AACCAAGTCA TTCTGAGAAT
AGTGTATGCG GCGACCGAGT TGCTCTTGCC CGGCGTCAAT ACGGGATAAT
ACCGCGCCAC ATAGCAGAAC TTTAAAAGTG CTCATCATTG GAAAACGTTC
TTCGGGGCGA AAACTCTCAA GGATCTTACC GCTGTTGAGA TCCAGTTCGA
TGTAACCCAC TCGTGCACCC AACTGATCTT CAGCATCTTT TACTTTCACC
AGCGTTTCTG GGTGAGCAAA AACAGGAAGG CAAAATGCCG CAAAAAAGGG
AATAAGGGCG ACACGGAAAT GTTGAATACT CATACTCTTC CTTTTTCAAT
ATTATTGAAG CATTTATCAG GGTTATTGTC TCATGAGCGG ATACATATTT
GAATGTATTT AGAAAAATAA ACAAATAGGG GTTCCGCGCA CATTTCCCCG
AAAAGTGCCA C


みたいな感じで示せます。私たちの設計図には、こんな感じで塩基が30億ほど並んでいます。



次に、DNAとアミノ酸の関係です。

私たちのたんぱく質は20種類のアミノ酸で作られていますので、4つの記号では3つを組み合わせる必要があります。ATCGのみを使って20種類の並びを作るには文字を3つ並べる必要がある、ということです。

1つでは4種類しかありませんし、2つでは最初が4つとその後が4つで合わせて16種類しかありません。3つだと4・4・4で64種類の並び方が存在します。

そのため、4種類の核酸で20種類のアミノ酸を記すには3文字ずつ区切っていけば充分です。

事実、私たちの遺伝子は3文字単位で区切られていて、それぞれに対応するアミノ酸が存在します。

その対応関係はわかっていて、コドン表と呼ばれています。(実際の表はwikipediaコドン表を参照。ただ、ここではDNAではなくRNAの塩基で表記されていますので、チミンがウラシルになっています。流れとしては、DNA→RNA→アミノ酸なので:wikiセントラルドグマ

コドン表は、核酸3つとアミノ酸の対応表で、この対応表どおりにDNAを読んでアミノ酸の鎖が作られることで私たちの体は作られ機能しています。


そして、DNAの記録どおりにアミノ酸を並べて作られたたんぱく質が私たちの体を構成しています。


アミノ酸20種類にはアルファベット1文字での略称があるのですが、一般的に、たんぱく質のアミノ酸配列を示すときには、そのアルファベットを並べます。

DNAで塩基の名前を並べたように、たんぱく質ではアミノ酸の名前を並べるんです。

たとえば、ロドプシンのアミノ酸配列は次の図のような感じで示せます。

ロドプシン









ロドプシンは7回細胞膜を貫通していますので、それを表すように並べてあります。もちろん、DNAのように文字だけをずらっと並べることもありますが、こっちの方がロドプシンをイメージしやすいです。



私たちの体はまずたんぱく質から出来ています。

というのは、先ほど書いたとおり、遺伝情報としてはたんぱく質の情報しかもっていないんです。

他の要素は全て作られたたんぱく質によって調整されたり合成されたりするんです。

もちろん、DNAだけを容器に入れていても生物は出来ません。受精卵には、体作りを開始するためのきっかけや材料が含まれています。


ただ、基本的に、「アミノ酸配列の記されたDNA情報からアミノ酸が並べられてたんぱく質が作られる」ことで、私たちの体は作られ、機能しているということです。

これがある意味、生きているということなんです。
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2008年03月05日

GPCRについて

昨日、卒業研究報告が終わりました。知識不足でうまく説明しきれない不甲斐ない報告でしたが、一応、これで終点です。

これで引っ越しに専念できます・・・というか、もう5日しかないので、専念しないと間に合いそうにないですね。どうしてこんな日程にしてしまったのかはよくおぼえていませんが、たぶん、私の交渉能力の低さから、引っ越し屋さんをうまく丸め込めなかった事が原因でしょう。


ところで、いきなりですが、私の卒業研究の対象はGPCRでした。

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2007年11月18日

光のビタミン −ビタミンD−

以前、ビタミンの話をいくつか書きましたが、一つ、書き忘れていた物がありました。

ビタミンの中の変わり種、ビタミンDです。

どう変わっているかというと、このビタミン、ビタミンなのに体内で合成できるんです。

ビタミンの語源は vital amine = 生存に必須なアミン であり、本来は摂取する必要のある=体内で合成できないアミン(実際はアミンだけではなかったのでvitamine は vitaminと改名されました。)をさしていました。

しかし、このビタミンDは、摂取する必要はあるのですが、体内でも合成でき、しかも、どちらか片方が欠けると、多くの場合不調が生じるんです。

もちろん、多く摂取すれば体内で合成しなくてもいいのですが。


この摂取が必要かつ体内合成も必要という特徴がビタミンDの特定をかなり難しい物にしたそうです。

しかも、体内合成をするために必要な物がまた意外な物で・・・


ビタミンDを体内で合成するのに必要な物は、紫外線、つまり、“日光”です。


日光の不足でビタミンD不足が引き起こされるんです。


ビタミンD不足によって生じるのはカルシウム代謝の異常による成長不良や骨格異常、“くる病”と呼ばれる病気です。

特にカルシウムを多く必要とする子供においてその症状は顕著に表れ、極端に日照不足の地域において、くる病が多く発生しました。

“極端な日照不足”なんていう環境は自然に生活していればほとんどあり得ないのですが、人類史上、ある時期においてその状況が長期間続いたことがありました。

産業革命期です。

産業革命期は今と違って“環境問題”なんていう概念もなく、都市部の空は年中煙に覆われていたそうです。

その地域において、子供を中心にくる病が蔓延したんです。

“蔓延”という表現は原因が分かっている今となっては正しくはないですが、当時はきっと、蔓延していると考えられたと思います。まさか、日照不足が原因だとは考えるはずもないですから。


ただ、日照不足が原因ですから、日光に当たる環境に移れば回復します。

つまり、都市部から離れれば回復するんです。

大勢のくる病患者がいましたから、郊外に移り住むことになった子供もいたようで、そういうところから「くる病の治療」例がちらほらと出るようになったようです。

また、ビタミンDは食品からも摂取可能ですので、ある特定の食品を多く与えた場合にも回復が確認された事例があったようです。

ただ、そこから原因を究明できる人は、結局、20世紀まで現れませんでした。


20世紀になり、ビタミンという概念が浸透して行くにつれて、ビタミンDという存在が明らかになっていきます。


ビタミンDの同定につながった研究は他のビタミンの研究やくる病の研究の他にもう一つありました。

それはコレステロールの研究です。

実はビタミンD、皮下に蓄えられたコレステロール(7-デヒドロコレステロール)に紫外線があたることで作られるんです。

これは皮下に限らず他の生物、まぁ、食品に対しても同様で、紫外線を当てた食品の摂取によってくる病の治療も行われました。(ただ、紫外線照射で食品の風味が損なわれるので、親物質である7-デヒドロコレステロールが同定されてからはそこからビタミンDを合成するようになったようです。)

干椎茸などにビタミンDが多く含まれているのも、日光により合成された結果です。



20世紀前半のビタミンD体内合成システムの解明によりくる病は治療可能になり、今ではあまり見られなくなりました。

ただ、このビタミンD不足、意外なところで見られるようになっています。

一つは黒人。

国際化により、本来は日光の強い地域で生活していた黒人が日光の極端に弱い地域にまで移住することが見られるようになりました。

黒人は紫外線を防御するメラニンが多く分泌されており、皮下にまで紫外線が到達しにくい構造になっています。

そのため、ある程度の光量がないと日光不足になるんです。

もちろん、食べ物からも摂取可能ですし、極端に日照が少ない地域に行かなければ問題ないのですが、それでもちらほらそういう事例が見られるようになったようです。

これは極地域などに生活する人たちにもみられる現象で、太陽がほとんど顔を出さない時期が長い極地域においては肌が白い人種においてもビタミンD不足が見られるそうです。

そのため、そういった地域では食品からの摂取が重要となり、ビタミン摂取の知恵が自然と根付いているそうです。

生肉を食べるのもその一つだと言われています。



それと、黒人移民、極地域の人たちの他にも、意外なところでビタミンD不足が見られます。

いわゆる“紫外線対策”です。

日焼け止めによる皮膚上での紫外線の大幅なカット、これが行き過ぎるとビタミンD不足になるんです。

特に、最近は子供に日焼け止めをぬる親が増えています。この行為自体はガン予防という観点では間違っていないと思いますが、行き過ぎは禁物です。

日照不足は成長不良・骨格異常につながるんです。

もちろん、食品から摂取するように心がければ問題ないのですが、それよりもある程度日光に当たるように心がける方が楽だと思います。

UVカットガラスでなくても紫外線は半分くらいはカットされますし、室内では明るくして日焼け止めを落とすなどの対策をした方がいいと思います。

もちろん、強い直射日光は肌に悪いので日焼け止めや服などで防いだ方がいいと思います。







今回のビタミンDの話で一応用意していた3つのビタミン(A・B・D)の話は終わりですが、また何かおもしろい話があれば書きたいと思っています。

ビタミン
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2007年09月24日

ビタミンB1〜始まりのビタミン〜

オリザニン・・・世界で初めて単離されたビタミンで、現在はビタミンB1と呼ばれています。

この世界初のビタミンの発見者は鈴木梅太郎、日本人の農学者です。

世界初のビタミンを発見したのが明治時代の日本人だったのは、日本がビタミンB1欠乏症である脚気の最も深刻な国の1つだった事が背景にあると考えられます。

ただ、発見当時日本は日露戦争に何とか勝って先進国の仲間入りをするかしないかという状態の国でしたし、鈴木の発見は日本で発表されたこともあって国際的には認められず、記録上は、翌年のポーランド人化学者の発表が世界初ということになっています。(実を言うと、鈴木が農学者だったこともあり、日本の医学界でもなかなか受け入れられなかったそうです。)

とはいえ、日本人がビタミンを発見してしまうくらいに日本におけるビタミンB1問題は深刻だったんです。



肉食の少なかった頃の日本人にとってビタミンB1の摂取量の多くは穀物からでした。玄米の状態の米には多く含まれるのですが、精米された白米では含有量はかなり減ってしまい、白米の浸透した層においてビタミンB1欠乏症がかなり多く発症しました。

ビタミンB1は肉類や牛乳、麦などに多く含まれるため、それらを多く摂取する西洋人にとって脚気は“見たことのない病気”なのですが、それにもかかわらず、江戸末期から明治期の日本では富裕層から町人まで(白米が浸透していたため)幅広い層で見られたため、来日した西洋人から「日本の風土病なのではないか」と考えられたくらいでした。(実際は東南アジアなどでも見られる病気だったようですが)


これだけ日本人に頻繁に見られた脚気ですので、それについては語りきれないくらい多くの逸話が残っています。

特に陸軍と海軍の脚気対策の違いの話が有名です。


軍人なのに雑穀や玄米を食べさせるわけには行かない、という方針で、軍人は白米が食事として出ていました。しかし、米は用意できても下級兵には副食を充分支給出来なかったため、精米時に失われた分のビタミンB1を摂取することが出来なかったのです。

それで、下級兵の多くが脚気を発症しました。

神経伝達異常が生じて足が動かなくなると兵隊にならないので、軍の上層部はその対応を迫られたわけですが、陸軍と海軍でその対応が大きく違いました。



海軍は、西洋及び西洋人の船で脚気が見られないこと、また、外国に停泊中には脚気が減ること、同じ船に乗船していても下級兵に多く見られること、などから、食事の違いが問題なのではないかと考えました。

最初はタンパク不足が原因と考え、肉類やパンを中心とした洋食が提案されたのですが、兵士の好みや予算の問題で和食に少し手を加える形(大麦を混ぜた麦ご飯など)での対処となりました。しかし、少し手を加えただけでも脚気患者は激減し、日本海軍において脚気問題はビタミン発見の30年以上前の1880年代には解決されました。

このような脚気に対する有効な対策が見つかることが、ビタミンの発見につながったといえます。

その提案を行ったのは高木兼寛という軍医で、その功績から日本の“ビタミンの父”とも呼ばれ、東京慈恵会医科大学の創立者でもあります。(麦ご飯を導入し、のちに男爵として貴族となったことから、“麦飯男爵”と呼ばれたこともあったようです。)



一方の陸軍の対応はかなり違いました。

脚気問題を栄養不足と考え早期に解決した海軍に対し、陸軍は脚気問題を解決できないままに日清・日露戦争に突入してしまい、戦争時の死者の過半数が脚気による死者だったのではないかと言われるほどに深刻化させてしまいました。脚気による死者に加え、脚気になると神経に障害が出ますので“戦死”の原因となった場合も多かったと考えられます。

何故陸軍で海軍のような対策が立てられなかったのかというと、陸軍では“脚気細菌説”が浸透していたからだといわれています。

当時はまだビタミンという概念が未成立の時代でしたし、19世後半はパスツールやコッホらの研究によって細菌学が急激に広まっており、その影響から脚気の原因も何らかの細菌ではないかという考え方が陸軍内に浸透していたのです。

それを“証明する”かのような発表もなされ、陸軍では「脚気は細菌によるものであり、栄養としても和食は充分なものである。また、白米は、士気を保つためにも最適の食材である」という方針の下で白米支給にこだわり続けました。

ただ、上層部はそうであっても、現場の方では麦飯の脚気予防効果への認識があり、戦時外は現場の判断で兵食に麦飯が取り入れられたりしていました。

しかし、戦時には兵食は上層部の一括管理となり、白米支給に一本化され、前述のような悲劇が起こったのです。

もし、陸軍がせめて麦ご飯を導入していれば、大勢の日本人の命は守れたかもしれません。まぁそれによって外国の人の命が奪われたのかもしれませんが・・・。



この逸話が示すようにビタミン発見以前にビタミン欠乏症という未知の存在を認識するのはきわめて難しく、それを当時主流だった病因=細菌という考えに固執してしまったのも無理はないと思います。

ただ、お隣の海軍で脚気対策に成功しているのに陸軍がそれから学ばなかったのは問題でしょうね。





チアミン







ビタミンB1についてですが、ビタミンB1は物質名をチアミンといい、水溶性の分子です。

水溶性のビタミンにはビタミンCなどが他にあるのですが、これらの機能を紹介するのは少し難しいんです。

これら水溶性ビタミンは前回話したビタミンAや今後紹介する予定のビタミンDなどと違って特定の目立った機能があるわけではなく、補酵素として色々なところで酵素の働きを手助けしたりしている分子なのです。

もちろん、欠乏症として脚気や壊血病が発症するように特に重要な働きをしてるシステムは存在します。

ビタミンB1欠乏症の脚気は神経系に異常が生じますし、ビタミンCの欠乏症である壊血病は出血性の障害で、これはビタミンCが組織間の結合に重要なコラーゲンや間充組織の形成に重要なアミノ酸の合成に必要で、ビタミンCの欠乏によって血管に異常が生じることによって出血が生じます。

しかし、水溶性ビタミンはこれらのシステム以外にも様々な場所で酵素活性を助ける物質として働いています。

そのため、不足すれば様々な部分で異常が生じますし、逆に言えば、きちんと摂取することで様々な部分が正常に働くようになる、ということです。


また、規定量のビタミンを摂取していても、一部の組織で過剰に使われると他で足りなくなり異常が生じることがあります。

たとえば、アルコールの分解にもビタミンB1は関与しており、アルコールを多量に摂取する人においてビタミンB1欠乏症が見られることがあるそうです。

他にも、喫煙者においては、喫煙により取り込まれた物質の代謝過程のおいて血液内に酸化ストレスが生じ、それを解消するためにビタミンCが消費されると言われています。

このように、多くの働きをする水溶性ビタミンは、一部の組織で多用されると他の部分で不足するという事態が生じます。



ただ、普通の食生活をしていて、普通の生活習慣をしていれば、まず今の時代にビタミン欠乏症にあることはないと思います。

まぁ最近は“普通”がずれてきている感じはありますけど・・・

ビタミンB1不足が気になる方は、毎日のご飯を玄米や雑穀ご飯にするなどして多めに摂取すればいいと思います。


ビタミン
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2007年09月23日

ビタミンA〜視覚の要〜

一応視覚を研究している私にとっては最も馴染みのあるビタミンで、栄えある通し記号一番目、“A”のビタミンです。


レチノイド物質名としては、レチノール、レチナール、レチノイン酸などで、レチノイドとも呼ばれます。

私がいつも使っているのはレチナールで、視細胞にあって光を受容している視物質は『タンパク質+レチナール』で出来ています。続きを読む
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2007年09月14日

必須微量栄養素“ビタミン”

ビタミンという概念の歴史は意外と浅く、ビタミンの一つが初めて単離されたのは1910年、ビタミンという名称が生まれたのは1911年です。続きを読む
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2006年10月22日

色か形か

私達ヒトの網膜には光のセンサーの役割をする細胞が2種類あります。片方は明るい時に働く錐体細胞、もう1つは薄暗いところで働く桿体細胞です。更に、錐体細胞は3種類あって、それぞれ異なった波長帯の光に強く反応し、その情報の組み合わせで私達は“色”を見ています。

暗くても形は見えるように形だけを見るのであれば1種類でもいいのですが、色を見ようとすると複数の情報が必要になります。まぁ言ってみれば、座標のようなものですかね。

ただ、その3つの錐体細胞の分布はちょっと偏っているんです。そもそも、その数自体も、6割が赤で緑3割、青1割と偏っています(理由は知りません)が、更にその分布も偏っています。

中心窩という部分に、青の錐体細胞が殆ど見られないんです。

私達霊長類の視野は、中心部だけ極端に鮮明に見えています。私達にとっては当たり前のことですが、他の動物にはない機能です。

これを可能にしているのが中心窩という部分で、ごく狭い範囲に多数の視細胞が極端に集まっています。

その視覚の中心とも言える部分に青の光感受性の錐体細胞が殆ど見られないんです。青はもともと少ない細胞ではありますが、中心窩には殆どありません。


その理由として考えられるのが形態視、形を見る能力を高めるためです。

色をしっかり見るのと形をしっかり見るのは両立しないんです。

理由は光の屈折。光は、水や空気、ガラスなど異なる屈折率を持つものの間で屈折します。それを利用して私達の眼やカメラのレンズは光を集めています。

ただ、この曲がり方が光の波長によって違うんです。

たとえば、です。あれは、光が水滴と空気の間で屈折することでできるものです。プリズムも同じです。波長の長い赤い光と波長の短い青い光は同じように曲がってくれないんです。

それで、眼でも、プリズムのようにレンズを通すと色がばらけてしまうんです。

眼と同じレンズの仕組みを利用しているカメラや顕微鏡などでも同様の問題があり、色収差とか言われているみたいです。

ある狭い波長域の光だけしか利用しないのであればそこまで問題ないのですが、それでは色がうまく見えません。

しかし、色をしっかり見ようとすると、どうしても屈折の違いから色によって像がずれてしまいます。

勿論、私達の目は色々と対策を立てていて精一杯そのずれを補正して入るのですが、やはり、限界があります。


そのため、中心窩においては緑と赤という近い吸収波長の錐体細胞を集めているんだと考えられるんです。

また、2色性の新世界ザル(→以前の記事)においても中心窩は出来ているようで、調べていませんが、たぶん、その中心窩は1種類(赤)の錐体細胞で出来ていると思います。その赤から緑が分かれたことで二種類の錐体細胞が中心窩にあるとも考えられます。

この場合も、中心窩の形成段階で、一種類の錐体細胞が用いられたのは色収差の問題があったと考えられます。中心窩は特に像が鮮明になるので、色収差が問題になるんでしょう。


ただ、視界の中心でもしっかり色は見えている気はするので、いろいろと他の仕組みでカバーしているんだと思います。
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2006年10月09日

ニワトリの卵の中

今、実習で、ニワトリの卵を観察しています。

先週の月曜日に生まれた有精卵の中身を割って取り出し、見やすいように綺麗に穴を開けた大き目の卵殻に移して、ラップで蓋をします。

下の写真は、下のような固定器具で固定して2日ほど育てたものです。受精卵は母体内で1日ほど育ちますので、これは3日目胚ということになります。

下のように固定するのは、卵を45°くらい定期的に傾けるときにこぼれない様にするためです。いわゆる“転卵”ってやつで、実際にニワトリも卵を定期的に動かしています。こうすることで、殻(この場合ラップ)に卵黄が付着するのを防ぎます。また、卵白をかき混ぜることで卵白に溶け込んでいる酸素や二酸化炭素などの濃度を均一にさせる働きもあるようです。


卵@(3日目胚)

















卵A(3日目胚)
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2006年06月16日

赤+青=紫?

赤色の絵の具と青色の絵の具を混ぜると紫色に、黄色の絵の具と青色の絵の具を混ぜると緑色に・・・

小学生ならとても不思議に思うことですが、大人になってしまうとそれが当たり前になってしまって、あまり気にしないものですよね。

ただ、何故?と聞かれても、なかなか答えられません。


光の色続きを読む
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2006年06月12日

ヒト科の中のヒトの特徴

ヒトは脊索動物門哺乳綱霊長目ヒト科ヒト属ヒトなのですが、ヒト科(現生)には他に、チンパンジー属、ゴリラ属・オランウータン属(オランウータン科とする分類も)があります。

ヒト科はヒト+大型類人猿ですが、その中で、人の持つ生物としての特徴をいくつか紹介したいと思います。続きを読む
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2006年01月08日

老化F ウェルナー症候群

久々に老化について書いてみたんですが、いまいち教科書的で味気ない内容になってしまいました・・・。

ウェルナー症候群という遺伝病があります。

これは成人の早老症と呼ばれ、通常よりも20年以上早い老化症状を伴う病気です。続きを読む
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2005年12月21日

老化E テロメア

テロメアについて書こうとは思っていたんですが、各生物固有のテロメアの長さが分からなくて、いくつか本を読んだりしてみました、けど、結局分かりませんでした。

論文とか探せばあるんでしょうけど・・・英語は苦手なんで。


老化と言えばテロメアを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、他の動物ではテロメア説はそこまで説得力のあるものじゃなかったと思います。

確かにヒトの場合はテロメアが重要な役割をしているようですけど。

でも、他の動物では死ぬまでにテロメアの長さは問題になることがないものがいます。

たとえばマウス。

マウスにはヒトの5倍以上のテロメアがあり、通常であれば、数世代まで持つ計算となります。

霊長類の中でもヒトのテロメアは特に短く、ヒトのテロメアは他の霊長類の半分以下だった気がします。


ヒトのテロメアは他の生物に比べかなり短いんです。

一部の組織の細胞では60歳くらいでテロメアがそこをついて増殖停止に追いやられます。

60歳ですよ、60。

老後の生活が始まっていない人が多いです。

そのくらいからテロメアが短くなりすぎて増殖不可になる細胞が出始めるんです。

個人差はかなりあるんですけど。

タバコを吸ってたりすると局地的に組織障害が繰り返されるのでその場所だけはより早く限界に達します。




テロメアはDNAの両端にある決められた6つの配列の繰り返しの部分です。その6つの繰り返しでヒトの場合1万くらいになります。

それが5000くらいになると複製のミスが出る可能性が高いので増殖停止命令が出ます。

このテロメアが必要となるのはDNAの末端の複製の問題なのですが・・・まぁまた今度説明します。



このテロメアの影響でヒトの細胞の分裂の限界は60回程度といわれています。

ただ、私たちの体は60兆個の細胞から出来ていますよね。

10回の分裂で1024倍ですので、40回で1兆倍くらいです。2の5乗が64ですので、60兆個になるには45回くらいは分裂が必要です。

ちょっと厳しいですね。

成人の体を一気に作ったとしても45回は分裂しなきゃいけないんです。

でも、実際は15年くらいかけて作るんでそのなかで沢山の細胞が死んでしまいます。

命の回数券はまだ15回分は残っていますが。


そのため、生殖細胞ではテロメアが少し長めに“作って”あります。

あえて“伸ばして”あるんです。

生殖細胞とはいえ親の細胞の分裂によって生まれますので、伸ばす機能がないと子供は親より短くなってしまいます。

そのため、生物はテロメアーゼというテロメアを伸ばす酵素をもっているんです。

しかも、発生初期にはテロメアーゼが働いて分裂してもテロメアが短くならないようになっています。


ただ、このテロメアーゼ、そのあとは封印されます。

テロメアーゼの遺伝子はしっかり鍵がされてしまうんです。

この酵素、とても危険なんです。

一見、無限に分裂できるようになりそうな気はしますが、実際はそういう簡単な問題ではないんです。

細胞分裂におけるDNA複製は完璧ではなく、増殖すればするほどミスが蓄積します。

無限に増殖するには、正確なDNA複製能力がないといけないんです。

だから、多細胞生物では永遠の命が困難なんです。

私たちは進化することからも分かるとおり、DNAの複製には必ずミスが生まれます。

大腸菌などであれば、細胞が一つしかないのでその細胞のDNAが変化しても他には影響しないのですが、私たち多細胞生物だと、一部の細胞だけが違ったDNAを持つことになります。

多少の違いは許容できるのですが、“永遠”は無理でしょうね。

突然変異の多くはマイナスに働きますので。

ガン化もその一つです。





テロメアーゼが復活するとガン化がしやすくなるでしょうね。

増殖に限界がなくなるんで。

タバコなどによって炎症が続き、増殖し続けている部分はがん化しやすくなります。

実際に、8割くらいのガン細胞において、テロメアーゼが復活してるんです。



つまり、テロメアーゼの封印はガンの予防になっていたんです。

ガン細胞の定義は生体システムで制御が出来ない『増殖し続ける細胞』です。

増殖し続ける為にはテロメアーゼが必要なんです。(テロメアーゼがないガン細胞もあるようですが、その仕組みはよく知りません)





細胞は増殖できればいいわけではないんですね。

いくら長く増殖できるようになっても、細胞にかかる負担は同じなんで、傷は残るんです。




と、なんか少し話が飛びましたね。

老化の話です。

ヒトにおいてはテロメアが短いのでテロメアが“命の回数券”のような働きをしているのは事実なようです。

テロメアの短縮が速いと早く老化するといわれます。

プロジェリアやダウン症、ウェルナー症候群、ナイミーヘン症候群などの老化が早い遺伝病の患者においてはテロメアが短かったり、短縮スピードが速かったりしているようです。

ただ、これには他の老化原因も見つかっており、必ずしもテロメアが中心ではないようです。



また、慢性肝炎や肝硬変の患者では肝臓の再生能力が落ちるといわれています。

これも、慢性的な炎症などで肝臓の細胞の増殖回数が増えすぎて、“回数券が足りなくなってしまった”為だと考えられています。

肝臓の“老化”と言えます。

更に、増殖が本来多いリンパ球においても“回数券が足りなくなって”分裂できなくなる場合があります。

この場合、免疫が動かなくなるということなので、健康に直結します。

これは免疫力の低下の一因ではないかといわれています。

このように損傷・増殖を繰り返し、テロメアが足りなくなることで機能不全になることは確認されています。

ただやはり、テロメアが老化の大きな要素であるのかはよく分かりません。

テロメアが短くなる前から老化は始まりますので。

老化は30代くらいから始まりますが、30代であればテロメアの長さはまだ結構あります。

それなのに老化は始まるんです。

テロメアよりもDNAの損傷の蓄積などの方が老化につながりそうな気がします。

まぁまだよく分かっていないんですけどね。





あと、活性酸素の濃度が高いとテロメアの短縮が早くなるそうです。

高濃度の酸素かで培養した細胞においては、分裂回数に対してテロメアの減少が著しかったそうです。

逆に、低酸素の状態だと細胞の寿命が延びたそうです。

活性酸素はここにも出てくるみたいです。





ややこしいですね・・・

まぁ老化はややこしいんですけどね。

前回はカルシウムの話、今回はテロメアの話・・・次回はヘリケースの話(ウェルナー症候群)の予定です。

どれも老化に関与しているみたいです。

でも、ほんとよく分かっていないみたいなんですよね・・・情報に不明点が多すぎて分かった気が全然しないです。

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2005年12月15日

老化D ヒトのように老化するマウスから

1997年、『動脈硬化』『肺気腫』『骨粗鬆症』『毛根の減少』『しわ』などヒトとよく似た老化現象が現れる早期老化マウスが同定されました。

平均寿命は60日

マウスの平均寿命は2年前後ですので、どれだけ短いかは分かると思います。

このマウスに欠損していた遺伝子それが作るタンパクも判明し、その遺伝子・タンパクは、ヒトの運命を司る、生命の糸を紡ぐ女神klothoに因んでklotho(クロトー)遺伝子・klothoタンパクと命名されました。

そして、このklotho遺伝子と同じ機能をしている遺伝子がヒトでも発見されました。

このklothoタンパクが担っている役割を解析することで、ヒトの老化現象にアプローチしようとしているのです。

ヒトのような老化ヒトには当たり前なのですが、マウスにとっては異常なので、その異常(=ヒトのような老化)の原因からヒトの老化を考えようというものです


現在のところ、このklothoタンパクは、ビタミンDの制御によるカルシウムのコントロールに関与していると考えられています。

陸上で生きる私たちにとってカルシウムは極めて重要ですよね。

丈夫な骨格があってこそ機敏に移動することが出来るのです。


また、このタンパクはインシュリンの作用を抑制する働きがあることも分かっています。

インシュリンは血糖値を下げるホルモンとして有名ですが、実際には様々な作用があり、代謝系全体に重要なホルモンです。

その作用をklothoタンパクは抑制しているんです。

インシュリンを抑制しすぎると糖尿病になってしまいますが、ある程度の抑制がないと、代謝が活発になって活性酸素が沢山出てきたりして、体に大きな負担となります。



このような機能を持っているklothoタンパクが多く発現するマウスを遺伝子操作で作ると、そのマウスの寿命は通常の1.3倍程度まで伸びたそうです。

このタンパクが増えただけで寿命が延びたんです。



ヒトにおけるklothoタンパクの研究によって、このタンパクが『虚血性心疾患』『脳卒中』『骨粗鬆症』などの成人病に関与していることが分かっています。

もしかすると、老化の治療にも使えるかもしれないんです。

まぁまだ、よく分かっていないんですけどね。

マウスから発見された抗老化遺伝子(?)klothoはまだまだ研究途上だそうです。


東京大学の記者発表一覧に「抗老化ホルモンklothoによる寿命の延長とその分子機構の解明」というものがありました。

一番下に、klothoタンパクの血中濃度が通常の倍になったマウス×3匹の、三歳の誕生日の記念撮影(?)が載っていました。

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老化C 

老化Bは微妙な終わり方で、いまいち納得できなかったので、ちょっと本を読んで、またいくつか書こうと思います。

今回は復活の第一弾ということになります。(C〜は全く別の流れで書きますので、内容が@〜Bで書いたことと一部重なることがあるかもしれません。)



まず、発生の話をします。

19世紀後半、ヘッケルが『個体発生(発生)は系統発生(進化)を繰り返す』と著書で書いたことは有名ですが、このように考えられるくらいに、個体の発生は生物間で大変似た形をとっています

これは生物が最も重視すべき段階は「発生」にあり、発生段階は進化の過程においても厳しくプログラムされ、例外が殆ど認められなかった結果だと考えることも出来ます。

発生のシステムは、進化の過程で生物が手に入れた極めて優秀な機構なんだと思います。

ミミズもハエもヒトも似たような遺伝子の働きで発生しています。



詳しくは知りませんが、ヒトの出産に関しても、“予定日”とかありますよね。

凄い不思議ではないですか?

出産の予定日ですよ。

予定日があたる確率は10%程度といわれているそうですが、その前後2週間以内に90%以上の子供が生まれるとか。

280±14、つまり、±5%ということになります。

予定日の計算の誤差を考えれば、凄く正確な値だということが分かりますよね。

それくらい発生は正確なんだと思います。(別に何かに書いてあったわけではないので正しいかは分かりませんが・・・。)



まぁそのあと成熟していくわけですが、成熟は体外(卵外)で行われるため、その種が生きる環境においてかなり多様化しています。

子の育ち方もかかる時間も種によって全然違います。

ここからは環境への適応が見られる部分です。


そして、老化ですが、老化も種によって極めて多様なものです。

ただ、老化がない種もあります。
植物や一部の動物(鯉など)は死ぬまで成長し続けて目に見えた老化が見られなかったりしますし、老化現象が見える前にころっと死んでしまうものもいます。

そういった老化がないものも結構いるのですが、今回は老化するものを考えたいと思います。

老化@で書いた気がしますが、成熟は発生ほどではないにしても正確にプログラムされており、完成体には個体差(個性)があるのですが、その過程は同種では大変似ています

それに対して老化は、同種でも個体ごとに全然違います

ヒトの場合だと、白髪が増える時期、皮膚のしわの状態、衰えが顕著な臓器の種類、目の老化など、個体ごとにばらばらで家族でも全然違います。

同じ遺伝子を持つ双子でも、遺伝的背景によって似ている部分も多少あるとは思いますが、違う形で老化します。




これほど多様で様々な部分で起こるので調べるのが難しいのです。

それに、老化を観察しているうちに自分が老化してしまいます

そんな理由もあって、老化の研究は寿命が短く、老化も比較的シンプルな『単細胞生物』や『線虫』、『ショウジョウバエ』などで老化の研究は行われてきたのですが、先ほど話したとおり、種によって老化の仕方は全然違うんで、はっきり言って、ヒトの老化の本格的な研究は殆ど夢物語でした。

動物実験が出来ないんです。

昔から研究されている老化ですが、
@ゾウリムシ:一定回数細胞分裂で増殖すると、増殖能力がなくなってしまいます。(他の個体と接合することで再び増殖能力を回復します。)

A線虫・ショウジョウバエ:成熟後は体細胞が分裂しないため、細胞自身の機能の劣化が老化になります。


ただ、どう考えてもこれらはヒトの老化とはかけ離れていますよね。

マウスとヒトですら、老化の過程は全く違います。

類人猿などを使って老化の研究をしたらどうかと思われるかもしれませんが、類人猿はヒトに近いだけに寿命も近いんです・・・それに、同じ霊長類でも老化の過程は異なります。

同じ霊長類においてテロメアの問題が重視されるのはヒトだけだといわれています。他の霊長類は倍以上長いテロメアを持っています。



ただ、最近やっと分子生物学が発達して細胞の中身や遺伝子などの解析が容易に出来るようになってきたので、ヒトの老化の研究がなんとかまともにできるようになってきたようです。



老化は『恒常性を維持する機構の破綻』と言われています。

子孫を残した頃から恒常性を維持しようとする仕組みに積極性がなくなるんです

そうなると生体システムの損傷が蓄積されていき、それが老化として現れると考えられています。

でも、その詳しい仕組みはまだあまり分かっていません。





次回以降は老化の機構についていくつか分かっていることを書いていこうと思っています。

予定(あくまで予定です・・・)
・ヒトの老化と似た老化をするマウス(まだ良く分かってないみたいですが)
・テロメアの話
・ウェルナー症候群
・活性酸素の話(前も書きましたが・・・補足)
など。

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2005年12月07日

老化B 活性酸素とは?

昨日は寒くて手が動かなくて長い文章を打つ気がしなかったのでおやすみにしました。

エアコンやコタツはまだ起動していません。室温は普通に一桁です・・・

老化の話を書こうと思いますが、手が痛くて・・・。

でも、とりあえず、何か書きます。




活性酸素って一体何かご存知ですか?

テレビとかではよく『反応性の高い酸素』とかよく言われているのですが、何でそんなのが出来たのかはよく分かりませんよね。

まぁ“活性がある酸素”なんですが、私には“出来損ないの水”に見えます。

教科書とかにも活性のある酸素とか書いてあるんですが、“出来損ないの水”ともいえます。

酸素が水になる途中のもの・・・というか、やはり、水になりきれなかったものです

水は殆ど反応しないとても安定な物質ですが、ちょっと水素と酸素のバランスが変わるだけで反応能力を持つ分子になってしまいます。

一昨日書いた代謝の話において、クエン酸回路で取り出した電力源のNADHによって供給される電子を使って水素イオンと酸素分子を化合させ、水を作っていましたよね。

その際に、NADHの供給する電子が足りないと水H2Oが出来ずに、水素と酸素のバランスが崩れたH2O2やらOH-やらが出来てしまうんです。

これらは活性が高い、つまり、安定性に欠け反応能力が高いので、周辺にある正常な生体物質と反応して、それをダメにしてしまうんです。

その生体物質の機能不全が蓄積されると細胞が上手く機能しなくなって様々な弊害を生むんです。

たとえば、DNAに結合して損傷を与えたり、酵素などにくっついて機能を狂わせたりします。


それが細胞死を早めたり、ガン化の原因になり、細胞集合体としては老化していくことになります。


若いうちは抗酸化作用が強く働く為に活性酸素問題はそこまでないのですが、歳をとると抗酸化作用が衰えて活性酸素が問題となります。

老化@で話したとおり、若いうちは人間として完成させたり子孫を残す時期であるため、きちんと守られているのです。

しかし、一定期間経ち、種の個体数が維持できる程度に子供を作り、その子供が一人で生きていけるようになれば、あとは“必要ない”ので積極的に生かしておくようなことなしないようです。

細胞が想定している最高齢でも120〜130歳程度だといわれています。

様々な条件でそこまで生きるヒトはまずいません。

ヒトは生き続けることを想定していないので、活性酸素だけを考えれば、意図的人工的に“活性酸素を積極的に排除する”か、または“活性酸素を作らないように努力”しないと早々に死んでしまいます。

勿論、細胞へのストレスは活性酸素だけではありません。

所謂発がん物質や紫外線なども生体分子やDNAへ損傷を与えます。(DNAの損傷については最後に少しだけ書いています。)


活性酸素の話に戻りますが、実は、活性酸素はプラスの働きも持っています。

活性酸素は結合してその物質の機能を落としてしまいますが、これを逆に利用し、細菌やウイルスを攻撃させているのです。

どのような方法で活性酸素を操っているのかは知りません。

単にヒトに比べて弱い細菌やウイルスの方が致死的な被害を受けやすいというだけかもしれません。

ただ、増えすぎた活性酸素は私たちの細胞を過剰に攻撃して再起不能にまでしてしまいます。

どうすれば活性酸素が除去できるのかはよくテレビであっていますよね。

私よりも詳しい方が多いと思います。

ビタミンCとかポリフェノールとかいった抗酸化作用(たぶん、酸化されやすいんだと思います)のあるものを摂取すればより多くの活性酸素を除去できるといいます。

また、年をとると減ってしまう抗酸化酵素を摂取することで活性酸素を減らすことも出来ると考えられます。


一方、“活性酸素を作らない”ようにするにはどうすればいいのか。

これにはカロリー制限がいいといわれています。

その目的は、代謝を落とすことです。

代謝すればするほど活性酸素が生まれるわけですから、抗酸化物質を作る能力が落ちている大人は、代謝を落とすように心がければ、活性酸素が過剰に攻撃することが少なくなるのです。

ここで問題となるのは、なぜ、カロリー制限をすると代謝を落とすことが出来るのかということです。

勿論、代謝すべきものがなくなるので落とさざるを得ないというのもあるのですが、これは、生物の悪環境で生き残るための手段といえます。

老化の研究は線虫という細胞が1000個くらいしかない小さな生物において行われてきました。

この生物は卵から生まれた後、普通は4段階の幼虫を経て、成虫となります。

しかし、環境が悪化し、食料が減ってくると、幼虫のがそれとは違う段階へ進むんです。

耐性幼虫という、代謝機能が低く、外部からのストレスに強い幼虫になります。

ただ、その分、生殖能力や活動能力は落ち、冬眠したような状態で長期間生き延びます。

『増殖モード』と『生存・維持モード』があるんです。

通常状態ではがミトコンドリアを利用してエネルギーを大量に消費しながら子孫を増やそうとします。

しかし、食糧難の状態になると、『生存・維持モード』になって、代謝機能を落としながら細胞を傷つけないように保存して、種を絶やさない様に生きるのです。

この代謝制御を行っているのが増殖因子であるインシュリンです。

糖が摂取されるとインシュリンが出てきて、代謝機能を活性化します。

そのため、インシュリンが大量に出ると代謝が活性化されすぎて体に負担をかけてしまい、結果的に命を縮めることになります。

生物ではそのインシュリンなどの制御因子を落とすことで代謝を落とし、細胞へのダメージを極力減らして厳しい環境をじっと大人しく受け流そうとするのです。


最近はインシュリンを抑えることで長生きしようといっている人がいますよね。

このような機能は多くの生物が備えているんです。

哺乳類でも冬眠する動物がいますよね。

あれも同じ原理です。

そして、私たちにもそれと同じ機能が付いているのです。

冬眠のような急激な代謝変化はしませんが、食料が減ると代謝機能が落ちます。

そうすると、元気はなくなるのですが、細胞へのダメージも減り、細胞が長生きするんです。

これを意図的に行うのがカロリー制限なんです。

カロリー制限によって多くの生物の寿命は延びるので、ヒトにおいても同様のことが起きると考えられます。

ただ、カロリー制限をした個体は元気がなく生殖能力も低いです。





なんか、中途半端になってしまいました。全体的に雑です・・・ちょっと頭の整理をする気力がないんで。

手すら上手く動きませんでした・・・タイプミスしまくりでした。

・・・まぁ寒くて動きが鈍くなるのは、体温維持にエネルギーを使っているからかもしれませんね。

最後にDNA損傷の話を少し書きます。

らせん構造をとりながら向かい合って補い合っているDNAが二本が両方とも変わってしまえば、それを回復することは不可能です。

そして、そうやって汚れてしまった設計図では生きていくのは難しいのです。

また、DNAの片方(ラギング鎖)は岡崎フラグメント(参照記事)で複製しているので、最後の部分はプライマー部分が複製できません。(『末端複製問題』といいます。前書いた気もするんですが、岡崎フラグメントのところにはなかったですね・・・。)

そのため、細胞の分裂回数にも限界があり、ある程度分裂すれば、分裂すら不可能になります。

分裂できなければ、後は死ぬだけです。

タンパクを作る続けるうちに細胞は老朽化しますし、活性酸素などによる攻撃も受けます。

ウイルスに感染してしまえば、キラーT細胞から殺されます。


長く生きるためには、体内で生じる活性酸素などの有害物質を除去すると共に、外部からのストレスを出来るだけ減らし、病気などよる細胞の損傷を減らし・・・することは沢山あります。

ただ、ヒトは多分いつかは死ななくてはならないので、老化しないように努力するのも大切ですが、老化を受け入れることが必要だと思います。


老化についてはまだまだ分かっていないことだらけです。

活性酸素にしても『老化とは関係ない』という学者もいます。

今後の研究次第では、老化を効率的に防ぐ機構が発見されるかもしれません。


今回は中途半端になってしまったんで、もうちょい頭の整理をして、少しおいて『老化C○○××△□・・・』以降を書いていく予定です。(時期は未定。)


とりあえず、今日も寒いんで・・・写真をペタペタはってごまかします。


学校帰りに構内の道から撮った五山の送り火のある大文字山です。

大文字山@



















こんな感じです。

大文字山



















大文字の真ん中あたりになんか建物があるんですね。

大文字山×48

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2005年12月05日

老化A 代謝とは?

今回は老化の話ではなく代謝の話だけになると思います。代謝は長いんで・・・。

@代謝の概要:エネルギーの通貨“ATP
代謝って言う言葉は一般に広く使われていますが、代謝がどのような現象なのか知っている人は少ないと思います。

まず、代謝って何を作る為に行っていることだと思いますか?

私は、まず『エネルギーの供給』があると思います。

高校の家庭科の授業で、クエン酸回路(TCAサイクル)によってエネルギーを作っているとか習いませんでした?

TCAサイクルとはミトコンドリアの中で行われているアセチルCoAからNADHなどを取り出すサイクルです。

といっても、分かりませんよね。

アセチルCoAとかなら聞いたことくらいあるかもしれませんが、NADHなんてまず知らないと思います。


ということで、このミトコンドリアを利用したエネルギーの供給について説明したいと思います。

まず、体の中ではエネルギーの通貨があります。

私たち生物はある物質をエネルギー源として利用するように作られているんです。

それはATPと呼ばれ、アデニンにリン酸が3つ付いたやつです。

食べ物などから得た“エネルギー”をATPに転換して使っているんです。

ちょうど、アメリカに行ったら円をドルに換えるようなものです。



ATPこれです。(別に必要ないですが)

アデニンはDNAの“塩基”配列の塩基のひとつ(TAGCのA)です。

なんでアデニンがエネルギーの通貨に使われているのかは知りません。

理由は知りませんが、とりあえずアデニンにリン酸が3つ付いたものが生物の統一のエネルギー源です。


ATP⇒ADP+リン酸+エネルギーなんです。(ADPはAに2個リン酸が付いたもの:D=ジ≒ダブル、T=トリ≒トリプル)


この逆の反応(ADP+リン酸+エネルギー⇒ATP)でATPを作るのが代謝の一つの機能です。



Aミトコンドリアの機能
ミトコンドリアがエネルギーを作っている』ということは聞いたことがある方が多いと思いますが、ミトコンドリアはこのATPを凄い効率で作る器官なんです。

“凄い効率で作る器官”と書いたとおり、ミトコンドリアを用いずに“凄くない効率で作る”こともできます。(→C)

つまり、代謝には2種類の経路があるんです。

途中までは同じなんですが・・・というか、ミトコンドリアに持っていかれる前までで終わって、最後に“ちょっとした処理”を行う経路があるんです。


ミトコンドリアは生物内に取り込まれた生物だということは聞いたことがあると思います。

昔の映画に『パラサイト・イブ』とかありましたよね。

あれでミトコンドリアの知名度が上がったようです。

ミトコンドリアはもともとは別の単細胞生物で、それが他の単細胞生物に取り込まれたものだと考えられています。(⇒根拠を書いた昔の記事)

代謝の経路も、付け足しのようにミトコンドリアが介入しています。



Bミトコンドリアのエネルギー製造法とNADHという電力源
では、もうちょっと詳しく経路を説明したいと思います。

全体図を描きましたのでまずはこれを。(点線は細胞膜:脂質二重膜→参照記事)
※図中では思わずブドウ糖をグルコースと書いてしまいました。文中ではブドウ糖に統一したつもりです。

代謝略図
















(上の図の右下、実は、『3つのNADHなど』が正しいです。)

まず、食べ物を消化して“ブドウ糖(グルコース)”を得ます。(簡単の為に、脂質の経路は考えません。脂質からもアセチルCoAが出来ます)

ブドウ糖は体内を循環し細胞に取り込まれ、細胞内でブドウ糖(炭素×6)は分解されてピルビン酸(炭素×3)という酸になります。

ピルビン酸がミトコンドリアに運ばれて、CoAと反応し、アセチルCoAとなり、そのアセチル基が分離してTCAサイクル使われます。

CoAはピルビン酸のアセチル基を分離させるための物質です。

このアセチル基が重要です。

アセチル基は炭素を2つ持っていて、これがCが4つのオキザロ酢酸に結合してCが6つのクエン酸になります。

そして、クエン酸が多段階の反応を経て、2つの二酸化炭素を排出しつつNADからNADH生成などの反応を行いながら、またオキザロ酢酸に戻ります。(アセチル基で付加された2つの炭素は二酸化炭素になりました。)


で、このNADHですが、これがまた凄く重要な物質なんです。


NADHエネルギーを貯めるダムを作る為に使うんです。


NADHから直接ATPを作ることは出来ません

ミトコンドリアは、別の方法でエネルギーを蓄積し、それを利用してADPからATPを合成しています。


それが水素ポンプ


水素をポンプのような仕組みでくみ上げてミトコンドリアの膜の間に水素イオンをためていくんです。

ちょうどダムに水をためるようなものです。

そして、別の場所ではそれを放流してその水素イオン流れを利用してADPにリン酸を結合させてATPを作っているんです。(イオンの濃度差によって自然と水素イオンはミトコンドリア内に流れ込みます)

この水素イオンをくみ上げる原動力を生み出すのがNADHなのです。

原動力とは電子です。NADH電子(2e-)+NAD++H+によって、電子を供給するんです。

その電子によってO2+4H+→2H2Oという反応を起こしながら、水素イオンを膜の間に流し込み、その水素イオンが放流される時にATPが生成されます。(ここで酸素が使われています。この為に呼吸するんです。)

これが、凄く効率の良いATPの生成です。




Cミトコンドリア以外のATP獲得方法:“解糖”
ただ、上の図を見てもらったら分かるとおり、細胞はブドウ糖をピルビン酸に分解する際にもATPを作っています。この部分を“解糖”といいます。

これが細胞が本来持つATP供給機構だと考えられ、これによって生きている生物もいます。

ただ、ミトコンドリアはこの15倍もの効率でATPを生成します。しかも、使われないNADHやピルビン酸を用いてです。

それと、ミトコンドリアを用いない経路でもNADHが作られるのですが、先ほど話したとおり、NADHは電子を分離しやすい物質で、細胞にとっては有害です。

よって、このNADHはすぐに処分する必要があります。

NADHをそのまま排出するのではなく、代謝で一緒に生じたピルビン酸ととりあえず反応させて、乳酸やエタノールを作り、その後でそれを細胞外に排出するんです。

理由は聞きませんでしたが、たぶん、できるだけ早くNADHを処理する為だと思います。


こういうのを“発酵”といいます。


お酒を造るあれです。

お酒のエタノールは微生物がNADHを処理する為に変化させたものなのです。


お酒を造る酵母にはミトコンドリアもあるのですが、ブドウ糖が大量にある状態ではミトコンドリアを用いずにブドウ糖の“解糖”だけでエネルギーを作ります。

その際に排出されるエタノールがお酒の素です。


また、ミトコンドリアが水素イオンのダムを作る際に酸素を水にする反応を起こすので、酸素が足りない状態においても発酵が行われます

酸素が少ないとミトコンドリアの機能が低下するんです。




D体の中の発酵
酸素不足でミトコンドリアを使わない代表は、筋肉です。

筋肉に乳酸がたまって痛むって聞いたことがないですか?

筋肉では大量のエネルギーを使いますので、それだけ沢山の酸素も消費します。

そのため、筋肉では主に酸素の必要ないブドウ糖→ピルビン酸の経路によってエネルギーを得るんです。

筋肉ではブドウ糖(グルコース)をグリコーゲンとして貯蓄しています。

筋肉を動かしすぎて、乳酸の排出が間に合わなくなると乳酸がたまって痛みが生じるんです。



あと、もう一つ発酵をしている重要な細胞があります。

ガン細胞です。

ガン細胞は優れた増殖能力を備えているのですが、代謝経路はブドウ糖の解糖のみで発酵が行われます。

理由はよく分かっていません。筋肉と同じような理由かもしれませんが、ガン細胞はブドウ糖をグリコーゲンとして蓄積する能力はありません。

そのブドウ糖を大量に必要とする性質を利用して、最近流行のPETというガン診断に見られるような、ブドウ糖の分布を見ることによってガン細胞を見つけることが出来るのです。

ブドウ糖の分布は、少しだけ放射能のある物質を修飾したブドウ糖を体内に注入して、それを撮影することで見ることが出来ます。




E余談
今回は代謝の話ばかりで老化の話とかは全然なかったですが、代謝は代謝で面白いと思うんで、許してください・・・。

というか、私個人としては老化の話より代謝の話の方が面白かったんです・・・つまり、今回がメイン??

一番力が入っているような気がします・・・何回かに分けようかとも思いましたが、何となく全部書いてしまいました。時間は凄くかかりましたけど。



次回は代謝の悪影響と、長寿の個体の目的、インシュリンの話とかを書く予定です。



老化はまだまだ分かっていないことが多いので、すっきりした解説はできませんが、テレビとかでやってる健康法ではなく、理学的に、老化の基本を紹介できたらと思っています。


あ、書き忘れていましたが、代謝には他にも重要な機能があります。

生体高分子の合成などです。

代謝の過程で生じる分子を利用して、生体高分子やアミノ酸を作っています。

また、上の図でも出てきたアセチルCoAはアセチル基を供給しますので、有機物の炭素骨格を伸張することができます。(TCAサイクルでも炭素4つのオキザロ酢酸に炭素2つをくっつけて炭素6つのクエン酸にしています)

代謝にはエネルギーの供給という面と私たちの体の材料を供給するという働きがあるんです。

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2005年12月04日

老化@ 老化と成長

今回から何回かに分けて老化について書いてみたいと思います。

今回は老化と成長の違いについてです。





老化と成長には大きな違いがあります。

老化は遺伝しません。

人間は遺伝子に決められたとおりに十代のうちには必ず生物的に大人になりますが、老化のスピードは個人差が激しいです。

同じ60歳でも凄く若々しく健康な人もいれば、既にかなり老化して衰弱している人もいます。


体の状態で年齢を当てることは困難です。


しかし、10代前半くらいまでの子供だと、見た目で年齢を当てても、数年の誤差の間には入ります。

5歳の子供と10歳の子供は明らかに違いますし、小学校の1年生を見て小学校の高学年に見えることはまれですし、また、幼稚園に入る前の子供と間違えることもまれです。

成長は正確にプログラムされており、子供は綺麗に決められたとおりに成長するんです。



ただ、年齢が上になればなるほど区別が付きにくくなります。

生物的に完成する高校生〜大学生くらいになると、殆どの人間が完成して殆ど同じような状態で止まります

このあたりが生物的に見れば最も完成した時期です。


そして、20代に入ると老化が見えてきます。


しかし、老化は成長と異なりプログラムされていません

老化をプログラムする意味はないので。

プログラムされていない老化は、その個体の生きた環境による体の劣化の差によって老化のスピードに差ができるんです。



生物としては、子供が一人で生きていけるくらいまで親は生きていればいいのですが、やはり、孫の顔は見てみたいですし、できれば、孫の成長、願わくば、孫が結婚して子供を産むくらいまでは生きていたいと思いますよね。

しかし、老化を防ぐ仕組みはそこまで完璧ではなく、積極的に防ごうとしていないです。

ですから、長生きしたければ、体にいい物を適量だけ食べたり、規則正しい生活をしたり、適度な運動をしたり・・・と、体のシステム以外の努力が必要なんですよね。



その中で、代謝というものが注目されています。

最近よく聞く『活性酸素』というのは代謝の産物です。

あと、『カロリー制限による長生き』も代謝と関連したものです。


と、今回はここまでで、次回、この代謝について何か書きたいと思います。

posted by new_world at 00:43| Comment(11) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月24日

プリオン病(BSEなど)の発症を遅らせる

プリオン病の発症が正常プリオンタンパクを二種類持つ人だと遅いという話を以前書きましたが、このような効果を利用したワクチンのようなものの開発が進んでいるそうです。

なんと、違う種の動物の正常プリオンタンパクを摂取させるそうです。

マウスにおける実験での効果は上々で、安全面に依然問題はあるようですが、今後、ワクチンの開発に役立ちそうです。


プリオン病は体内に存在する正常なタンパク質の形が変化した異常なプリオンタンパクによる病気で、抗体は自己のタンパクと認識してしまい排除できません。

そのため、一般のワクチンのように抗体の形成は難しく、その他の方法によるワクチンの開発が研究されています。
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2005年11月13日

インフルエンザ

新型のインフルエンザによって、国内だけで最悪64万人の死亡者がでる可能性があるそうですね・・・4人に1人が感染するとか・・・。

インフルエンザウイルスにはA・B・C型があるのですが、今問題になっているのはA型のインフルエンザウイルスです。

インフルエンザウイルスはRNAウイルスで、遺伝子の修復機構がなく、突然変異を起こしやすくなっており、環境への適応力が高いです。

特にA型はB・C型に比べて変異が早く、免疫の抵抗力がつきにくい種類のウイルスです。だから毎年かかったりするのです。(A・B・C型の違いはよく知りません・・・)

A型は、ある2種類の抗原(HA、NA)により、H_N_型と分類されています。

ヒトの場合は3つ、H1N1型・H2N2型・H3N2型があり、香港型(H1N1)とかアジア型(H2N2)とかソ連型(H3N2)とか言われています。

A型は変異が早く、統計的には、10年〜40年くらいの周期でそれまでの抗体では殆ど対処できない新型のミュータントが生まれて大量の感染者を出します。

最近の大流行としては1918年のスペイン風邪(死者:世界2500万人、国内38万人)、1957年アジア風邪(死者:世界11万人、国内8千人)・1968年香港風邪(死者:世界40万人、国内2千人)などです。(他にも何度か大流行しています)

ここ最近は大流行が起きていないので、新型のインフルエンザの誕生が警戒されています。

その中で、トリのインフルエンザのヒトへの感染が問題となっていますが、本来はトリのインフルエンザはヒトへは感染しません。形が違ってうまく侵入できないそうです。

ただ、変異しやすいのでいつヒトへ適応するかは分かりません。


あと、トリのインフルエンザがヒトのものと大きく違うは、その種類の多さです。

ヒトには3種のA型インフルエンザと変異の比較的少ないB型・C型しかないのですが、鶏の場合、A型で20種ほどあり、毒性の強い種(H5・H7・H9型)もあります。

また、鳥の種類によっては更に多い種のA型インフルエンザを持っているものもいます。

その中で、H5型などの毒性の強い型が変異して人間に感染可能なウイルスになりはしないかと警戒されているのです。


そして、インフルエンザ関連で注目されている動物がもう一ついます。

ブタです。

ブタには元々インフルエンザはなかったのですが、ヒトとトリのインフルエンザウイルスがブタの体内に適応して、今ではA型のインフルエンザが確認されています。

ブタの体ではヒトのインフルエンザもトリのインフルエンザも増殖できます。まぁヒトとトリの中間的な環境といえます。そのため、その環境での淘汰にあうと、ヒトの環境にも合わせやすくなるのです。また、ブタの体内でヒトのインフルエンザを共存することにより、遺伝子の交換が行われ、より早く適応力を手に入れることも考えられます。

つまり、トリのインフルエンザのブタ経由の感染が懸念されていたのです。


ただ、今はトリの中での大流行が問題になっていますが、ブタの話は出てきませんよね。

本来はトリからヒトへの感染はありえないのですが、大量にウイルスが存在すると何故か感染することがあるそうです。

そして、その一部が、そのままヒトの体に適応してくるのではないかということが懸念されているのです。

ブタを経由したヒトへの適応に比べて確率は低いのでしょうけど、大量に発生した場合には全くないとも言えません。

しかも、ガン細胞と同じで、一つが適応すれば、それがどんどん増殖していき、完璧に排除することは困難となります。そして、大流行になるのです。

ガン細胞は血管を通じて体内の他の組織へ転移していきますが、インフルエンザウイルスの場合は、空気や唾液の飛沫などで、他の個体へ移動します。

突然変異ですのでいつ生まれるかは分からないのですが、生まれる可能性があり、生まれたら大変なことになるので、問題視されているのです。








と、インフルエンザの話を流れで書いてみました。

あまりよく知らないことなので、ぎこちない内容ですみません・・・。
posted by new_world at 22:19| Comment(10) | TrackBack(2) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月05日

ヤコブ病・・・

プリオン病については以前書きましたが、このプリオン病、大変怖い病気の一つです。

発症したら(今のところ)助かりません。

今のところ治療法はなく、体の防御システムも対応できておらず、致死率は100%といわれています。

発症から数年で死に至るそうです。

私たちの免疫は異状プリオンには機能していないようですので、“体の強さ”は関係ありません。

本来は遺伝子の異状によって100万人に1人程度が年をとって発症する珍しい病気だったのですが、狂牛病由来の新型のヤコブ病は、十代の子供でもかかる可能性がある病気です。

プリオンは異種間においてはアミノ酸配列が微妙に異なるので、プリオンを摂取した場合でも種が遠ければ感染力は殆どありません。

たとえば、羊と人ではアミノ酸配列が違いすぎて殆ど感染する可能性はないといわれています。

しかし、羊と牛、牛と人はそれに比べるとやや似ていて、感染力が少し生まれるようです。


一方で、同種においてはプリオンの構造は同じなので、異種間に比べると感染力は格段に上がるといわれています。

たとえば、牛から牛への感染力は高く、少量のプリオンを経口摂取して感染することが確認されているそうです。

人から人に関しては、移植の際の感染についてしか私は知りませんが、クールー族と言う東南アジアの民族が以前食人の習慣があり、同様の症状を持つ患者がいたことが確認されています(現在ではその習慣はなくなり、その症状も出ていないということです)。

感染力についてはよく知りませんが、私たちには人を食べる習慣はないので、気をつけるのは移植などの医療行為でしょう。

ただ、遺伝子型による感染力の違いは指摘されています。

食人や医療によって体内への異状プリオンタンパク質が侵入し、それによって正常なプリオンタンパクが変性させられることでプリオン病は発症します。

しかし、ヒトによって二種類の正常プリオンをもつひとがいて、二種類持っているとプリオン病に対する抵抗力が上がるそうです。

ヘテロ接合体というのですが、ヒトは両親由来の二つの相同染色体(まぁ同じ機能の染色体です)を持っていて、そのそれぞれがコードするプリオンが異なる場合、ヘテロといいます。(同じものはホモ接合体といいます。)

ヘテロ接合体だとプリオンが二種類あるので変性の伝播のスピードが遅れるようです。

ただ、変性の詳しいメカニズムは今のところ分かっていません。



話が少しそれましたが、とりあえず、牛のプリオンを万が一食べた場合でも、感染力は極めて低く、滅多にかかる病気ではありませんので、そこまで騒ぐ必要はないと思います。

イギリスではパニックになって大変だったそうですが、パニックになっても状況は決してよくはなりません。

まぁイギリスの場合、20万頭近い牛が狂牛病に感染したと言われ(数えずに大量に処分したので正確な数は不明)、ヒトも150名ほど亡くなっていますので、混乱するのも無理はないと思いますが・・・しかも、牛の脳も食用に回されていたそうですし。牛の脳を入れると味がよくなるそうです・・・よく知りませんけど。


潜伏期間は数年〜十数年と長く、発症したら数年の命、これは、かなりの恐怖でしょう。私も、すでに異状プリオンが増えているかもしれません・・・。

しかも、脳がやられやすい病気ですので、家族への負担も大きくなります。ごく短期間ですが・・・。


感染する可能性はほぼ0だとは分かっていても、気味が悪くて私はあまり食べる気はしませんね・・・とりあえず、今のところは豚や鶏からはプリオン病が見つかっていないので、動物タンパクは豚肉や鶏肉から・・・。

まぁいつ豚とかにもプリオン病が出てくるかは分かりませんけど。

因みに、このようなプリオン病は、猫や鹿、動物園のライオンやトラ、チーターなど、様々な動物で見つかっています。
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2005年10月26日

ガンと遺伝子

ガン細胞は遺伝子の突然変異で進化します

その遺伝子の突然変異の中で、もっとも基本的な3つの遺伝子の突然変異を紹介したいと思います。

ガン化の中で最も基本的な異常は細胞周期(細胞分裂の流れ)の異常です。

細胞分裂が持続』したり、『頻繁に突然変異』を起こしたりするんです。


これに関わる3つの重要な遺伝子があります。Ras、Rb、p53と呼ばれる遺伝子です。

一つずつ説明します。

@Ras遺伝子
:増殖シグナルを伝えるタンパク(Rasタンパク)を作る遺伝子
Rasタンパクはシグナルを受けて構造が変化し、それによって次のシグナル分子にシグナルを伝えます。そして、細胞が分裂します。まぁ細胞分裂のスイッチの役割です。

Ras遺伝子に異常が生じ、常に活性化状態のRasタンパクが出来てしまうと、細胞が分裂し続けてしまうのです。

ARb遺伝子
:細胞周期の進行を抑えるタンパクを作る遺伝子
この遺伝子が抑制されることで細胞周期が進むのですが、突然変異によってこのタンパク質が作れないと、抑制がかからなくなり、不十分な状態でも細胞周期は進んでしまいます。そうすることで不完全な細胞分裂が起こりがん化しやすくなるのです。

Bp53遺伝子
:チェックポイント機構の要のタンパクを作る遺伝子

これもAのRbに似ているのですが、これは細胞周期の複数の段階でチェックポイント機構を働かせているタンパク質を作る遺伝子です。チェックポイント機構とは、たとえば、46本の染色体が倍になる際に、全てがきちんと倍になっているか、などを確認する機構です。p53タンパクはこれに深く関わっているタンパク質で、これが欠損するとチェックポイント機構が機能せず、一部の染色体が複製し終わっていない状態で細胞が分裂しはじめ、染色体の一部が破損してしまうのです。


ガン関連の遺伝子は二種類に分かれます。

ガン遺伝子
ガン抑制遺伝子です。

@のRasがガン遺伝子、AのRbとBのp53はガン抑制遺伝子にあたります。

この大きな違いは、それが優性か劣性かです。

ガン抑制遺伝子は劣性ガン遺伝子とも呼ばれます。


@のRas遺伝子の場合、少しでも異常Rasタンパクが作られてしまうと細胞周期は進んでしまいます

つまり、ちょっとでも異常が起きたらガン化するんです。

しかし、A、Bの場合、少しでもABが正常に働いていると正常な細胞分裂が行われます

@は正常状態に抑制作用がなく、異常のものは細胞を増殖させる方向へ促進する働きがあります。

ABは正常状態が細胞周期を抑制する作用=ガンを抑制する作用のあるもので、異常のものはガンを促進するわけではなく、単にその機能を失うだけです

この二つの差が大きくなるのは、ヒトの染色体が二組あるからです

父由来、母由来の二つです。

そのため、ABの遺伝子は父由来・母由来の両方の遺伝子で機能を失わないとガン化しないのです。

@の変異の確率をXとすると、ABの変異の確率は“Xの2乗”になるのです。

単純計算だと100人に1人だったのが1万人に1人になります。起こる確率が格段に下がりますよね。

まぁしかし、実際は、ABの父由来・母由来両方への変異もXの2乗ほど低い確率ではないことが分かっています。

その仕組みはよく分かっていないそうです。



因みに、“発ガン物質”というのはDNAに損傷を与える物質のことです。

ただ、今の科学技術では化学式などからだけでは全ての発がん物質を見抜くことは不可能です。

そのため、まずは菌を使ってDNAへの影響を実験して調べます。


最後に、その実験方法を簡単に紹介したいと思います。

いわゆる“発ガン作用”とかいうものを調べるのですが、実際にガンができるまで待っていては時間がかかりすぎます

そのため、まずは突然変異の起こりやすさ計るのです。

サルモネラ菌などの菌を使うのですが、実験に使う菌はある種のアミノ酸を体内で作れない菌を用います

そして、それを育てるシャーレ内にはそのアミノ酸を含まない培地を使うのです。

つまり、そのままなら死んでしまうんです。

その中では突然変異によってそのアミノ酸を作れるようになったものしか生き残れません

ただ、そのアミノ酸生成能の獲得は突然変異は比較的高頻度でおきやすいもので、自然な状態でもぽつぽつと生き残る菌が生まれます。

まぁ起こりやすくないと実験にならないんです。起こりやすいからこそ発がん性が低いものも調べることが出来るんです。

その菌をぬったシャーレの中央に発ガン作用が疑われている物質を起きます。

もし、その物質が発ガン作用、つまり、DNAへ損傷を与えるものであれば、その周辺で菌が増殖します

つまり、菌のDNAが攻撃され突然変異が起こったのです。

これによってその物質の発ガン作用の大まかな判断が出来ます。

もしこれでDNAへの損傷があると判断された場合はマウスなどに高濃度のものを服用させて実際にガンが生じるかを確かめるのです。


ただ、このときに注意すべきことが一つあります。

それは、人間の体の中には肝臓があるのです。

つまり、肝臓で物質は化学変化を起こしてしまいます。その変化によって発ガン作用を手に入れる物質も少なくないのです。

そのため、菌のシャーレにおく場合には、マウスの肝臓からの抽出液を加えます

そうすることで、そこでもその化学変化が生じて適切な結果を得ることが出来るのです。

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2005年10月24日

タバコを吸うと肺に傷が・・・

一週間くらい前にガン細胞を簡単に説明しました。

おさらいしますと、ガン細胞は増殖し続ける細胞で、他の細胞から自立して生きることができ、突然変異を繰り返し進化するんです。

今回は、増殖し続ける原因となる要素についてです。

これは二つあるのですが、まず一つ目は前回はなした遺伝子の異常です。

突然変異によって増殖シグナルがなくても増殖するようになるのです。

ヒトの細胞は増殖シグナルなしでは普通は増殖しないのですが、遺伝子の異常などによって、増殖シグナルが常に出されている状態や、増殖シグナルなしでも増殖シグナルが伝わっているような状態になるのです。

これにはガン遺伝子やガン抑制遺伝子が関わっています。(これについてはまた次の機会に。)

そして、もう一つは慢性的な炎症です。

炎症部位では細胞が多く死ぬので、増殖シグナルが出され続けています。そのシグナルを受け取って細胞が急いで増殖しているうちにがん化してしまうのです。

増殖シグナル自体は正常な反応なのですが、それが出過ぎると細胞に不調が出てくるのです。

タバコによる肺がん発生がこれにあたります。

タバコを吸うと肺の内部で炎症が起きているのです

タバコを吸い続けていると常に炎症状態が続くことになり、それによって幹細胞は長期間分裂し続けることになります。

そうすると、分裂に不具合が生じ、ガン化しやすくなるのです。

まぁこれは他の部位にも言えることです。



ガンはたった一つの異常細胞から広がります

本来は修復機構が働くのですが、増殖を急ぎすぎるとそこにミスが生じてしまうようです。

それはガン抑制遺伝子が深く関わっているのですが、この話はまた次回に。


でも、ちょっと短いので、細胞を培養する時の話をします。

先ほど話したとおり、ヒトの細胞は『増殖シグナル』がないと増殖しません

そのため、普通に栄養だけあげていてもヒトの細胞は培養できないのです。


それを増殖させる為に使うのが『牛の血清』です。


なぜ血清なのかというと、血液には血小板が入っているからです。

血小板は内部に増殖シグナルが入っていて、怪我をした際には傷口に血小板が集まり増殖シグナルを出して傷口付近の細胞を分裂させ、傷口をふさぐのです。

牛も人もだいたい同じように出来ているので、牛のシグナルで人間の細胞も増えるみたいです。


う〜ん・・・なんかまとまりのない話でした。すみません。

明日は午後から京都市動物園で授業(実習)があるみたいです。初めて京都の動物園に行きます。

posted by new_world at 21:39| Comment(9) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月20日

キメラ

昨日の全能性幹細胞の話の続きです。

昨日書いたとおり、ES細胞は受精卵のようには発生してくれません。しかし、ES細胞を発生初期の胚に入れると、なんと、その胚は普通に発生するのです。奇形種などは出来ません。

つまり、ES細胞も正常な発生に参加したのです。

これは、受精卵の持つ“何か”がES細胞にも指示を出したのだと考えられます。(その“何か”が分かっていないのでES細胞を受精卵に託すのです)


たとえば、ニワトリの初期の胚に、ウズラのES細胞を入れると、ウズラの細胞もニワトリの細胞と一緒に発生に参加して、一部がウズラになったニワトリが生まれます。

ウズラとニワトリのキメラです。

まぁウズラとニワトリは近い種なのであまり問題になっていませんが、この理論から行くと、人間と他の動物のキメラも作ることが可能です。

つまり、人間のES細胞をマウスの胚に入れれば、一部が人間のマウスが出来ます。

実際に、人間の白血球を作るマウスなど、数例が作られています。

このような人間を使ったキメラなどは倫理的な問題から殆ど行われていません。というより、行うことが出来ません。利用価値の高い技術ではあるのですが、どうしても、倫理的な問題が生じてしまうので、なかなか進まないみたいです。

ヒトのキメラ作りは行われていませんが、実験動物におけるキメラは結構作られています。一番有名なのはキメラのマウスです。これはマウス同士のキメラで、まぁ、出来上がるのはマウスなんですが、ちょっと変わったマウスが出来ます。

たとえば、黒い毛のマウスのES細胞を白い毛のマウスの胚に入れるとします。すると、白黒の混ざったマウスが生まれるのです。そして、そのマウスは、臓器までまだらになっています。つまり、それぞれの細胞由来の細胞が個体を形成しているのです。二種類の遺伝子を持つマウスです。

そして、最も重要なことは、このまだら、卵巣や精巣にまで至っているのです。つまり、生殖細胞にも白マウスの受精卵由来のものと黒マウスのES細胞由来のものがあるということです。

ということは、ES細胞が子孫を残すことができるのです。


理論上は、ヒトの精子を作るマウスとヒトの卵子を作るマウスからとった精子と卵子からヒトを作ることも出来ます。マウスから生まれたヒトです。

昨日は、『ES細胞ではヒトは作れない』と言いましたが、実を言うと、作れなくもないのです。

ただ、そのためには、キメラを作って、しかも、上手い具合に生殖細胞をES細胞由来のものにしなければなりません。

色々と技術的な問題もあるようですが、不可能ではないみたいです。

そのあたりが、ES細胞に関して『倫理的な問題』として、あちこちで議論されているんです。



キメラマウスの応用例としてノックアウトマウスがあります。

ノックアウトマウスとは一部の遺伝子の機能を停止させたマウスで、このマウスによって遺伝子の機能を特定することができます。

作り方は単純です。ES細胞の目的の遺伝子を働かなくして、そのES細胞でキメラマウスを作り、そのキメラを交配させて、目的の遺伝子が働かないマウスを作るのです。

マウスの場合、染色体は二組あるので、後輩の繰り返しによって、二組ともその遺伝子のある染色体はES細胞由来のものにしなくてはいけません。

まぁ仕組み自体は簡単なんですが、結構操作も沢山あり、作るには2〜3年はかかるそうです。

でも、最近は、特定の遺伝子のノックアウトマウスを作ってくれる企業もあるみたいです。


ただ、キメラにもいろいろ問題があるようで、何度も繰り返しているとES細胞由来の生殖細胞が作られなくなったりするそうです。たぶん、原因は未だ分かっていないと思います。

まだまだ人間の能力は生命に追いついていないんです。


キメラがどのくらい違う種同士まで出来るかは知りませんが、結構離れた種同士てでも出来るみたいです。

つまり、受精卵の持つ発生コントロールのシステムはある程度保存されているということですね。

その発生コントロールの解明がされていけば、ES細胞は再びtotipotentに格上げされることになるかもしれません。(まぁ『自律的』ではなく『人為的』ですけど)
それによって再生医療は格段に進歩することになるでしょうね。
posted by new_world at 18:51| Comment(11) | TrackBack(1) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月19日

万能細胞は万能ですが・・・

韓国ではヒトのES細胞を使った研究が広く進められています。

ES細胞は万能細胞とも全能性幹細胞とも呼ばれ、何となく何でも出来そうな感じの名前が付けられています。実際、何にでもなることが出来ます。

でも、ES細胞は英語ではpluripotentと分類され、万能である受精卵の分類totipotentとは区別されます。万能細胞とはtotipotentの方が意味的に近いです。

以前は『生殖細胞になることが出来る幹細胞=totipotent』だったのですが、最近では『自律的に個体を作ることが出来る細胞=totipotent』となりました。

これは政治的な理由です。

totipotentはあまりにも間違ったイメージがつきすぎたのです。

日本語では今でも万能細胞ですが、英語では概念的に万能細胞にあたるのはtotipotentの方で、ES細胞は含まれません。

何故そうなったかというと、totipotentと聞くと、そのままで『人間が出来てしまう』ようなイメージがアメリカ人の中に浸透してしまったんです。

そうなると、自己主張が強い民族ですので、『そんなことは許されない!!』と出来もしない人間創造を危険視して反対運動が起こってしまうのです。

そこで、単語の定義を変えたのです。

本来は『生殖細胞を作ることは出来ない幹細胞』という意味で使われていたplutipotentを『自律的に個体を作ることが出来ない幹細胞』という意味にしたのです。つまり、ES細胞を万能細胞から格下げしたのです。今は万能であるtotipotentは受精卵だけです。

これでアメリカ人の批判を和らげた(そらした?)のです。

自律的に個体を作ることが出来ない、というのは、今の技術では個体を作ることは出来ない、という意味です。

今の科学では幹細胞から受精卵を作ることが出来ないのです。

勿論、全能性幹細胞は万能ですので全ての細胞になることが出来ます。普通に増殖させていくと、神経細胞や皮膚の細胞などが出来てきます。しかし、それは決められた形になることはなく、細胞がばらばらに存在する状態にしかなりません。つまり、『発生』とはいえないのです。

また、ES細胞を既に生まれた個体に入れても、奇形脳腫(※)のような腫瘍・ガンができるだけです。


『全能性幹細胞も受精卵も全ての細胞に分化し得るのに、何故、全能性幹細胞は個体を作ることが出来ないのか?』というのは科学が抱える大きな問題です。

今の科学では『発生』をコントロールすることが出来ないのです。




※奇形脳腫
ブラックジャックのピノコです。奇形脳腫とは、本来の発生のコントロール下から抜け出して自分勝手にばらばらに分裂していったものです。体内の精巣や卵巣などの生殖細胞が暴走して出来ることが多いそうです(ピノコは双子のようですけど)。
ES細胞を個体内に入れた場合も、奇形脳腫のようにばらばらに成長して腫瘍を形成したり、暴走してガン化したりします。既に出来上がった個体には発生のシグナルとなるものがないのが原因だと考えられています。

プラナリアでは、ES細胞と同じような全能性の幹細胞が体中に存在していて(全体の約6%)、それがプラナリアのコントロール下にあり、正常発生同様の再生を行います。がん化することはまずないです。プラナリアからガンが見つかることは稀だそうです。

プラナリアの幹細胞のコントロールの方法もまだ分かっていません。

posted by new_world at 21:17| Comment(8) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

鳥の内臓

鳥の内臓は哺乳類に比べると少ないです。たとえば、肺や卵巣は一つしかないです。まぁ肺は結構大きいですね。前にも話したとおり、呼吸能力を強化する気嚢と言う特殊な臓器もあります。気嚢は透き通った膜で最初は何の為にあるのかは分かっていませんでした。(気嚢システムについてはここに。)


一部、大きな部分もありますが、全体としては軽量化してあります。骨だって穴だらけですし(でも、強度は落とさないようなっています)、臓器もコンパクトにおさまっています。卵を少しずつ産んだり、排せつをこまめにするのも軽量化のためだといわれています。

でも、大きなものもあります。たとえば、脳です。

鳥の脳は体のサイズに対してとても大きいです。その理由は目にあります。超高性能の目を持っているため、その映像を処理する脳も大きくなっているんです。(目もかなり大きいです。)





・・・なんか、いまいち盛り上がりませんでした。すいません。今日は、ニワトリを一匹さばいて疲れちゃったんで・・・。教官が注文する数を間違えて、本来は2人で1羽を解剖するのを1人1羽になってしまいました。自分でさばいたのは持って帰ってよかったんですが、なんか食べる気がしなかったので私は友達にあげちゃいました。

あと、実習のあとに何人かがサークルや寮で鍋をするということで他の人が解剖した残りから肝臓やら心臓やら砂嚢(砂ずり:胃)、卵(になる前のもの)、残った肉などを回収していたのですが、楽しそうだったので手伝ってきました。それで、トータル5時間くらいニワトリのおなかに左手を突っ込んでいました(右手はメスやハサミなど)・・・そのせいで左手だけ異様に臭いんです。これ、きっとなかなか取れませんよね・・・。


ああ、あと、ヘビも肺が一つしかないです。それは細い体を手に入れるために左側の肺を退化させたからです。

動物の体の構造は臓器までもが進化に合わせて変化していってるんですね。(無理やり話を戻してみました)
posted by new_world at 20:03| Comment(7) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月17日

ガン細胞とは

ガン細胞の話です。

『ガン検診(PETなど)』『抗がん剤(イレッサなど)』『ガン保険』・・・色々と世間を騒がせているガンですが、実際にガン細胞がどのような細胞か知っている人って少ないですよね。

今日は、簡単にガン細胞を紹介したいと思います。

ガン細胞の基本的な定義は『命令なしに増殖する細胞です。

普通の細胞は“増殖シグナル”を受けて初めて細胞分裂するのですが、ガン細胞は、突然変異によってその命令を受けなくても増殖できるようになった細胞です。



しかし、ただの“無限に増殖する”だけの細胞であれば取り除けば終わりです。

科学的には“増殖する”というのが最も重要な要素ではあるのですが、病気としてのガンは、ガン細胞の“進化”が重要です。


ガンには複数の段階があるのです。


具体的に説明しますと、大腸がんの場合、大腸表面(物が通る部分)の柔毛の上皮細胞(まぁ皮の細胞です)が刺激を受けやすくガン化しやすいのですが、上皮細胞は基底膜というゴムのような少し固い膜の上に乗っています。

そして、次のような段階で進化していきます。

@自律的増殖能の獲得
上皮細胞が突然変異により増殖指令なしに増殖できる(自律的増殖)ようになります。それによって柔毛表面が出っ張ってくるのですが、外側の方は栄養が足りず生きられません
内側に行きたくても、基底膜が邪魔して進めない・・・

A基底膜を破る能力を獲得
基底膜が邪魔だったのですが、上皮細胞だった細胞のうちの一つが基底膜を破る能力を獲得します。そうして基底膜内に侵入し、基底膜内で増殖します。しかし、獲得できる栄養は血管の量に比例する為、そのままではあまり増えることは出来ません。
⇒血管を新しく呼び込みたい・・・

B血管を呼び込む能力を獲得
新しい血管を呼び込むように進化し、血管をどんどん呼び込み更に増殖していきます。しかし、物理的な空間に限界があり、ある程度までしか増えることが出来ません。
⇒場所が足りない・・・

C転移能力の獲得
丈夫な血管壁を通過する能力を獲得することで、体の様々な部位に進出していきます。移動した各器官で適切な形に進化し、その中でどんどん増えていきます。


これは全て突然変異により獲得される機能です。

様々な機能をスムーズに獲得しているように見えますが、実際は違います。

進化、と表現したとおり、そのなかで淘汰が起きているのです。


ガン細胞は他の細胞と違って『幾らでも増殖できる』能力を持っているため、細胞が多く生まれ、比較的短時間に多くの突然変異が起こるのです。また、遺伝子異常によって突然変異の頻度が上がることも多いです。

その中で、たとえば@の状態のときに“基底膜を破ることが出来る細胞”一つ生まれたとすれば、それは基底膜を破り内側に侵入できるのでより多くの栄養を獲得でき、より多くの細胞分裂を行うことが出来るのです。

そして、そのたった一つの細胞由来のガン細胞で埋め尽くされるのです。

それの繰り返しの中、次第に環境に適した能力を獲得していきます。


典型的なダーウィン進化といえます。


機能を獲得し、その細胞が増殖するためには時間がかかりますので、ガンの進行はゆっくり階段のように進みます。

ウイルス感染などのときとは違います。

また、獲得した能力は基本的に遺伝しますので、次の世代にも引き継がれます。

一度効かなくなった抗がん剤は時間をあけてもまず効くようにはなりません。


ただ、そのとき、上皮細胞としての機能は失われています

イモリが再生の時にやっている“脱分化”が起きているのです。この場合の脱分化は、イモリの場合と違い、完全な脱分化ではありません。

この脱分化は「機能を失った」というよりもある意味、機能を獲得しているんです。


その機能は『自立して生きる』機能です。


つまり、上皮細胞のままであれば、基底膜やそのそばの細胞と協力してしか生きていけないのです。

そのため、上皮細胞としての機能を失うことで、より自立した段階へ進むのです。

独立
です。

まぁ独立といっても栄養は人間からもらうのですけど。


細胞の社会の中で、上皮細胞という役割を担っていた細胞が、その役割を捨て、その社会において特別な役割を持たないままその社会の栄養を受けて増える能力を持ったのです。

何もしなくてもお金が入ってくるシステムを考え付いたようなものです。

それがないと、ガン細胞はガン細胞たり得ないのです。

これは比較的初期の段階で獲得する機能で、『無限に増殖可能』という機能に並ぶ重要な機能といえます。

ただ、これは、基底膜内に進出した後には必要ですが、基底膜外で増殖している間はあってもなくてもいい機能です。どこに入れたらいいのか分からなかったので、最後に入れておきました。


まぁ厳密さにはかけますが、ガン細胞はこんな感じです。ガン細胞がどんな細胞なのか、少しは分かってもらえたんじゃないかと思います。

 

今日はパリーグの優勝決定戦らしいですね。そういえば、セリーグの阪神優勝は聞いていましたが、パリーグはまだ決まってなかったですね。でも、うちは田舎なのでテレビ東京系(テレビ大阪)が映らないんですよね(500mくらいいけば映るらしいです・・・ちょうど狭間)。まぁそこまでしてみるものでもないですけど。元ダイエーホークスファンとしては、ソフトバンクに有終の美を飾れなかった去年(リーグ一位⇒プレーオフ敗退)の雪辱を果たしてもらいたいです。

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2005年10月15日

食べ物と同位体

同位体ってちょっと難しげな単語ですが、ちょっと面白い性質があります。

今回は、食べ物と同位体の関係についてです。

人間の体も原子でできています。殆どの原子には同位体があり、私たちの体もそれぞれの同位体を含んでいます。

勿論、放射性のある同位体も含んでいます。


そうそう、あれです。

木製のものの年齢を計る放射性炭素年代測定法、あれは、木の中の放射性元素の減少から年代を測定します。

つまり、木の中には放射性元素があるんです。

そして、木の中にあるということは木が死んでしまうと外部との物質の出入りがなくなります

マグマと岩石の関係と同じなんです。放射性炭素年代測定と岩石における放射年代測定は同じなんです。

生きている木は物質の循環のあるマグマと、死んでしまった木は物質の循環のない岩石と同じ状況です。


まぁ放射性同位体があるかどうかは今回のテーマではありません。

今回は、同位体の比がテーマです。

『地球の年齢』の時に書きましたが、地球上どの場所に行っても同位体の比は一定です。


ただ、生物とその残り(死骸など)は例外です。


生物は地球の中でも奇妙な物質系で、生物は生きることで複雑な化学反応を使い同位体の比を狂わせてしまいます

たとえば、植物によって取り込みやすい炭素(二酸化炭素)があったり、動物では取り出しやすい窒素(アンモニア・尿素など)があったりします。

勿論、同位体は中性子一個分くらいしか違わないので、どんなに生物システムが敏感でもそれを完璧に区分けすることは不可能ですし、無意味です。

ただ、中性子一個分でも微妙な差をもっていますので、その差に影響されて、微妙に同位体の比率が変わってしまいます。

しかも、動物や植物は様々な種類がおり、その生体システムも微妙に違います。

そのため、その同位体の影響も様々なのです。

炭素は「陽子+中性子の数」が12個(98.9%)、13個(1.1%)のものがあり、その殆どは12個です。そして、ほんの微量ですが、14個の同位体も含まれています。



植物のは大きく分けて二つの種類があります。

大きく分けるというか、“一部が違う”という方が適切です。

光合成のシステムが一部の種で違い、炭素13を多く取り込むようになりました。

その植物の代表はトウモロコシサトウキビです。

つまり、トウモロコシをよく食べる動物(ヒト)は炭素13が多いんです。

あと、種類や個体(環境・遺伝)によっても微妙に炭素同位体の取り込みやすさが違います。

そのため、それを食べる動物は各々炭素13の割合が違うのです。

勿論、ほんの微量ですので、調べるのは大変です。同じ植物を食べているものなどでは殆ど変わらないかもしれません。

ただ、私たちの場合、少し違います。

ヒトの場合、雑食性というよりも、食べる種類が尋常じゃありません

つまり、食べる植物種の割合によって、炭素の同位体比が変わるのです


穀物にしてもトウモロコシや小麦、米、他にも雑穀と呼ばれる穀物も食べています。

その中で、トウモロコシ、アワ、ヒエなどは炭素13を取り込みやすい種類の植物です。

そのバランスによって炭素13の割合が人それぞれ違うのです。



次に、窒素の話です。

窒素は「陽子+中性子の数」が14個(約99.6%)、15個(約0.4%)のもので構成されています。

そして、動物は窒素をアンモニア・尿素などで排出するのですが、そのシステムが、窒素14の方を多めに排出してしまうのです

そのため、食物連鎖が上の方の動物になるにしたがって窒素15の割合が増えます

これによって、どのような動物を食べてきたか、が分かります。

日本人では、現代よりも江戸時代の人の方が窒素15の割合が高いです。(江戸時代の人は結構身分に寄りますけど・・・)

なぜなら、江戸時代の人は“草食動物”を殆ど食べず、“魚”を中心に食べていたからです。

牛よりも、多くの魚の方が食物連鎖は上です。

魚には肉食種が多いからです。それに、肉食種を食べる肉食種も沢山います。

大型の魚になればなるほどその傾向が強いです。

つまり、マグロなどの大型の魚を多く食べる人は窒素15が多いのです。



今の日本人の窒素同位体比の分布は『江戸日本人』と『アメリカ人』の中間あたりです。勿論、食生活によって個体差はかなりあります。


あと、これは食生活に依存するので、海外へ移動すればその比も変わります

日本に長年いる日本人と、アメリカに長年いる日本人では、その比が大きく異なることになります。

また、日本にいてもアメリカ人のような食生活をすると同位体比はアメリカ人のようになります。


つまり、あなたの食生活によって同位体比は“あなたの色”をしているのです。

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2005年10月07日

ゴキブリの足の再生

以前、プラナリアの再生の記事で説明しましたが、プラナリアは『ギャップを埋める』という基本方針により再生しています。この単純なシステムを用いることで、効率的な再生を行っているのです。

つまり、

胴体)ABCDE(先端

として、CDEが切断され、ABだけになったとします。

すると、まずEが出来るのです。つまり、ABEとなるんです。
となると、BとEの間にギャップが生じますよね。それを埋めるようにCDが出来るんです。

これを確かめたのがゴキブリの足の再生実験です。

二つの図を出します。

ゴキブリの足の再生(通常)
まず一枚目は通常の再生で、さきほど書いたとおり、ABCDEのCDEが切断された場合です。
普通にEが再生され、その間を生めるようにCDが再生されます。


ゴキブリの足の再生(実験)今度は実験の方です。ABCの次にABCDEをつないでみたのです。足が長くて歩きにくいはずで、元に戻るためには一部を消去しなければなりません。
しかし、自然界においてこのような状況は想定外で、まず起きることはありません。
そのため、この場合も、基本方針通りに、『ギャップを埋める』のです。

そして、“逆向き”のBが再生します。

ゴキブリの場合、節に特徴があり、方向が分かります。
この実験を行った際、新しく再生されたゴキブリの足の一部は、逆向きに生えたのです。

これは、プラナリアでも同じようになっています。イモリの再生の時はよく知りませんが、たぶん、同様の仕組みで再生しているのだと思います。(これはちょっと教官に聞いておきます。)
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2005年10月05日

イモリの再生能力と再生医療

プラナリアの教官の授業、『再生生物学』が始まりました。生物の再生だけを扱うという珍しい講義です。他の大学には殆どないそうです。

ただ、私が今期最も興味がある授業です。プラナリアの阿形教授は教え方も上手ですし、しかも、考え方に共感できます。

まぁ私の感想はこれくらいでやめて、生物の再生の話です。

今日はガイダンス的な内容だったのですが、その中で、イモリとプラナリアの再生機構の違いを説明してくれました。以前、プラナリアの再生については書きましたが、簡単に説明しますと、プラナリアは未分化の万能細胞(何にでもなれる細胞:受精卵みたいなもの)が体中に存在して、切り口で万能細胞が活性化して増殖、分化して失った部分を再生します。

それに対し、イモリは全く違ったシステムをとっているそうです。

今日、初めて知りましたが、イモリの方が驚異的です。


イモリにはプラナリアのような万能細胞は存在しないのです。


では、万能細胞がないのにどうやって失った部分を作るのでしょうか。
まだ分からないことがたくさんあるのですが、『分化転換』という現象が起きるそうです。

分化とは、何にでもなれる万能細胞から固有の性質を持った細胞に変化することですが、『分化転換』とは、その名のとおり、分化の種類が変わるということです。

分化の種類が変わるというのは、まぁ、そのまんまですが、極端な例を言うと、手を作っていた細胞が足を作るようになる、というような感じです。実際は、失われた組織の隣の細胞が変化するのですけど。

つまり『AB』という全く異なる分化をとげた2種類の連続する細胞があったとすると、そのうちAが失われた場合には、Bが分裂し分化転換してAを作るんです。

本来、このようなことはありえません。分化した細胞はそれ以外にはなれないのです。それが分化と言うことですから。

しかし、イモリが再生する場面では、損傷した組織に隣接する細胞が一旦脱分化して万能性を獲得し、それが増殖して異なるものへ分化するのです。

プラナリアよりも遥かに奇妙です。

プラナリアの場合はシンプルで、既に脱分化した(というか初めから未分化)状態の万能細胞が体中に存在していて、それが増殖して分化して再生するのですが、イモリの場合は、ヒトと全く同じような構造・状態なのに、手がなくなると、なくなった部分に接している部分が脱分化して再生していくのです。だいたい、足一本が30日で再生します。

勿論骨だって再生しますし、心臓だって脳だって再生します。とりあえず、生命機能が失われない程度の損傷であれば脳でも心臓でも再生できるのです。勿論、死んじゃったら終わりです。

ただ、その脱分化の仕組みはまだ分かっていないようです。しかも、部分によっては、どの細胞が脱分化するのかもまだ良くわかっていないそうです。


更に興味深いのは、『ヒトの細胞でも脱分化は可能』という実験結果も出ているということです。

その教官の師匠である教官が『イモリの目(レンズ)の再生』の研究をしていたのですが、イモリのレンズを再生させる部分の細胞と同じ種類のヒトの細胞を培養すると、ヒトのレンズが出来たそうです。

つまり、ヒトの細胞も脱分化能力を備えているということです。

しかし、ヒトは潜在的には脱分化能力を保持しているのですが、それをイモリのように使うことは出来ません。

その理由もまだ分かっていません。(その仕組みが解明されれば再生医療がかなり進展します)


現在、幹細胞の移植は不完全な技術です。上手く行っているのは骨髄移植くらいです。
先日、心筋梗塞の患者に幹細胞を入れて回復させたというものがありましたが、あれもまだ不完全な技術です。

幹細胞を加えるという手術で最も恐れられるのは加えた幹細胞のガン化です。未熟な研究段階で幹細胞が移植されるとそのガン化によって患者が死んでしまう可能性があるのです。

再生医療はまだスタートラインに立った程度の技術です。今後、研究を進めて、基礎研究に裏付けられた再生治療を確立していかなくてはならないそうです。

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◇参考図書(amazonへのリンクです。)
切っても切ってもプラナリア
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2005年09月03日

プラナリアの教授の映像(番組?)

プラナリアの阿形教授の映像(NHKの教育番組みたいな感じのもの)を見つけました。3年前、まだ理化学研究所にいた頃の映像です。時間は29分間です。
科学的な話だけではなく、結構面白い番組ですよ。

未来を創る科学者達(7)プラナリアから学ぶ再生の秘密 〜阿形清和

29分と少し長いですが、暇なら見てみてください。私のPCじゃあまり上手く映りませんでしたが・・・音声は聞けました。

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2005年07月28日

細胞の自殺

今回は細胞死についてです。ちょっと難しい名称が出てきますが、そこらへんは無視しながら読んでもかまいません。

多細胞生物は細胞の社会といえます。

ただ、私たちの社会と異なり、個人よりも集合体が優先されます。

私たちの集合体である国家は、現在の状況から考えれば、当分“死ぬ”ことはないのですが、細胞の集合体は常に死と隣り合わせにあります。

ガン細胞一つ見逃せば、後々手におえない状況に陥るのです。

そのため、細胞は積極的に自殺します。そして、積極的に殺します。

集合体の為に個は切り捨てられるのです。



特に、発生段階においては細胞の自殺は頻繁に生じており、このような自殺、つまり、遺伝的に決められた細胞死のことをプログラム細胞死といいます。

アポトーシスという名前の方が有名ですが、アポトーシスという名前は本来はプログラム細胞死とは異なる定義です。

アポトーシスは細胞死の形態による名前付けです。

アポトーシスは細胞が縮んで行って死ぬことをさします。(これの対義語はネクローシス、これは細胞が破裂して死にます。)

一方、プログラム細胞死の対義語はアクシデンタル細胞死です。

名前から分かるとおり、こちらは原因による名前付けです。プログラム細胞死はプログラムされた細胞死なんです。

少し前まではプログラム細胞死=アポトーシス、アクシデンタル細胞死=ネクローシスだったので、混同して用いられることが多かったのですが、最近は、プログラム細胞死のネクローシスなどが見つかっており、混同して用いるのは避けるべきです。


今回はアポトーシスではなくプログラム細胞死についてです。

プログラム細胞死の研究は線虫という生物によって発展しました。

何故線虫なのかというと、この生物は、成長しても細胞が1000個程度しかないからです。

つまり、細胞の生死を確認しやすいのです。

また、この生物は発生の段階で覆われる殻が透明な為、発生における細胞死を観察しやすいという利点もあります。

まぁそれでも観察するのは大変だったと思います。根気のいる作業です。


線虫によるプログラム細胞死の研究は、変異体の獲得によるものでした。

『細胞死を起こさない個体』を生み出し、その成長を観察したり遺伝子を解析したりすることでプログラム細胞死の機構を解き明かそうとしたのです。

それによって、次のような機構が明らかになりました。

プログラム細胞死.jpg

線虫のプログラム細胞死の機構において、CED3、CED4は常に存在しています。

つまり、普通の状態では細胞を殺すようになっているのです。

しかし、CED9による抑制を受けているために細胞死は生じません。

細胞死を起こす場合には、EGL-1を活性化させ、CED9を抑制することでCED3を活性化し、CED4(タンパク質分解酵素)を活性化し、生体分子を次々に分解していって細胞死を起こします。

なぜ、常に抑制が働いているか、ですが、これは安全性という点で説明が出来ます。

つまり、活性化の連鎖だと、活性化が起こらなくなったら細胞死が生じません。ところが、抑制であると、抑制がおかしくなると細胞死が生じます。

まぁこれだけではCED4→CED3は説明できないんですが、こういう説明も面白いと思います。実際はもっと複雑な理由があるのかもしれません(←私の勉強不足です)。


これは『信号を一色にするなら青信号だけにしなければならない』という考え方と同じです。

ミスが生じた場合、出来るだけよい状態に持ち込めるように対策を立てておくのです。

信号の電球が切れたりして無灯の状態になった時、無灯の状態が赤であれば車は止まってくれます。もし、無灯が青だと、全車線が通行してしまうので、交差点では事故が起きてしまいます。


一方、哺乳類の場合はどうであるかというと、マウスの実験などその機構が見つかっています。

哺乳類のプログラム細胞死の機構は、線虫のものとそっくりなんです。

上の図における、Bcl-2はCED9とそっくりで、APAF-1はCED4と、Caspase9はCED3とそっくりだったのです。



つまり、プログラム細胞死の機構は線虫から哺乳類まで引き継がれてきていたのです。

たった1000個の細胞からなる線虫と60兆個の細胞からなるヒトが同じような機構を持っているのは凄いことです。まぁこういうのは結構あるんですけどね。

もう一つのポイントがミトコンドリア由来のシトクロムCです。

なんと、細胞死の機構の中にミトコンドリアが介入しているのです。

何故ミトコンドリアなのかはよく知りませんが、ミトコンドリアがエネルギーを作るだけの機関でないことは確かです。細胞死においても重要な働きを持っています。


ただ、哺乳類に関してはプログラム細胞死の機構はもっと複雑な様です。

上図のプログラム細胞死機構においてはCaspaseというタンパク質分解酵素がプログラム細胞死の最終段階で活躍します。

活性化したCaspase3,Caspase6,Caspase7が数百種に及ぶタンパクを分解していって、細胞は死を迎えます。

ところが、このCaspaseを作らないような変異体においても、プログラム細胞死が起こったのです。

つまり、図の機構の主役のCaspaseによる細胞死以外にも細胞死の機構が存在するということです。

その経路についてはまだよく分かっていないようです。

細胞死についてはまだ勉強中で、ちょっと不十分な点もありますので、またいつか補充したいと思います。
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2005年07月26日

獲得免疫の主役達〜T細胞とB細胞〜 4.胸腺学校の恐怖の教育

免疫シリーズ第9弾、T細胞の教育の話です。

T細胞のTは胸腺ThymusのTですが、T細胞を教育する胸腺は凄く厳しいのです。

T細胞が持つべき性質は大きく分けて二つあります。

1.決められたMHCタンパクを認識できること
2.自分を攻撃しないこと

この二つを教え込むのが胸腺です。

これを『正の選択』と『負の選択』と呼びます。即ち、MHCタンパクと結合するものを選ぶ(正の選択)のと自己抗原と結合するものを殺す(負の選択)のです。

正の選択においても、MHCを認識できなかったものは殺されます。つまり、不合格者には死が待っています。胸腺の出口付近には、マクロファージなど食作用を持つ細胞が沢山待っているのです。

しかも、合格率は2〜4%なんです。

つまり、最大98%が殺されます。


なぜ、せっかく作っておいてこんな無駄なことをするのでしょうか?
上手く説明は出来ないのですが、これは、やむを得ないことなのです。B細胞以上にT細胞の合格率が低くなるのは、T細胞がMHCタンパクという決められたものと結合しなければならないからです。

B細胞においては『負の選択』しか行われません。しかも、結構アバウトで、ほんの少し自己抗原と反応するくらいなら生き残ります。

それに対し、容赦がないのが胸腺なんです。生命の防御の要であるT細胞を徹底的に教育するのです。まぁ教育といっても試験をするだけなので、どちらかと言えば選別に近いですね・・・。

私たちの体の中を流れているT細胞はそれくらい厳しい難関を突破してきたものなのです。


あと、私の胸腺は既に半分以上が機能していないと思います。
胸腺のT細胞産生は思春期以降は落ちてきます。年をとると胸腺は殆ど機能しなくなります。

この理由はよく知らないのですが、突然変異を起こさないT細胞は沢山作り続ける意味がないからかもしれません。T細胞のレパートリーは明らかに有限なので、ある程度作ったら後は作ったものが分裂することで対応していっても問題ありません。それに、T細胞の産生・教育にはかなりの無駄がかかります。それもあって、ある程度経ったらT細胞の生産を減らしていくのだと思います。
一方、どんどん新たな敵に対応する為に変化し続けるB細胞はずっと骨髄で産生・教育されて出てきます。


こんな感じです。何か書き忘れもあるかもしれませんが、まぁ、試験勉強じゃなくてブログですから問題ないでしょう(適当・・・)。

以上、T細胞とB細胞についてでした。
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2005年07月25日

獲得免疫の主役達〜T細胞とB細胞〜3.MHCと免疫の個人差

免疫シリーズ第8弾、MHCとそれによる免疫の個人差の成立についてです。

ヒトのMHCはHLAと呼ばれ、「キラーT細胞と結合するMHCタンパク(クラス1)」が3種(A,B,C)、「ヘルパーT細胞と結合するMHCタンパク(クラス2)」が3種(DP,DR,DQ)あります。
ただ、6種それぞれは恐ろしいほど種類(数百種)があります。

そのため、父由来、母由来で同じMHCが来る可能性は殆どありません。
多様性をます為に、ここでは“優性遺伝”のようなものが生じず、“両優性遺伝”、つまり、両方とも発現するように出来ています。よって、大きく分けて6種類、それがそれぞれ2種類ずつで最大で12種類が存在します。

では、なぜ、12種類持つのではなく、6種類×2なのでしょうか。
これは、12種類にすると、認識するT細胞が大変だからです。それだけ多くの鋳型に対応しなければならなくなります。また、どうせ似た物を作るのなら、似た物を12種類それぞれの遺伝子が持つより、両方から6種類ずつ持ち寄った方が効率がいいでしょう。


あと、この12種類それぞれが抱える数多の種類は、あくまで“対立遺伝子”であって、抗体の時のように、一つの遺伝子並んでいるわけではありません。人それぞれ持っているものが違います。普通の“遺伝”です。

少々苦しいですが、MHCの種類の多さをカレー屋さんにたとえてみます。
あるカレー屋には、カレーが395種、ご飯が195種、お漬物が93種あり、そして、付け合せに、サラダが646種、ヨーグルトが900種、飲み物が1691種ある、とします。

そこから一つずつ選んでください。(種類は実際の数字です。前半3つはクラス1、後半3つがクラス2です)

ランダムに2組選べば同じ組み合わせが生じる可能性はまずないことは一目瞭然です。つまり、両親由来の6種類は父母で異なることが普通なのです。

それもあって、共優性という両方の性質を発現させる仕組みの効果がより高まるのです。

この多様性は病原性への耐性へ影響します。

つまり、MHCタンパクというのは種類によって、細胞内に侵入した異物や細胞内で繁殖しているウイルスに対する適合性に差があるので、各個体によって、ウイルスや病原体の提示しやすさが異なります。
そのため、ある人は速やかに抗原が提示され被害が最小限に抑えられるのに、他の人ではそれが遅れて大きな被害を受けるという事態が生じるのです。

これは免疫の個人差を生じる大きな理由です。

これによって、生物は特定の病原菌によって種が絶滅しないようになっているのです。

ただ、ある種の病原微生物が長い間存在してきた地域では、それに効果的に反応するMHCを多くのヒトが持っている場合もあります。


※MHCの大きく分けた種類が少ない理由
わざわざ3種類それぞれを何百にも分けた理由は、最初の方で説明したようにT細胞の認識を容易にするためです。
沢山の鋳型があるとそれに対応して様々なT細胞を作らなければなりません。余計な労力がいるのです。
ですから、大きく3種類にし、内側を重点的に変えたのです。これは、T細胞の多様性獲得と同じです。

必要なところだけを多様化させたのです。

ただ、それでは適応できない構造があったので、3種類のパターンをもっていると考えられます。
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2005年07月24日

獲得免疫の主役達〜『T細胞』と『B細胞』〜2.抗原認識

免疫シリーズ第7弾、前回の続編、『T細胞とB細胞の抗原認識と多様性の違い』です。

T細胞もB細胞も特異的な抗原認識能力を備えていますが、それは特徴的な受容体によるものです。

両者の持っている抗原認識受容体は同じものから進化したと思われ、形はよく似ています。しかし、それぞれの仕事に適応して個性を持っています。

T細胞は前回はなしたとおり、MHCタンパクに乗った短いポリペプチドの抗原を認識しますが、B細胞は体内で浮遊している大小さまざまな抗原(異物)を認識しなければなりません。

そのため、T細胞、B細胞の抗原認識受容体はちょっと違います。

B細胞の受容体である抗体の多様性の獲得は以前紹介したように
1.遺伝子組み換え&ランダムな接続部
2.H鎖、L鎖の組み合わせ
3.高頻度突然変異


一方、T細胞の受容体は
1.遺伝子組み換え
2.二つの鎖の組み合わせ

だけで、3.の突然変異は行いません。

これは次のように説明できます。

様々な異物とくっつかなければならない抗体と異なり、T細胞の受容体はMHCタンパクという決められたお皿にくっつき、そのお皿に載っている小さな破片を読み取るのが仕事です。

よって、変異が生じてMHCタンパクに結合できなくなると仕事が出来ないのです。

また、T細胞が変異して、自己細胞を他者と認識するようになると、次から次に自己細胞を殺していくことになります。

しかし、それならB細胞も突然変異で自己を認識する抗体を作るようになると大変・・・と思いますが、実はそうでもないんです。

なぜなら、B細胞はヘルパーT細胞によって活性化されないと抗体を産生しないのです。

つまり、自己抗原にヘルパーT細胞が反応し活性化しなければ、B細胞が活性化されることはないのです。

むしろ、突然変異によって得られる利益の方が遥かに大きいのです。

だから、B細胞は突然変異を起こしてもT細胞は突然変異を起こさないように出来ているのです。

また、抗原認識の方法ですが、T細胞の場合、MHCタンパクという“お皿”に乗った物しか認識しなくていいので、MHCタンパクと結合する周辺部の多様性はかなり低く、抗原を認識する中心部だけが特化して多様化しています。

しかも、くっつきやすいように腕は動かず、Yの字ではなく“I”の字をしています。

一方、B細胞の受容体や抗体は、どの方向から来るか分からない抗原を認識しなければならないので、“両腕が動き”且つ“広い範囲で多様性を獲得”しています。

以前、免疫グロブリン(抗体)がYの字をしていましたよね。

このYの字の枝分かれ部分は自由に動けるのです。

つまり、Yの開く角度は様々に変化でき、様々なサイズの抗原に対応できるのです。


ところが、T細胞の場合、MHCタンパクに乗ったものしか認識しなくていいので、動かずにT細胞の抗原認識受容体はIの字をしています。

ちょうど、Yの字の枝分かれの片方だけがあるような感じです。

このように、T細胞とB細胞は似たような方法(遺伝子の切り貼り)で無数の異物に対応する仕組みを得ているのですが、その性質に合わせて独自の進化をしています。

ちゃんと、適応して行っているのです。
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2005年07月23日

獲得免疫の主役達〜T細胞とB細胞〜 1.機能

久々の、免疫シリーズ第6弾、今回はT細胞とB細胞の違いについてです。
ちょっと長くなるので、予定では
1.『細胞の機能』
2.『抗原の認識・多様化の獲得』
3.『MHCと免疫の個人差』
4.『胸腺学校の教育方針』
みたいな感じで何回かに分けて進めて行きたいと思います。


『ヘルパーT細胞』とか『抗体』といった単語は聞いたことがあると思います。

ヘルパーT細胞は他の免疫系を活性化させる司令塔で、抗体はB細胞が分泌するタンパクです。

T細胞やB細胞というのはいわゆる白血球です。



そもそも、T細胞もB細胞も同じ種類の幹細胞(リンパ系の幹細胞)から生まれます。

そのリンパ系の幹細胞は骨髄にあるのですが、T細胞になるものは途中で胸腺という臓器に移動します。

胸腺って余り聞かない名前ですが、T細胞のTは胸腺ThymusのTです。

因みにB細胞は骨髄Bone marrowのBです。

両者の名前は各細胞が“教育”される場所を指しています。


“教育”とは“自分を攻撃しないようにする”事と“適切に機能する”事を教えることです。(教えるというか・・・ダメなものは殺す?)

それはT細胞とB細胞の機能の大きな違いから、別々の場所で行われることになっています。

今回は、T細胞とB細胞の機能について簡単に説明したいと思います。



○T細胞:T細胞は大きく分けて2種類あります。

1.キラーT細胞=『ウイルスに感染した自己細胞を殺す』
2.ヘルパーT細胞=『他の免疫を活性化する』

この二つのT細胞の大きな違いは、認識する媒体です。

T細胞は両方とも細胞が提示する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質によって情報を得ます。

MHCは移植などの時に調べられるものです。これについてはまた別の機会に説明したいと思います。

MHCタンパクは細胞内のアミノ酸の鎖(=ポリペプチド)と結合して、細胞の表面に発現し、細胞内の情報を細胞外に提示するのが仕事です

その提示すべきものが二種類あるのです。

そのため、MHCは二種類あり、それは二種類のT細胞に対応しています。

1.のキラーT細胞に結合するMHCタンパクは『細胞質内で作られたポリペプチドの破片』と結合して提示します。

一方、2.のヘルパーT細胞に接合するMHCタンパクは『細胞外から取り込まれ、細胞内で分解されたポリペプチドの破片』と接合して提示します。



まず1.のキラーT細胞用MHCタンパクです。

ウイルスに感染した細胞はウイルスが必要なタンパク質を作らされます。

そのため、タンパク質合成が行われる細胞質内にはウイルス遺伝子由来のアミノ酸の鎖が存在するのです。

それを細胞表面に提示することで自分がウイルスに感染していることを伝えます。

また、ウイルスは遺伝子を取り込んでしまう為、一度ウイルスに感染した細胞は元に戻ることは出来ません。

よって、全てキラーT細胞の命令で自殺します。

次に2.のヘルパーT細胞用MHCタンパクですが、上に書いたとおり、これは外部から取り込み分解した異物のタンパク質の破片のポリペプチドをその上に乗せて提示します。

そのため、強い“取り込む”作用を持つ免疫細胞マクロファージなどの細胞にしかこのタイプのMHCは存在しません。

異物はある種の小胞体を使って取り込まれるため、このMHCタンパクはその小胞体を認識して現れます。

取り込まれた異物はマクロファージ内の小胞体で分解され、その断片が提示されるのです。

それによって、その細胞内への異物の侵入がT細胞に伝えられ、その細胞は活性化され、内部では異物の消化・駆逐がより効率的に進むようになります。


つまり、
1.『細胞内で出来た異物』を提示するMHCタンパク
  →キラーT細胞が認識
  →自殺命令
2.『細胞外の異物を分解産物』を提示するMHCタンパク
  →ヘルパーT細胞が認識
  →免疫活性化

ということです。
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2005年07月20日

DNAの塩基配列を調べる(サンガー法)

今回は、画期的なDNA解析法、サンガー法についてです。基本は簡単なので、ぜひ読んでみてください。

1970年代にサンガーという人が開発した画期的なDNAの塩基配列(※)解析法があります。(サンガーはノーベル化学賞を2回受賞)

Dideoxy Methodと言います。

まぁ生物か化学をやっていない人には意味不明な名前でしょう。

でも、仕組みはとっても簡単です。


そのポイントは『塩基A、G、C、Tのどれか一つで不定期に止める』ということです。

どういうことかというと、DNAを伸ばしていく際に、Aのつく部分で、ある確率でDNAの伸びを止めるとAの場所が分かるのです。

たとえば、TTTTTATTTTTATTという配列があったとします。

これを作る際にAの所で1/2の確率でとまるとすると、
半分(1/2)はTTTTAでとまり、残りの半分(1/4)はTTTTTATTTTTAでとまります。

Aを作った時、半分はAで止まってしまうのです。

これで、DNAの長さを測れば(※)、Aは6番目と12番目にあることが分かります。



これをTについて、Gについて、Cについても行えば、AGCT全ての場所が分かるのです。


ここで問題となるのは『どうやってDNAが伸びるのを止めるのか?』ということです。

それを考え出したのがサンガーです。

彼はDNAの、鎖の結合を担うOH基を片方Hにしたのです、一部だけ。

そうすると、新しく作られた一部のDNAはそこから先に結合できなくなります。

つまり、DNAは2つの手を持っていると考えることが出来るのですが、サンガーはある割合でその片手をふさいでしまったのです。


サンガー法

人間も手が二本なので人間に置き換えて説明します。

4クラス(A組、C組、G組、T組)あり、各クラスとも生徒は充分にいて、外見ではどのクラスか区別がつかないとします。

そして、先生がこういうのです。

「A組のうち数名は片手でこの荷物を持ちなさい」

そして、先生は決められたクラス順で生徒を並べて両手をつながせていきます。A組→G組→C組→T組→A組→G組→T組→A組・・・のように。

そうすると、いつか、A組の生徒の中で、片手で荷物を持っている人の所でとまりますよね。

そして、同じ順番で何回も列を作っていくんです。


そうすると、それを遠くから見ていた校長先生には「A組の生徒を○番目に入れたな」というのが分かるのです。

(まぁ実際は、“手を切った”という方が適切かもしれませんが、倫理上の問題で荷物を持たせました。)


因みに、DideoxyのDiは「二つ」という意味で、「Deoxy」は「酸素を除く」という意味です。さっき、OH基の酸素を抜いてHにしましたよね。

そう、そして、これは、デオキシリボ核酸(DNA)のデオキシと同じです。

つまり、DNAのデオキシ(※)の部分と、更に抜いたデオキシでDideoxyなんです。

そう考えると、分かりやすい名前ですよね。



※DNA(デオキシリボ核酸)
DNAはRNA(リボ核酸)から酸素を一つずつ抜いたものです。
↓リボース(左)&デオキシリボース(右)

ribose.jpg




※DNAの長さを測る方法
DNAは“リン酸―糖―リン酸―糖―・・・”と連なっているのですが、このリン酸が負の電荷を持っています。

つまり、DNAは長さに比例して負の電荷を持っているのです。

倍の長さのものは倍の静電気力が加わってくれるので、何も障害がなければ、どれも同じ速さですすみます。

しかし、抵抗がある所では違います。長さに比例して抵抗力が働くのです。

そうすると、短い方が先まで進んでいきます。

よって、試料をおいた場所から遠くにあるものが短いDNAとなります。

こうやって、DNAの長さは測ることができます。


※塩基配列
アデニン、シトシン、チミン、グアニンという4つの物質(塩基)が(DNAの場合)デオキシリボースという糖に結合しています。

さっきの生徒で言うなら帽子の色とでもいいましょうか。まぁ帽子の色なら遠くからでも分かりますが、塩基の種類は遠くからでは中々分かりません。

その塩基の列が情報なんです。いわば、4進法のデータです。

その4進法でアミノ酸の配列を記録していて、その情報にそってアミノ酸を並べていき、アミノ酸の鎖であるタンパク質を作るのです。

脂質などタンパク質以外の成分はタンパク質により作られます。血液の濃度や、イオンバランスなどもタンパク質が制御しています。

体が持っている情報はタンパク質の分だけです。

他のものは間接的に支配しているのです。

その4進法のデータを読もうというのが今回の企てでした。


上で説明したサンガー法は言われれば当たり前のことなのですが、それがなかなか思いつかないんでしょうね。


あと、アミノ酸は次の表(コドン表)に基づいて並べられています。(この表はDNAをRNAに読んだ後の並びですので、TがUに置き換わっています。)

コドン表.jpg






因みに、コドン表にある3文字によるアミノ酸の略は次のものをさしています。


グリシン Gly
アラニン Ala
バリン Val
ロイシン Leu
セリン Ser
スレオニン Thr
システイン Cys
アスパラギン Asn
グルタミン Gln
チロシン Tyr
イソロイシン Ile
メチオニン Met
フェニルアラニン Phe
プロリン Pro
トリプトファン Trp
アスパラギン酸 Asp
グルタミン酸 Glu
ヒスチジン His
リジン Lys
アルギニン Arg


◇参考図書(amazonへのリンクです)
DNA (上) (ブルーバックス)

DNA (下) (ブルーバックス)

DNA複製の謎に迫る (ブルーバックス)



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2005年07月18日

PCR法〜DNAを増やす方法〜

PCR法。凄く単純な仕組みなんですが、凄く重要な技術です。

岡崎フラグメント」でDNAの複製について話しましたが、今回はその次の段階、DNAを人工的に増やすという話です。

今回紹介するのは、DNA鑑定やウイルスの特定などの際に使われるPCR法という方法で、聞いたことがある方も多いかもしれません。


ポリメラーゼ連鎖反応(ploymerase chain reaction)

これは、試験管内で細胞を使わずにDNAを増やす方法です。

手順はとても単純で次の3つを繰り返すのです。

1.熱により二本鎖DNAを1本ずつに分離する

2.プライマーを会合させる

3.DNAポリメラーゼによるプライマーの伸張

これを何度も繰り返すのです。

1回が5分程度で大体20〜30回繰り返します。


この技術の開発によりDNA解像度・速度ともに飛躍的に向上しました。

それまではDNAを増やすのには大腸菌に組み込んで増やしてもらっていましたし、増やさないで行う為には大量のDNAを入手する必要がありました。

しかし、このPCR法は1回(5分)で2倍になるので、10回(50分)繰り返せば1024倍に、20回(100分)で約100万倍、30回(150分)で約10億倍になります。

よって、ごく少量のDNAでも容易に増やすことが出来るのです。

大腸菌に作らせたらこの何倍も時間がかかりますし、DNA以外のタンパクなども増えますので材料も沢山要ります。


そして、なにより、PCR法は温度調節だけなので全自動で行うことが出来るのです。


ただ、この技術を可能にする為には熱に耐性のあるDNAポリメラーゼが必要でした。

DNAが一本鎖になる程の温度(そうなったら死んでしまいます)は私たちの体は想定していませんので、DNAポリメラーゼは熱に負けて機能しなくなってしまいます。

しかし、これは“私たち”のDNAポリメラーゼなら、です。

熱に耐性のあるDNAポリメラーゼが必要な生物から取ってくればいいのです。

つまり、高温地帯に生息する生物です。

高温地帯に生息する菌などにはその高温に耐えられるような機能がついています。それを取り出して、必要なDNAを増やしてもらうんです。


ただ、現在多く使われている耐熱性のDNAポリメラーゼは若干ミスが多いのです。その熱ではDNAの修復機構が働かないのが原因です。

まぁ最近は耐熱性の修復機構が発見され、利用されることもあるそうですが、修復機構なしでも充分な結果を得ることが出来るようです。

このPCR法の開発によってDNAを容易に増やすことが出来るようになり、細胞一つ、DNA1分子からでもDNA解析が可能になったのです。

あと、最近は逆転写酵素(RNAウイルス)を用いた、RNAの解析も行われているようです。



次回は、この次の段階、増やしたDNAを解析する革命的な方法(サンガー法)を説明したいと思っています。(いつになるかは未定ですが・・・)


※熱による二本鎖→一本鎖
DNAは、複製のことを考えか、鎖同士の結合は結構弱いんです。

高校で化学をやったことがある方なら必ず知っている“水素結合”でDNA同士はくっついています。

水素結合は「水を凍らせると体積が増える」原因となっている結合ですが、これは所謂「結合」(=共有結合)に比べて圧倒的に弱いのです。

ですから、温度が上がり分子が活発に動き出すと外れます。

ちょうど、氷が水に、水が水蒸気になるようなものです。


「熱とは物質の運動エネルギー」の事ですので、『温度が上がる=物質の運動が激しくなる』ということです。

暑く感じるのは、空気が速く動き、それがぶつかった時に大きなエネルギーを与えるのです。
逆に寒いと、空気は遅く動いているのであまりエネルギーを与えてくれません。だから、寒く感じるのです。

水が蒸発するのも、水分子がある程度激しく動くようになると、水分子同士の結合が切れて、水分子が飛び出していく為です。

同様に、DNAの二本鎖に熱を加えると、DNAが激しく動くようになり、二本鎖を維持できなくなって、一本鎖に分離してしまうのです。
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2005年07月17日

岡崎フラグメント〜DNAの複製機構〜

『岡崎フラグメント』

これは日本人の名前がついた最も有名な生物学用語でしょう。

岡崎フラグメントは、「DNAの複製は両方向に進む」という事実と、「DNA合成は片方にしか進めない」という事実、この二つの矛盾を解決した大きな発見でした。

まぁ両方向とか片方とか言われても分からない方も多いと思うので、まず、DNAの新しい鎖の作り方を説明します。

DNAは二本の鎖がらせん状になった構造をしています。それぞれ逆さの方向になってくっついているのですが、複製される時は、

1.『DNAヘリカーゼ』というDNAの二本鎖をほぐす酵素が『複製起点』に呼び込まれます。

2.次に、ヘリカーゼによって開かれた塩基配列に、『プライマーゼ』という酵素で『プライマー』という短い“RNA”が付けられます。

3.そして、そのプライマーがDNAを合成する(伸ばしていく)『DNAポリメラーゼ』を呼び込み、ポリメラーゼがプライマーにDNAをつなげて伸ばしていくのです。


ただ、このDNAポリメラーゼは、一方方向にしか進めないのです。

原因はDNAの非対称性です。


ribose.jpg

DNA.jpg

DNAは上図のように非対称に連なっていて、DNAポリメラーゼはそれぞれを5’炭素→3’炭素→リン酸→5’炭素→3’炭素→・・・という一方の方向でつなげていきます。(5’とかいうのは炭素の場所を区別する為の数字です。5’は起点から五番目、という意味です。)



DNAは非対称なので伸張はかならずこの向きに進み、逆には進めないのです。

ところが、さっき出した図のように、ヘリカーゼで二本に分けられたDNAの両方ともが同じ方向に複製されていくのです。

明らかに矛盾していますよね。


これを説明したのが岡崎フラグメントです。

岡崎フラグメントというのは小さなDNA断片です。この岡崎フラグメントが発見されたことで、DNAの複製方法が判明しました。


DNAは次のように複製されていたんです。

DNAの複製.jpg

そう、片方は順調に5’→3’と複製されていき、もう片方は5’→3’をちょっとずつつなげていって鎖を作っていたのです。

これによってDNA複製の両方向性が説明されたわけです。


※プライマーがRNAである理由
疑問に思われた方も多いと思います。

なぜ“DNA”を合成するのにそのはじまりのプライマーはRNAなのか?

初めからDNAにしておけば取り除く手間が省けます。

これは重要なことです。

そして、実はこれは、プライマーが必要な理由と同じです。

なんでわざわざ別個にプライマーなんてものをつける必要があるのでしょうか。普通に作り始めてもよさそうです。

プライマーを用意しなければならない理由は、DNAを初めから正確に作るのは難しいということです。

つまり、最初の断片はミスが多いのです。

そのため、最初のプライマーは取り除いて、その前のプライマーから伸びてきた断片とつなげた方が確実なのです。

取り除くことを考えれば、DNAという“本物”よりもRNAという“偽物”の方が認識しやすくていいのです。

ですから、プライマーはRNAのことが多いのです。勿論、DNAでも不可能ではありません。


※DNAの両方向性
また、次の疑問も現れるでしょう。


何故逆方向からも合成できるDNAポリメラーゼを作らなかったのか?

これは、DNAの元となるデオキシリボヌクレオシド三リン酸に原因があります。

DNAをつなげる時にはデオキシリボヌクレオシド「3」リン酸の3→1に分解することで生じるエネルギーを使います。よって、デオキシリボヌクレオシド三リン酸のリン酸がついている方からエネルギーを得る必要があるのです。

だから、後からつけるほうにリン酸がついている方が得で、非対称な為、一方通行なのです。

ただ、勿論、逆向きを作るだけなら可能です。

作ったDNA鎖にリン酸を残しておけばいいのです。

しかし、この場合、まちがって違うものをつけてしまった場合に、修正が難しいのです。

DNAは3つのリン酸をつけたものから2つのリン酸を取って、そこで生じるエネルギーでくっついています。

しかし、1回くっついてしまうと、もうリン酸はなくなってDNA鎖側には再びくっつく能力はなくなってしまうのです。

よって、エネルギーを出す方(=リン酸を3つ持っている方)が新しく付く方でないといけないのです。

そのため、DNAは一方方向からしか作られません。


勿論、頑張れば、可能です。たとえば、リン酸が逆に3つついている物を別に作ったり、先端をリン酸化する酵素を別に作ればいいのです。

ただ、リン酸の位置が二種類あると識別にまた手間がかかりますし、リン酸化する酵素を作るということは余分にエネルギーを使うということです。

それなら、一方方向だけにして逆方向側には岡崎フラグメントを作ればいいのです。



◇参考図書(amazonへのリンクです)
DNA (上) (ブルーバックス)

DNA (下) (ブルーバックス)

DNA複製の謎に迫る (ブルーバックス)



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2005年07月14日

センダイウイルス

インフルエンザウイルス、HIVなどウイルスの一部は宿主細胞と“融合”することで細胞内に侵入します。

このような細胞膜を融合させて侵入する種類のウイルスは50年ほど前に世界で初めて日本で発見されました。

その名の通り、仙台(東北大)で見つかりました。



このような安直な(?)ネーミングが付けられてはいますが、当時の世界には革命的なウイルスでした。

なぜ、そんなに有名になったかというと、実は、これ、「細胞融合の発見」だったのです。

つまり、世界で初めて、細胞が融合するところが確認されたのです。

勿論、卵子と精子の融合は確認されていましたが、異種間における細胞融合はこのセンダイウイルスが世界初です。

そして、このセンダイウイルスの研究から、人工の細胞融合の技術が開発され、今ではなくてはならない技術になっています。
posted by new_world at 01:29| Comment(3) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月08日

傷口の下で起こっていること

免疫シリーズ第4弾『自然免疫』です。

自然免疫は、獲得免疫ではない免疫です。

つまり、“二度とかからない為の”免疫ではなく、“初めての相手への”、そして、“獲得免疫が発動するまでの”免疫です。

まぁ免疫の先陣ですかね。

本陣であるB細胞(→抗体)やT細胞(→細胞のチェック・免疫の指揮)などが来る前の免疫です。

自然免疫を担当している代表的な細胞・分子は

1.マクロファージ :食べる・他の免疫系との連携
           →常駐の警備
2.好中球      :食べる(1回だけ)
           →非常時の即戦力
3.補体        :他の免疫系との連携・病原菌に穴をあける=殺す
           →免疫全体の援護
です。

また、獲得免疫との連携に重要なのは

4.樹状細胞 :菌・ウイルスを取り込みリンパ組織まで走り、敵の情報を本陣に伝える
         
です。

私が授業を受けている教官の専門はCの“樹状細胞”らしいです。かのロックフェラー大学の客員教授も勤める世界的な免疫学者らしいですが、見た目はただのおばちゃんで、授業はいまいちです・・・。

ま、それは置いておいて、本題です。

今回想定するのは『傷口から細菌が侵入した』というものにしておきます。全部話すと教科書調になってしまい、わかりにくいんで。図もかけないことですし・・・著作権と私の技術の問題で。



傷口が生じ、そこから細菌が入ってきたとします。

そうすると、まずは、その組織内にいたマクロファージによって取り込まれます。

敵を認識し飲み込むと、マクロファージは様々な伝達物質を放出します。その物質の効果は大きく分けて二つです。

1.炎症を起こす
2.他の免疫を呼び込む

1.炎症とは『痛み』『発赤』『発熱』『腫脹』を伴うものですが、これはマクロファージなどがあえて起こすもので、細菌やウイルスが起こしているものではありません。

炎症には次の三つの現象が背景にあります。

1.血管の拡張→血流の減速・血液量の増加
 ⇒発赤・発熱
2.血管壁の細胞を変化させ、白血球をくっつけやすくする。

3.血管透過性の上昇=白血球の取込みwith他の血液細胞
 ⇒腫れ⇒痛み

つまり、この炎症という現象は白血球を呼び込むためにあるのです。

血液の量を増やして速さを落とし、更に血管壁と白血球の接着を容易にして、且つ、血管壁の細胞に隙間を作らせて白血球を血管から取り込むのです。

その際には様々な血液内成分も同時に取り込まれる為、膨らんで神経を刺激して痛みが生じるのです。

また、痛みは患部を動かさないようにする為でもあります。

動かすと感染が広がったり回復が遅れてしまうので。

蚊に刺されたときにはこんなことが起きてるんですね。


そして、同時に、樹状細胞が外敵を取り込んでリンパ組織に移動し、待機しているB細胞やT細胞に情報を伝達します。

情報を得たそれらの細胞は活性化し、抗体の生産などを行い、患部に向かいます。

ここまでには数日かかります。

本陣が戦の準備をしている間、戦場では第一の援軍である即戦力の好中球が活躍します。

好中球はマクロファージ同様の食細胞で、様々な外敵を認識して食べて行きます。

ただ、好中球は外敵を1回しか食べられないので、食べてはどんどん死んで行きます。

その好中球の死骸はいわゆる膿です。

好中球は平時は血液中を漂っているのですが、炎症時にはマクロファージの伝達物質に引き寄せられて、患部へ集まっていきます。

そうして、幹部に集まったものは外敵を食べては死んで行きます。

これは、効率的な免疫の為の仕組みです。

マクロファージのような何度でも食べられるようなものはとりあえず組織内に最低限配置しておいて、一方で、短期間だけの戦力である好中球はすぐに動員できる状態で血液中を循環させておくのです。

そうすることで、外敵が現れた時にだけ、一箇所に集まって強い免疫作用を引き起こせます。

免疫は諸刃の剣でもあるので、できるだけ、効率よく使わないといけないのです。



そして、もう一つ重要な自然免疫があります。

補体です。

補体とは細胞ではなく物質です。

まぁ酵素というべきですかね。

補体は連鎖反応を起こして様々な補体を作っていきます。

この補体系は自然免疫としても重要ですが、獲得免疫の発動時にも効果を発揮しています。

補体とはもともと『抗体機能を補足する物質』として名づけられたものなのです。

補体は抗体が細菌などに結合するのを助けていて、最初は抗体応答の中で見つけられました。

ただ、今回は獲得免疫時の補体の働きではなく自然免疫時の補体の働きです

補体の自然免疫時の働きには次のようなものがあります。(それぞれ異なる補体が担っています。)

1.細菌の表面に結合し修飾する
 ⇒マクロファージなどに認識されやすくする。
2.伝達物質を放出し免疫系を活性化する。
3.細菌に穴をあける=殺す。

3.の穴をあける補体は最終形で、まずは免疫の活性化と目印付けが任務です。


とはいえ、一番目立つのは3ですね。

ほんと強烈です。

細胞に穴をあけちゃうんですから・・・本当に穴があくんです。


まず目印の補体が細菌の表面に結合し、続いて「槍みたいな補体」が円形に次から次に細菌表面に刺さっていって、穴が開くんです。


ただ、いくら効率的に連鎖的に活性化されていく補体でも、暴走したらとんでもないことになります。

自分の細胞に穴をあけられたら大変です。

そのため、正常細胞の表面には、“槍”の目印となる補体を取り除く仕組みや、補体自体にも、外敵細胞の表面付近でしか活性化しないように出来ています。

つまり、活性化した補体が広がらないように出来ているんです。

まぁ完全じゃないですけどね・・・。



自然免疫はこんな感じです。

結構あちこち省略しましたが、分量としては結構ありますね。図がないので分かりにくいです。とても。

ごめんなさい。




獲得免疫に負けず、自然免疫も綺麗な仕組みです。

免疫シリーズの次回は「獲得免疫」について何か書こうと思っています。
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2005年07月07日

nou-darake

プラナリアの時に書きそびれた内容です。

例のプラナリアの教官はプラナリアの位置情報の決定について研究しているのですが、その中で発見されたある遺伝子があります(遺伝子自体は他の研究者が発見したものだったかもしれません)。

その遺伝子をなくしてしまうとプラナリアはからだ中に脳が出来てしまいます。

つまり、その遺伝子は脳の位置を決めている遺伝子だと考えられるのです。

遺伝子の名前の付け方は生物種によって違うことが多いのですが、ショウジョウバエなどではその遺伝子を失った時に出てくる状態を遺伝子名にします。
たとえば、white遺伝子は、なくなると目が白くなります。

それと同様に、脳が沢山出来るこの遺伝子を、その教授のグループ(理化学研究所時代)は“nou-darake”と命名したそうです。略称はndk遺伝子です。

『脳だらけ』です。
posted by new_world at 17:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月05日

プラナリアの一部の上下を入れ替えると・・・

プラナリアの頭の一部をくり貫いて上下逆さにしてはめ込むとどうなると思いますか?
  


ちゃんとくっつくんですが、数日すると変形していきます。角みたいな構造がボコボコ出てくるんです。

実はそれ、“頭”なんです。

上下各2本の計4本出てきて、元の頭を合わせて全部で5つの頭を持つプラナリアになります。

これが尻尾であれば尻尾になります。真ん中だったら・・・どうなるんでしょうね。前の方は頭、後ろの方は尻尾になるかもしれません。

この形成の基準は“背と腹の中間には頭か尻尾が来る”というものです。
プラナリアにはそうインプットされているんです。

下の図はその説明です。パワーポイントで今作った簡単な図ですが・・・青い方が背側、赤い方が腹側と考えてください。背と腹の間には頭か尻尾が出来るんです。

プラナリア上下入れ替え.jpg



◇関連記事
とても可愛いプラナリア〜最強の生物?〜
プラナリアが平たい理由
イモリの再生能力と再生医療

◇参考図書(amazonへのリンクです。)
切っても切ってもプラナリア
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2005年07月03日

とても可愛いプラナリア〜最強の生物?〜

最近、ある教官の授業を受けて生物の再生について興味をもちました。その教官はプラナリアやイモリの研究をしていて、その授業はプラナリアについてでした。

プラナリアは再生能の極めて高い生物として有名です。全長は大きいもので2〜3cmで形は矢印みたいな感じです。そして、いくら切られても再生します。しかも、10個に切り分ければ10匹になります。

たとえば、こんな感じに・・・(京都大学阿形研究室HP参照)

プラナリア 再生.jpg

プラナリア.jpg

このように、プラナリアは切れば切るほどに増えます。
記録では240分の1の断片から1匹ができたといいます。勿論、これは240匹になったと言うわけではなく、240分の1の断片1つから1匹が回復できたと言うことです。

このような再生能は“幹細胞”という細胞が体中に存在し、しかも、それが上手くコントロールされていることで可能になります。
再生医療などで注目されているES細胞はエンブリオステムセル、胚性幹細胞のことです。
つまり、プラナリアの幹細胞の研究は再生医療への重要な基盤となるのです。


一般に幹細胞とは受精卵のような何にでもなれる細胞を指します。実際に、プラナリアの体中に満遍なく配置された幹細胞は全ての組織に変化することが可能です。
たとえば、しっぽの先だけを切っても一匹になりますし、頭を半分にしても1匹になります。

以前は、再生芽という組織が切り口に生まれてそこで新しく作られると思われていましたが、実際は、再生芽は細胞を作っているだけで、細胞の分化は元々残っていた部分でも起きているようです。

つまり、頭−胸−尾の3部があるとして、頭と胸の間で切ったとします。そして、頭の部分を観察すると、切り口からどんどん新しい細胞が出来上がるのですが、出来上がったものの頭は切り取られた頭より小さいんです。つまり、胸と尾が生えたのではなく、全体的に広がっていったと見る方が正しいのです。

この機能は空腹時にも適用されます。

プラナリアは食べないと“縮み”ます。文字通り、縮むのです。だんだんと同じ形のまま小さくなるのです。これも、幹細胞によって各部分が何にでもなれるから出来る芸当です。
最後の最後には形を維持できなくなって死んでしまうそうですが。
2cmくらいあるものは大体3ヶ月ほどは何も食べずに生きていけるそうです。

飼育する場合は、鶏のレバーなどを餌に与えるそうですが、餌やりを忘れても問題ありませんし、数を増やすのも簡単なので、実験動物としては優れているそうです。学問的に興味深い生物であることは勿論です。ただ、自然界では水質汚染で結構打撃を受けているようですが。

プラナリアの持つもっとも重要な機能は、『幹細胞の安定化』の機能でしょう。
幹細胞は何にでもなれますが、逆に言えば、コントロールが難しいと言うことです。何にでもなれるので適切な指示を出さなければ大変なことになります。

ただ、やはり、プラナリアも完璧ではなく、ある程度適当に再生しているようです。
たとえば、頭の一部を尻尾に埋め込みますと、そこが頭になるそうです。つまり、『頭−胸−尾』の胸−尾の間に「頭」の一部を挿入すると、『頭−胸A−胸B−頭−胸−尾』になるのです。胸の中間部で同じものが重なります。

アルファベットで説明すると、ABCDEのBの部分をDとEの間に入れるとします。
1.A( )CD(B)E
2.ABCDCBCDE
のように再生します。別に長くなるわけではなく、さっき話したとおり、満遍なく変化します。

また、切り方によっては頭が2つあるような変な形にもなります。

実際に奇形のプラナリアは自然界にも存在するようです。

プラナリアは自然界には比較的普通にいる生物です。ある程度綺麗な川には生息しているそうです。岩の裏なんかにくっついているのを集めることが出来ます。



まじまじと見ると微妙に気持ち悪い感じもしますが、見方によっては可愛い感じもしなくもない気がします。

その教官も、餌をやっている映像を見せながら、「ほら、この満足げな表情!」とか楽しそうに話していました。

※youtubeなどで実際の映像(食事など)を見る事ができます。結構、気持ち悪い感じもします・・・。



◇関連記事
プラナリアが平たい理由

イモリの再生能力と再生医療


プラナリアの一部の上下を入れ替えると・・・


◇参考図書(amazonへのリンクです。)
切っても切ってもプラナリア
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2005年07月02日

免疫の細胞

一週間ぶりに復活、免疫シリーズ第3弾。免疫の細胞の種類についてです。

キラーT細胞とかは有名ですが、これは実際に病原菌などを攻撃するものではありません。

血液中・組織内の免疫の細胞にはT細胞の他にB細胞、マクロファージ、樹状細胞、マスト細胞、好中球、好酸球、好塩基球などがあります。


では、それぞれについて簡単に説明していきます。

これらの細胞は全て元々は骨髄にある造血幹細胞という細胞から生まれます。

白血病とかの治療の骨髄移植で移植される細胞です。

赤血球や血小板もこの細胞から生まれます。

「生まれる」と言うのは細胞分裂によって生じると言うことです。

造血幹細胞は“幹”とついているとおり、細胞の分化があまり進んでいないもので、様々な細胞になることができるのです。

いわゆる万能細胞として知られるES細胞はエンブリオステムセル、胚性“幹”細胞です。

分化(=特殊化)した細胞を枝葉とすると、幹細胞は幹にあたるのです。

そして、造血幹細胞はまず『骨髄系』前駆細胞と『リンパ系』前駆細胞に分化して、それからそれぞれの細胞へと分化していきます。

『骨髄系』の細胞にはマクロファージ、樹状細胞、マスト細胞、顆粒球(好中球など)があります。

マクロファージ、樹状細胞、好中球は食細胞とも呼ばれ、進入してきた異物を“非特異的”に食べます。

非特異的とは、適応免疫系に見られるような一種だけへの攻撃ではなく、幅広いものへ攻撃を加えることが出来ると言うことです。

抗原の認識は“受容体”が行うのですが、マクロファージなどには多くの種類の抗原受容体が存在する為、様々なものを認識できます。

その受容体自体も効率がよく、一つの受容体が様々なものを認識できます。

受容体自体は型が決まっているのですが、異物に“多く見られる”部位に結合する為、多くのものを認識できるのです。

一方、“抗体”と呼ばれるものはそれ自体が受容体で(B細胞の受容体が分離したものが抗体)、しかも、特定のものに集中して攻撃を加えるように出来ている為、殆ど一種類のものにしか結合することが出来ません。


話を戻しますが、食細胞で最も数が多いのは好中球です。

あまり聞きなれない名前ですが、この好中球の死骸の集まりが“膿”です。

マクロファージは体中に存在して何度でも異物を食べることが出来るのですが、好中球は炎症が起きた部分に集中的に存在して、一度しか異物を飲み込むことが出来ません。

つまり、好中球は炎症と言う異常事態にのみ活躍できるようになっているのです。

普段は血液中をめぐっていて、異物が入るとマクロファージなどにより呼び出されます。

マクロファージは監視にはいいのですが、組織中にいなければならないのでたくさん置いておくことは出来ないんです。

ですから、好中球という別戦力を血中に保持しているのです。それに、免疫細胞が多すぎても色々問題を起こしますので、マクロファージのような長寿な細胞を沢山持っておくわけにはいかないのです。


次のマスト細胞は粘膜防御などで活躍するもので、時にはアレルギーなどを起こします。

そして、好塩基球や好酸球は寄生虫への攻撃を行っていると考えられていますが、好塩基球に関してはよくわかっていません。


つぎに、『リンパ系』ですが、リンパ系前駆細胞からはBリンパ球(B細胞)とTリンパ球(T細胞)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)が生まれます。

B細胞は抗原を認識すると形質細胞に変化して受容体を抗体として分泌します。

そして、T細胞は、ウイルスに感染した細胞などを殺すキラーT細胞と他の免疫細胞を活性化させるヘルパーT細胞に分かれます。

NK細胞はT細胞B細胞と異なり受容体を持たないリンパ球で、細胞の目印がないものやある種の糖の鎖をつけているものを手当たり次第に殺します。

なぜ“ナチュラル”キラーなのかと言うと、これはヘルパーT細胞などによる指示(=活性化)なしでもどんどん殺していくからです。


以上が免疫系の細胞です。今後、少しずつそれら個々について説明して行きたいと思います。
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2005年06月24日

シグナル説2 核膜輸送

細胞の中には核があります。私たちのDNAは核の中に収納されているのですが、私たちの体を作っているタンパク質は核の外の細胞質で作られます。

核の中のDNAから情報をもらって、核の外で設計図どおりにタンパクを組み立てるのですが、そのためには、DNAを読むタンパクを核内に呼び込み、DNAをRNAに読み替えてもらい、出来たRNAは核外に運ぶ必要があるのです。

私たちの細胞は常に核の膜(核膜)を通して大量の物質を交換しています。

シグナル説1 小胞体輸送」の時にも少しお話しましたが、細胞膜の穴に比べ、核膜の穴は大きくて、結構大きなタンパク質でも通ることが出来ます。

核膜にある穴を核膜孔と言うのですが、これが面白い形をしています。

核膜孔

細胞質側には8本の糸状の物、膜中には穴、核の内側の方にはバスケット状の物があります。

勿論、これとまったく同じ形をしているわけではないのですが、似たような形をしています。

かならずバスケットが核の内側の方を向いています。


このように、形は上下非対称ですが、内→外も外→内も両方通すと考えられています。

ただ、まだ完璧には証明はされていません。どうして対称な形をしていないのか?、や、どうして一方通行にして両側に作らなかったのか?、などは分かっていません。



核膜孔は大体ヒトの細胞であれば核一つに対して3000個程度あります。といっても、あまり実感はわきませんね。

これは結構多い数ではあるのですが、この核膜孔、一秒あたり最大で数十〜数百のタンパクを通しています。多忙なようです。


この核膜孔は大きな穴で、小さい分子(9nm以下)であれば、そのまま自由拡散します。

水や小さめのタンパクなら普通に通ります。まぁザルを水が通るような感じです。

この穴は最大で39nm、小型のウイルス(ノロウイルスなど)くらいは通過できます。

ただ、これくらい大きなものは“輸送タンパク”が必要になります。

なぜ輸送タンパクが必要かと言うと、この穴の中心部には疎水性の“網”があるんです。まぁでも、結構柔軟な網です。

核は二重のザルのようなものです。

大きな穴があって、その穴に小さな網(膜?)が張ってある感じです。


9nmより小さいものであればその網を通過できますが、大きいものはその網を変形させて通らないといけません。

変形させるとはいっても、強引に破るんじゃないんです。


“疎水性”の網と書いたとおり、網の“糸”は疎水性の結合なんです。

ですから、疎水性の物質が来ると、網と融合するんです。その働きをするのが輸送タンパクです。

輸送タンパクの表面の一部は疎水結合が可能なように出来ていて、網と融合して、す〜って通っていきます。



次に“輸送タンパク”について少し詳しくお話します。

輸送タンパクには大きく分けてexportinとinportinがあり、名前の通り核内→核外がexportinで核外→核内がinportinです。

また、このタンパクの活性を調節するタンパクがRanタンパクで、これはGTP、GDPと結合します。

GTPとはGuanosine TriPhosphateの略でグアノシン三リン酸。三つのリン酸を持っています。そのリン酸一つが取れてGuanosine DiPhosphateとなったのがGDPです。


GTPと結合したRanタンパクをRanGTPと表わします。



核膜輸送の仕組みはこうです。

核膜輸送

まずexportinはRanGTPと結合することで荷物と結合できます。

まずはこの3点セットで核膜孔を通ります。

通った先の細胞質側にはGTPからリン酸を一つ奪う酵素があって、GTP⇒GDPになります。

そうなると、Ranタンパクはexportinと結合できなくなり、そうすると荷物が離れるのです。

そして、単体になったexportinは再び核膜を通過して核内に戻り、RanGTPと結合することで荷物と結合し・・・(繰り返し)



次にinportin。

inportinは何もついていない状態で荷物と結合し、核膜と通過します。

核膜を通過するとRanGTPに結合されて、nportinは荷物と結合できなくなります。

そして、RanGTPとinportinの複合体は核膜を通過して細胞質側に戻ります。

そうすると、細胞質側ではGTPからリン酸を一つ奪う酵素が働き、GTPがGDPになってRanタンパクはinportinから離れます。そして、再び荷物と結合して・・・(繰り返し)

離れたGDPは他のタンパク質に誘導されて核内に戻り、リン酸化されてGTPに戻ります。


ポイントはRanタンパクに結合するGTPが細胞質側では脱リン酸化されてGDPになり、核内ではGTPであるということです。

つまり、GTP、GDPで核内外を認識しているのです。


これはこの核膜輸送以外にも使われています。一種のシグナルと言えます。



参考HP:理研
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2005年06月23日

免疫学の歴史

免疫シリーズ第1弾

免疫とは『疫病を免れる』が語源です。

人類は経験的に「一度かかったら二度目はかからなかったり軽い症状ですんだりする」ことに気付いていました。紀元前の記録にもあるくらいです。

ただ、それを応用した治療技術(ワクチンなど)が開発されたのはごく最近で、18世紀末以降です。

それ以前は病気が“病原微生物”によるものという認識すらなかったのです。

後で紹介するワクチンの発明者“ジェンナー”も当時の医学会からは認められませんでした。

よくヨーロッパ史の映画などでペストなどの患者から“血を抜く”光景が出てきますが、それは当時、病気は“体液のバランスの崩れ”が原因だと思われていたからです。

このような“治療”は宗教の影響が強い地域などで20世紀に入っても行われていたといいます。

また、患者の手当てや死者の埋葬を行っていた修道士の中に免疫を獲得して伝染病にかからない人が現れたのですが、このような現象は“神のご加護”だと言っていたようです。

病気が病原微生物によるものではないかという考えは17世紀から18世紀辺りから出始めたのですが、顕微鏡の精度の問題で、実際に病原菌が見つかるのは19世紀末になります。

19世紀末にはコッホによって結核菌・コレラ、北里によって破傷風菌・赤痢菌などが発見されます。


治療の分野においては、18世紀末にジェンナーによる種痘の開発、19世紀末のパスツールによるワクチンの開発などがあります。

ジェンナーは、牛痘(本来は牛の病気)という病気にかかった人が天然痘に対して強いことに着目し、牛痘患者の“膿”を注射するという大胆な方法で天然痘への免疫を作ることに成功しました。

これはいわゆる“ワクチン”と同じ効果がありますので、ジェンナーをワクチンの開発者とする人もいます。

一方、ジェンナーの死ぬ一月前に生まれたパスツールは、病原体を“弱毒して”注射しました。

これが本格的なワクチンの始まりです。

パスツールはニワトリコレラや狂犬病のワクチンを作りました。

因みに、ワクチンと命名したのはパスツールですが、ワクチンの名前の由来は“牛”です。


ワクチンの開発により、天然痘は25年前に撲滅されましたが、いまでもテロリストに“生物兵器”として使われる恐れがあると言われています。

実は、この生物兵器「天然痘」の歴史は古く、スペインの中南米攻略にも貢献したと言われています。

それが意図的なものであったものかは知りませんが、西洋人が持ち込んだ天然痘の蔓延によって、民衆はもとより、国王まで死んでしまったというのは事実のようです。
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シグナル伝達

膜のときにお話したとおり、膜は親水-疎水-親水のサンドイッチのような構造をしており、内側に大きな疎水部分をもつので、イオンや親水性の物質は通過することが困難です。

そのため、イオンや親水性の物質による情報伝達(シグナル)は細胞膜に浮いた膜タンパクの一種である受容体タンパクで受け入れます。

一部には疎水性の伝達物質(シグナル分子)もあって、それは膜を透過できる(受容体は細胞内にある)のですが、殆どのシグナル分子が親水性で受容体は膜にありますので、今回はシグナル分子が親水性であるとして話を進めさせていただきます。



受容体は特定のシグナル分子と結合することで膜の内側へ変化を生じさせ、この変化が細胞内で増幅されて様々な現象を誘導しています。

この機構は生物の多細胞化には必須の機構で、これによって多細胞生物は“細胞の社会”をコントロールしています。


まず、シグナル分子についてです。

シグナル分子には、細胞から放出された後、

1.血液などに乗って遠方まで到達するもの(ホルモン)

2.放出されても近隣の細胞までしか届かないものも

3.神経のシナプスのように狭い間隔の間を伝わるもの

4.細胞膜上に存在して接触している隣の細胞にしか伝わらないもの

などがあります。


それぞれが状況によって使い分けられています。

発生の時などは4の接する細胞間のシグナル伝達がかなり利用されていますが、体が大きくなると、血液や体液を利用した1や2の伝達が多くなります。



また、同じシグナル分子を受容しても、細胞によって異なる反応が生じることは珍しくありません。

これは、シグナル分子は単なる仲介であって、反応とは無縁であることを示しているといえます。


また、細胞は多数のシグナルを“組み合わせ”として認識しており、数百種類のシグナル分子で数百万通りの情報を認識できるようになっています。

特に、高等生物の場合は、その巨大な細胞社会を成り立たせる為に、このシグナルを生存条件にしています。

つまり、決められたシグナルがない場所では生きていけないのです。

もし、決められたシグナルが受信できない環境に追い込まれたら、細胞は自殺します。

これによって、細胞は決められた場所(環境)にだけ存在するようになるのです。

まぁ私たちでいう空気みたいなものです。地球の空気のないところでは生きていけませんよね。



一方、受容体の方ですが、受容体にも様々な種類があります。

1.シグナル分子が結合することで受容体の構造が変化し、入口が開いてカリウムイオンなどの小さなイオンを通すもの

2.シグナル分子が結合することで受容体の構造が変化するなどして細胞内のタンパク質と相互反応し活性化させるもの

3.受容体に結合したシグナル分子同士がくっついて受容体同士を近づけることにより細胞内で反応を起こすもの

などがあります。


1,2はまぁ何となく分かるでしょうけど、3は結構凄いです。今回は3だけ説明します。

3はあまりにも間接的だったため、初め、機能がよくわかりませんでした。

受容体の構造を調べても、膜の内側の方にリン酸化酵素がついているのはわかったのですが、膜の外側から内側に情報を伝える方法が見つからなかったのです。

つまり、その受容体はシグナルを認識しても特に変化が生じないのです。


ところが、調べていくうちに面白いことが発見されました。

その受容体は2本で一組になって情報を伝達していたのです。

シグナル分子と結合した二つの受容体が別々に膜上を漂っているとします。そして、偶然二つが近付いた際にシグナル分子同士が相互反応して結合したとすると、二つの受容体がちかくで固定されることになるのです。

このように、シグナル分子同士が結合するように出来ていると、受容体の膜の内側にあったリン酸化酵素が活躍できるのです。

つまり、細胞外でシグナル分子につなぎとめられたこの二本の受容体は、細胞内ではお互いにリン酸化しあうのです。

そのリン酸化によって情報を下へ伝えていたのです。



以上がシグナル伝達の一番基礎の部分です。中途半端ですが・・・

このようにシグナル分子と受容体の結合によって膜内に情報が伝えられるのですが、伝えられた情報は受容体→A→B→Cのように連鎖的に伝わりながら増幅されます。

シグナル-受容体は限られた数しか用意できませんので、細胞内で必要な量まで増幅されているのです。

この膜の内側の増幅の方法も面白いのですが、これは複雑で、文章ではかなり苦しくなります。

私の表現力では無理です。

それはまた別の機会に少しずつでもお話したいと思います。

シグナル伝達というのは情報の伝達ですので、体のあらゆるところで行われています。
そのため、神経系から免疫系まであらゆる部分で受容体やシグナルは活躍しています。

ですから、これ以降はその都度紹介させていただくことにします。
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2005年06月21日

シグナル説1 小胞体輸送

※ここでは細胞内の小器官の説明はしていないので、それを知らないとイメージがわきにくいと思います。すみません・・・。

タンパク質は細胞質で作られるのですが、その後、細胞質内、核内、細胞外、細胞膜表面、ミトコンドリア内などそれぞれ決められた場所に運ばれていきます。


では、どのようにして細胞は行き先を判断しているのでしょうか?


実は、タンパク質のアミノ酸配列の一部が宛先になっているのです。

このような考えをシグナル説といいます。


特に有名なものが小胞体行きの宛先です。小胞体とは、細胞内にある“泡”のような器官です。

細胞膜表面に出るタンパク(膜タンパク)や細胞外に出るタンパクは、最初に読み取られる部分=最初に作られるアミノ酸の列が特別な配列(シグナル配列)をしていて、それを認識したリボソーム(アミノ酸を並べるタンパク)は小胞体へ向かいます。


では、なぜ小胞体に移動する必要があるのでしょうか?


それは、タンパク質が細胞膜を通過するのがきわめて難しいからです。

タンパク質は形を作ってからではかさばるので細胞膜を通過できません。

これは、細胞の内部と外部ではイオンバランスなどが異なり、細胞膜には大きな穴が開けられないことが理由です。形が出来たタンパク質が通れるような穴をあけるとイオンの移動などが起きて大変なことになります。


そこで、細胞は小胞体を利用するのです。

なぜ、小胞体なのかと言うと、膜で覆われた小胞体の内部は細胞の外部と見れるからです。

膜の構造の時に説明したとおり、膜は流動性があり、酵素を用いれば分裂や融合は容易に出来ます。ぺたっと細胞膜にくっついて融合し、膜外と小胞体内をつなげることができるのです。

つまり、◎の内側の○の中は外側と見ることも出来るということです。



そこで、リボソームは、タンパクを作り始め、小胞体行きのシグナルを認識したら、小胞体に頭を突っ込んで、小胞体の中にアミノ酸の糸を注入していきます。そして、小胞体の内部でタンパク質の形が形成されるのです。


その際も、細胞質-小胞体間で物質の移動が行われないようなシステムがとられています。

つまり、細胞質内の物質を小胞体内(≒外)に出さないような仕組みです。

アミノ酸の鎖が通る穴はリボソームが乗らないと開きません。つまり、外側からふたがされるまで開かないのです。

そうやって、小胞体にアミノ酸の鎖が注入され、小胞体内でタンパク質が形作られます。

そして、タンパク質を入れた部分が分離され、移動可能な小さな小胞体になります。まぁ“小包”みたいなものです。

その“小包”にも宛先が付けられており、多くはゴルジ体と呼ばれる器官に移動し、膜が融合してゴルジ体に取り込まれます。

ゴルジ体で修飾など最後の手直しを受けて、再び切り離され細胞膜などへ向かいます。細胞膜へついたら膜が融合して、タンパク質が放出されたり、膜にくっつけられたりします。



一方、小胞体を使わない輸送もあります。

これはミトコンドリアや核に運ばれるものです。ミトコンドリアの膜や核膜は直接タンパク質が通れるのです。


核膜に関しては単に“穴が大きい”のが理由です。タンパク質はある程度構造をとっていても入れます。


一方、ミトコンドリア行きのタンパク質は、分子シャペロンによって、複雑な構造がとられないようになっているようです。

ミトコンドリアにタンパク質を押し込む機構は詳しくは分かっていませんが、分子の自然な動きを利用していると言われています。

どういうことかというと、分子シャペロンなどによってミトコンドリアまで着いたアミノ酸の鎖(ポリペプチド)は、ミトコンドリア表面のタンパク質に誘導されミトコンドリア上の穴にポリペプチドの先端を突っ込みます。

そのあと、水の熱運動などでポリペプチドがふらふら動き、先端がちょっと先まで行くと、入ったポリペプチドにある種のタンパク質がくっついて元に戻らないようにします。


手がギリギリで通る穴の開いた箱の中に石が入っているとき、その石をつかむと手は取り出せませんよね。それと同じ仕組みです。

入った部分は出られないので、ふらふらしているポリペプチドは自然と内側へ内側へ入っていくことになるのです。

まぁ核膜やミトコンドリアへのタンパク輸送についても、よくわかってないことが沢山あります。


とりあえず、アミノ酸配列の一部が“宛先”になっていて、それを酵素などが認識して運んでいるのは確かです。


以上、シグナル説と小胞体輸送でした。
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2005年06月20日

DNAとRNA

セントラルドグマ」の時に説明しましたが、一部のウイルスを除いた全ての生物(ウイルスを生物と呼ぶとして)はDNA→RNA→たんぱく質の流れ(=セントラル・ドグマ)で生命を機能させています。

DNAとRNAの構造的な違いは「DNAの構造」でお話したとおり、RNAから酸素が一つ抜けたものがDNAです。

また、もう一つの違いとして、DNAを構成する塩基はC、G、A、Tの4種であるのに対し、RNAはC、G、A、Uで出来ています。(C=シトシン、G=グアニン、A=アデニン、T=チミン、U=ウラシル)

つまり、RNAではウラシルUの所がDNAではチミンTになっているのです。


では、何故RNAではウラシル(U)なのにDNAではチミン(T)になったのでしょうか?



これの説明にはまず、DNA以前にあったと言われる(実はまだ分かっていません)RNAワールドについて説明する必要があります。

RNAワールドとはRNAが遺伝物質として働いていた世界です。

なぜこのような世界が考えられるかと言うと、一番の理由は単純に“RNAは生成しやすい”からです。

RNAは小さな有機物が紫外線などを受けることによって生成することができるのです。

ところが、DNAはそう簡単には合成できません。基本的にRNAからしか合成できません。

このDNAの合成の難しさから、最初の生命はRNAを遺伝物質にしていたと考えられるのです。


また、RNAは自らが酵素の役割も果たすことが出来るので、一番初めはRNAがRNAによって複製されていたかもしれません(確認はされていません)。



ところが、RNAは自らよりも優秀な酵素を見つけたのです。

たんぱく質です。

偶然、たんぱく質を合成できるRNAが生まれ、それの方が効率がよかったためにそれが生き残ったと考えられます。

そして、RNAは自らより優秀な遺伝物質も見つけたのです。

DNAです。

偶然、RNAの一部が還元され、酸素がとれDNAが生まれました。そのDNAは安定的に二重結合をつくり、二本の鎖がお互いに情報を補い合うことで配列の保存能率を上げた(※)のです。


そして、問題のウラシルです。

RNAは今でもウラシルを用いていますが、DNAはウラシルではなくチミンを使っています。
単純に考えると、わざわざ二種類の物質を使い分けるのは面倒です。

これの答えは次に示す構造にあります。

核酸の塩基.jpg

一番下の段のウラシルとチミンをよく見比べてください。

ご覧のとおり、メチル基(CH3)がついているかいないかの違いです。

つまり、ウラシルからチミンは合成できるのです。

そのため、ウラシルをチミンに変化させるのは大した仕事ではないのです。


ところが、ウラシルをチミンにすることによって得られる効果は大きいのです。

今度はウラシルとシトシンを見比べてください。

なんと、シトシンをデアミネーション(アミノ基NH2を取り除く)することでウラシルが生成されるのです。

つまり、RNAの「A」「U」「C」「G」では時々「U」が「C」に変わってしまうかもしれないのです。

そこで、「U」を「T」に変化させたのです。

そうすれば、「C」が「U」になっても「C」に戻すようにすることができ、遺伝情報を守ることが出来るのです。

勿論、C→U→Tや、C→メチル化→Tのように二段階でTに変化することは出来ますが、これは2段階なので中間で修正ができるのです。

保存することが役割である遺伝情報としてはウラシルよりもチミンの方が優秀だったのです。


こうなると、更に疑問になることがあります。

何故RNAはウラシルのままなのか、ということです。

と、実は知りません。すいません。

たぶん、RNAは、厳重保存の“遺伝情報”ではなく、すでにハンディーな“設計図”の役割になっているので、ウラシルをチミンに変える必要がなかったのではないでしょうか。

エネルギーを節約しているのかもしれません。



※DNAの修復
修復機構は数多くあるので、修復機構についてはまた次の機会に説明しますが、今回は、“二本鎖”であることがいかにDNAの保存能力を高めているかを説明します。

DNAは4種理の塩基ATCGを持っていますが、A→T、C→Gとしか結合できません。
つまり、片方の鎖が決まれば、もう片方の鎖は決まるのです。

3)ACTGGTCTGT(5という配列に対しては
5)TGACCAGACA(3という配列がもう片方に必ず来ます。

しかも、DNAは対象ではないので、2本が逆向きに重なれば、読み方は一つだけになります。

3、5というのはDNAの炭素の番号で、起点から何番目の炭素かという意味です。

ribose.jpg

この図の右がDNAなのですが、その3とついている炭素と5とついている炭素をリン酸がつないでDNAはつながっています。





DNA.jpg
DNAの構造はこんな感じです。

DNAは二本鎖ですが、複製されたDNAの片方はもとのDNAです。

つまり、二本鎖が二つに別れ、それぞれに当たらし鎖がつくことで二組のDNAが出来るのです。

しかも、古い鎖の方には一部にメチル基の修飾があり、その修飾が目印になって新旧を見分けることが出来ます。

そのため、DNAの合成のミスに気付くことができるのです。

このように二本鎖であることで配列の保蔵能力を格段にあげることができるのです。



◇参考図書(amazonへのリンクです)
DNA (上) (ブルーバックス)

DNA (下) (ブルーバックス)

DNA複製の謎に迫る (ブルーバックス)



posted by new_world at 20:07| Comment(5) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月19日

双子のヒヨコは生まれない

人間って双子が出来ますけど、ニワトリには双子が出来ません。

ちょっと不思議な感じがします。

人間の卵細胞は結構分裂した後で分離してもちゃんと成長しますし、牛などでも、受精卵を取り出して割って、別の牛に着床させてクローン(強制的な双子)を作ったと言う話を聞いたことがあります。

哺乳類では初期の受精卵であれば分裂させてもそれぞれが成長して行くんです。

ところが、カエルの卵から二匹のオタマジャクシが出ることはないんです。


この理由は簡単です。

哺乳類と異なり、魚類や両生類、爬虫類や鳥類は、卵を“産む”からです。

つまり、卵の中に確保されている栄養が限られているのです。

卵には一匹分の栄養しか入っていません。哺乳類のように母親から必要なだけ供給されるのではないのです。よって、双子が生まれないような仕組みが出来ています。


細胞の分化(この時点では大まかな役割決め)が最初の分裂の際にはすでに生じていて、それを切り離してしまうと、完全な胚が形成されなくて死んでしまうのです。

一方、人間であれば、卵細胞が何回か分裂した後で分化が起きるので、双子や三つ子が生まれるのです。
posted by new_world at 23:01| Comment(5) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月17日

生体膜2 フリップ・フロップ  (+マクロファージ)

※最後の3分の1は免疫細胞マクロファージの話です。

細胞膜「生体膜1」で書きましたが、二重の膜の表と裏は非対称です。

細胞の内側と外側の膜を構成している脂質の組成が違うのです。


今回取り上げるのはフリップ・フロップという現象で、この膜の非対称性に大きく関わりのある現象です。


フリップ・フロップとは、二重膜の内側の膜と外側の膜で脂質が入れ替わることで、比較的高頻度で行われています。(因みに、フリップが細胞の外側から内側、フロップが内側から外側への移動です。)

ただ、このフリップフロップはエネルギーを結構食います。

「生体膜@」で書いたとおり、脂質二重膜の中間部は向かい合った疎水部分です。しかし、脂質の頭部は親水部分なので、内側の膜と外側の膜を移動する為には親水部分が疎水部分の中を通らないといけなくなります。

水に浮いた油を容器のそこまで持っていくには力を加えないといけません。それと同じで、内側の膜の脂質と外側の膜の脂質を入れ替える時にも力、エネルギーが必要なのです。


では、なぜエネルギーを使ってまでフリップ・フロップをする必要があるのでしょうか?

・・・実はあまりよく分かっていません。



今回は分かっている中から2つだけフリップ・フロップの効果を挙げておきます。

まぁ簡単に言うと、『変化しちゃったのを戻す』のと『あえて変化させる』ことです。

まず挙げられるのが『膜の形成』です。

膜の主成分である脂質は細胞質内のタンパクによって作られます。そのため、膜の材料は細胞の内部から運ばれてくるのです。

膜は二重になっているため、細胞の内部から運ばれてきた脂質を外側の膜へも運ばないといけないんです。


そこで、ある種の酵素が内側の膜の脂質を外側の膜へ移動させていると考えられます。(膜形成の詳しい機構は分かっていません。)


もう一つは、ある種の細胞内情報の外部への伝達です。

有名なのが“細胞が自殺する時”の膜の変化です。

細胞は、外側の膜に出ている脂質を変化させることで、『自分を殺してくれ』と言うんです。

この方法は、次のようなものです。

脂質ホスファチジルセリン(PS)は普段は内側に分布していて、偶然外側に出てきても酵素により内側の膜に引き戻されます。

ところが、細胞死をする細胞ではその酵素が不活性化して、この脂質PSが外側の膜に出てきても内側の膜に戻っていかないのです。

しかし、酵素の働きなしで偶然内側の膜から外側の膜に出ていく確率はかなり低いです。

そこで細胞は、別の種類の酵素を活性化し、2層の膜の脂質をランダムにどんどん入れ替えていきます。

それによって、本来は外側の膜には殆どないその脂質PSが外側に多く出てくるのです。


それを認識したマクロファージ(貪食細胞※)などの細胞がこの細胞を食べてしまいます。


勿論、その脂質PSがその変化で外に出される為だけに内側にいるわけではありません。

その脂質、ホスファチジルセリンは、主要なリン脂質の中で唯一マイナスの電気を持っていて、この脂質が多く分布する内側はマイナスの電気を持つことになります。そのため、プラスの電気を持った物質をつなぎとめておくことが出来るのです。

また、神経細胞における働きも注目されており、アルツハイマーなどの予防のサプリメントとしてホスファチジルセリンを服用する人もいるようです。(これは詳しくは知りません)


※マクロファージ(貪食細胞・大食細胞)
免疫系の細胞の一つで、ほぼ全身に存在します。名前の通り、よく食べる細胞です。

肺では呼吸によって侵入してきた異物を食べていますし、肝臓や脾臓では送られてきた損傷した細胞(寿命が尽きた血液の細胞や攻撃を受け弱ったウイルス・細菌など)を食べています。

マクロファージなどによる免疫は自然免疫と言われ、多くの人が思い浮かべる免疫とは異なります。

普通の人が考える免疫は予防接種やアナフィラキシーショックなどで登場する獲得免疫の方でしょう。

獲得免疫は後天的に獲得する免疫です。過去にかかった病気などを記憶しているものです。

ただ、獲得免疫は記憶している特定の相手には強力な攻撃能力を持つのですが、それ以外には攻撃しません。

それに対して自然免疫は獲得免疫ほど強くはないのですが、様々な異物に対し攻撃を加えることが出来ます。



なぜこの二つが存在するのかと言うと、より多くのものに対応するという目的はあるのですが、より重要なのは、仕事の分担があります。

獲得免疫は種類が多い為、普段は少しずつしか存在しません(そうでないと体中が免疫だらけになってしまいます)。

よって、対象の異物が入ってきてから増えていきます。

ただ、それでは遅いので、とりあえず初めのうちは、常時存在する自然免疫が対処するのです。


免疫についてはまた今度紹介したいと思っていますのでこれくらいにしておきます
posted by new_world at 03:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月16日

生体膜1 膜の構造

細胞の膜が何で出来ているかご存知ですか?

実は脂質です。

脂質とは脂肪酸(※)とグリセリン(グリセロール)(※)の化合物です。

細胞膜を形成している脂質の多くがリン脂質です。(以下、簡単のため、膜はリン脂質だと考えます)

リン脂質は2本の脂肪酸とグリセリン、リン酸+αで出来ています。

通常2本の脂肪酸のうち、一本は曲がっています。

ホスファチジルコリン.jpg

リン脂質は複数種類あり膜によって組成が異なります。この図は有名なリン脂質の一つであるホスファチジルコリンで、リン脂質(ホスファチド)にコリンという化合物がついたものです。


まぁでも、こんなことは今回はあんまり重要じゃありません。(なら書くなって感じですが・・・)


重要なのは、細胞の膜や細胞内小器官の膜は全て脂質の二重膜になっているということです。

リン脂質の“頭”(リン酸+α)は親水性なのですが、“2本のしっぽ”(脂肪酸)は疎水性です。

生体内は水分が多いので、疎水性の部分が向かい合う形で疎水部分を隠して2枚1組で並んでいます。

この並びの形成はごく自然なもので、容易にでき、比較的丈夫で、しかも、破れてもすぐに直るため、生物は生体膜に脂質を利用しているのだと考えられます。

「二重層」と聞くと作るのが面倒くさそうですが、実際は簡単に出来るのです。ただの水の中に入れるだけでも二重層になるそうです。

そして、生物がこの脂質の二重膜を生体膜に利用した大きな理由がもう一つあります。

『流動性』です。

細胞膜.jpg


細胞膜はこんな感じなのですが、見たら分かるとおり、リン脂質同士は互いに独立していて、その間に強い結合はなく、流動的、つまり、リン脂質は動いているのです。

しかも、結構速いです。

膜の脂質の組成にもよりますが、小さな細菌くらいであれば、2秒で一周します。



先ほど“破れても直る”と言ったのはこの流動性があるためです。開いてもすぐ閉じるのです。



また、この図にある“たんぱく質”(膜タンパク)なども動いています。

先ほどは“膜は脂質でできている”と堂々といいましたが、実際は、たんぱく質は質量が大きいので、質量計算では半分近くが膜タンパクになります。

この膜タンパクも「外部の情報・刺激を細胞内に伝える」などの極めて重要な機能を持っています。しかも、種類も豊富で、私たちのDNAが作り出すたんぱく質の30%が膜たんぱく質だと言われています。

でも、それはまた別の機会に紹介したいと思います。



生体膜を構成する脂質は(リン脂質以外も含め)数千種類あります。

しかも、それぞれの膜で組成が異なります。

更に、細胞の内側と外側でも脂質の組成が異なります。


これだけ他種多様な膜が存在していると言うことから、膜というものが単なる境界ではないことは明らかです・・・とはいっても、実際どのような機能があるのかはあまりよく分かっていません。

まぁそれでも分かっている範囲で数回に分けて生体膜について書いて行きたいと思います。




※脂肪酸とグリセリン
脂肪酸は長い炭化水素の鎖を持つカルボン酸です。(つまり、脂肪酸はカルボン酸の一種です)

カルボン酸は“カルボン”+“酸”で、炭素(カーボン)の酸です。酢酸などがカルボン酸です。(カルボン酸の基本構造は後であります)

化学結合を説明する際にはよく“手”を使いますね。
炭素Cは4本の手、酸素Oは2本の手、水素Hは1本の手をもっていると考えます。

炭化水素とは基本的に炭素同士がお互いに手を結んで並んでいて、その残りの手に水素がついたものです。

この端っこにCOOHが付いた物がカルボン酸で、炭化水素が長いもの(COOHのCも含め炭素4つ以上)だと脂肪酸です。



一方、グリセリンはアルコールの一種です。

アルコールとは炭化水素にOHがついたものです。

グリセリンはOHが三つついたアルコールで、構造は下の図です。一応説明しますが、Cは省略されていて、角の部分がCを示します。ここにはCが3つ略されています。

グリセリン.jpg

グリセリンは保湿成分としても有名で、化粧品などに利用されていますね。
posted by new_world at 12:40| Comment(4) | TrackBack(1) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月14日

アンフィンゼンのドグマ

前回のセントラル・ドグマとドグマつながり(?)のアンフィンゼンのドグマです。

前回言い忘れていましたが、ドグマとは“定説”と言った感じの意味です。宗教では教義と言う意味になりますが、勿論このドグマは宗教とは関係ありません。



このアンフィンゼンのドグマは、『アミノ酸の並び方が決まれば、たんぱく質の形は決まる』というものです。(たんぱく質はアミノ酸の連なった鎖です)

これを提唱したアンフィンゼンは1973年にノーベル賞を受賞しています。


まぁ、当たり前のようなことですよね。でも、このドグマは正確ではありませんでした。

確かに、これは間違ってはいないのですが、実際はこんなにシンプルな機構ではなかったのです。

アンフィンゼンは実験で、アミノ酸の鎖が自然と折りたたみたんぱく質になっていく、と証明しました。

しかし、これは試験管の中での話だったのです。


後の研究で、生体内では分子シャペロンがたんぱく質の折り畳みを行っていることが明らかになりました。

つまり、自然には折りたたまないと言うことです。


彼が間違えた理由は、生体内条件を満たしていなかったからです。

たんぱく質の合成が行われる細胞質内では高い濃度で様々なたんぱく質が存在します。

その為、互いに影響しあって、凝集してしまうんです。



だから、実際には分子シャペロンでくっつきやすい部分(疎水部分※)を保護する必要があるのです。


勿論、出来上がったあとには分子シャペロンは外れますので、その段階では安定な状態でないといけません。

つまり、完成形はそのアミノ酸配列のその環境でも安定的な形ということになります。

それが複数通りあることがあるんです。

プリオンなどがいい例です。悪性プリオンと正常プリオンの違いは構造です。ですが、両方の構造とも生体内で維持できるものです。


つまり、アンフィンゼンのドグマは、基本的に正しかったのですが、それを実行する為に細胞はかなりの努力をしているということです。


※疎水部分
水の中では疎水部分は水と反発しあって疎水部分同士で集まろうとします。水の上(中)で油が球状になるのと同じです。出来るだけ体積を小さくしようとするのです。

アミノ酸にも疎水的なものがあり、それらは水分の多い細胞質内ではお互いにくっつきあおうとします。

決められたものにはくっつかないといけないのですが、余計なものとはくっついてもらっては困ります。そこで、分子シャペロンがポリペプチドを保護して正確な形へ導いていくのです。
posted by new_world at 16:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

セントラル・ドグマ

生物学の用語にセントラル・ドグマというものがあります。

なんかいかつい名前(?)ですが、難しいことではありません。

DNA→RNA→ポリペプチド→たんぱく質、という流れのことです。


1.転写
DNAは核の中にあります。核の中でDNAはRNAに読みかえられます。

2.スプライシング
そして、遺伝子の部分だけが抜粋されます(スプライシング)。

遺伝子だけ、というのは、DNAにはたんぱく質の設計図ではない部分が沢山あるからです。遺伝子とはたんぱく質の設計図の部分を言います。

3.翻訳(※)
スプライシングの後、RNAは核外に出ます。そして、RNAにリボソームという小器官がくっつき、設計図どおりにアミノ酸を並べていきます。→ポリペプチド

4.フォールディング(折りたたみ)
翻訳の際には出来たてのアミノ酸の鎖(ポリペプチド)に分子シャペロン(※)が所々くっついていき、アミノ酸の鎖(ポリペプチド)を正確な構造に折りたたみ、たんぱく質にします。

これがセントラル・ドグマです。


※翻訳
アミノ酸は20種類ありますが、DNAから読まれたRNAの塩基は4種類しかありません。

ですので、4進法で20種を識別するには3桁必要です。

よって、塩基が3つ集まって一つのアミノ酸を導きます。


その組合せが次の表です。(表ではアミノ酸は略記号で書かれています)

コドン表.jpg


こんな表で生物が組み立てられているかと思うと少し味気ないですね。

この表のような塩基を3つ一組にしたものをコドンと言い、その一覧表をコドン表と言います。

コドン表の中にアミノ酸を導かない3つの組み合わせがあります。

stopと書かれている部分です。

これはストップコドン、終止コドンと呼ばれ、遺伝子の終点を示しています。


また、遺伝子の開始点は通常メチオニンで示されます。Metと書かれている部分です。これを開始コドンと言います。

ただ、この端っこのメチオニンは要らないので酵素によって切り取られてしまいます。
どうしてメチオニンなのかは調べましたがわかりませんでした。

これまででてきた遺伝情報のコピーであるRNAをmRNA(メッセンジャーRNA)と言います。

そして、このmRNAのコドン3つ一組を認識するのは、tRNA(トランスファーRNA:運搬RNA)と呼ばれる小型のRNAです。

このtRNAはこんな形をしています。

tRNA.jpg


tRNAの下の丸いところ(Anticodonの部分)がmRNAのコドンを認識します。「認識」というは、3点で「結合」することです。

DNAが二本鎖を作るのと同じ「結合」です。

RNAもDNAほどではありませんが二本鎖を作る能力があるんです。

そして、上に伸びた赤い部分の先にアミノ酸がついています。

このtRNAをリボソームが呼び込み、組み合わせてアミノ酸の鎖を伸ばしていきます。

まぁ実物のtRNAは、この十字架みたいなものが折りたたんだ形をしています。



※分子シャペロン
シャペロンとは西洋の貴族社会における教育係のようなもので、舞踏会などにデビューする貴族の若い娘に付添って作法などを教えるおばさん(?)です。

分子シャペロンはできたてのポリペプチドに付添って、ちゃんとしたたんぱく質になれるように(=きちんとした形を取れるように)導くたんぱく質です。

因みに、ポリペプチドとたんぱく質の違いは、形です。

ポリペプチドという場合は単なるアミノ酸の鎖で、ポリペプチドが形を取っているものをたんぱく質と言います。

ポリペプチドは1次元で、たんぱく質は2次元・3次元の構造と言うことです。


◇参考図書(amazonへのリンクです)
DNA (上) (ブルーバックス)

DNA (下) (ブルーバックス)

DNA複製の謎に迫る (ブルーバックス)



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2005年06月13日

優性形質

形質とは体の特徴や性質で、遺伝する形質を遺伝形質を言います。

そして、遺伝形質のうち、互いに対を成す遺伝形質を対立形質と呼びます。

まぁ対をなすっていっても分かりにくいですね。たとえれば、有名な「メンデルの遺伝の法則」に出てくるエンドウの種子の「丸型」と「しわ型」などが対立形質です。


対立形質のうち、優先的に現れる形質を優性形質、現れない形質を劣性形質といいます。

日本では優性・劣性と訳されていますが、中国では顕(=めだった)性と潜(=ひそんだ)性と訳されています。

別に優性が優れているわけでも、劣性が劣っているわけでもないので、中国の方が的を射た表現だと思います。

まぁ目立っている方が有力、目立たない方は無力というイメージはどの国にもありますけどね。

因みに、英語ではdominant(=支配的な・有力な)gene、recessive(=逆行の・内向的な)geneと言います。


知っている方も多いと思いますが、優性-劣性形質として有名なものを10個挙げてみました。

1.つむじ
右巻きが優性で左巻きが劣性です。

2.巻き舌
巻き舌が出来る方が優性です。

3.耳あか
湿っている方が優性、乾いているのが劣性です。

4.利き手
基本的に、右利きが優性で左利きが劣性のようです。

5.髪の色
黒、赤、淡色の順で表現型が現れやすいです。(つまり黒が優性)

6.髪の形状
直毛が劣性です。巻き毛が優性です。

7.目の色(虹彩の色)
黒、茶、青、灰色の順で表現型が現れやすいです。(日本人は茶色)

8.まぶた
二重が優性で一重が劣性です。

9.耳たぶ
福耳(耳たぶが離れている)が優性、平耳(耳たぶが顔についている)が劣性です。

10.親指
親指がそらない方が優性、親指がそる方が劣性。

まぁこんな感じです。

まぶた等は有名ですが、親指とかは案外知られていないのではないでしょうか?
どういう変化で親指がそるようになるのかは、たぶん、誰も調べてないと思います。

因みに、私の親指は、右はそりませんが、左はそります。何ででしょうね・・・よくわかりません。


あと、私の親は二人とも「二重まぶた」なのですが、子供は全員「一重」でした。
ちなみに、4人兄弟です。
単純に、AaとAaの組み合わせからaaが生まれたとすると、4分の1の4乗で、256分の1です。
不思議です。
まぁ実際は、様々な理由でメンデルの法則が綺麗に成り立つわけではありませんけど
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2005年06月09日

DNAの構造/RNAウイルス

DNAってどんなものかご存知ですか?

私も大学に入る前はDNAとRNAのちがいも分かってませんでした。(私、入試は物理で受験しました)

DNAというものはデオキシリボ核酸の略で、RNAはリボ核酸の略です。

“デ オキシ”というのは“酸素が抜けた”という意味で、DNAとRNAの違いは酸素一個分です。

まぁ鎖状なので繰り返しの一部分あたり一個の酸素です。

下図はDNA・RNAを作る糖であるリボース(左)とデオキシリボース(右)で、この二つの違いは五角形の右下の炭素についているのがOHなのかHなのかの違いです。

右側のOが抜けたHだけの方がDNAの素です。(これがつながって塩基がついたのがRNAやDNAができます。)

ribose.jpg

DNAにしてもRNAにしても、前回書いた通り、糖とリン酸の鎖の糖の部分に塩基がついたものです。

DNA.jpg




◎RNAウイルスについて
RNAも二本鎖を作ることは出来るのですが、DNAに比べ不安定で、安定的に長い鎖を作ることは出来ません。

ただ、一部のウイルスはRNAを遺伝物質として使っています(それ以外は全てDNAです)。

そのRNAウイルスは大きく分けて二種類あります。

RNAポリメラーゼという酵素を作るものと、逆転写酵素を作るものです。

この二つはウイルスの遺伝物質RNAの複製に関与する酵素で、RNAポリメラーゼはRNAからRNAを複製するもので、逆転写酵素はRNAからDNAを作るものです。

逆転写酵素で作られたDNAは宿主のDNAと一緒に複製されます。

なんでこんなことを説明したかというと、これがRNAウイルスのアイデンティティになるからです。

普通の細胞がDNAを複製する際には様々な修復機能が働きます。

ところが、RNAウイルスのRNAポリメラーゼにはその修復機能がついていないのです。

ですから、高頻度でミスが生じます。

一方、逆転写酵素の場合は、出来たDNAは宿主が複製するので修復機能が働くのですが、こちらは逆転写酵素にあえてミスを起こしやすい仕組みがあるのです。

どちらも、その酵素がミスを引き起こすのですが、逆転写酵素の方が積極的です。

勿論、ミスですからそんなに都合よく行くものではなく、多くはウイルスにダメージを与えます。

ところが、そのごく一部がプラスに働くとそれが生き残っていくのです。

ダーウィン進化といえます。

それに、ミスが起こりやすいといっても、1万塩基くらいのRNAウイルスで、1回の複製で1箇所程度です。


RNAを遺伝物質にもつ代表的なウイルスは、エイズウイルス、インフルエンザウイルス、SARSのコロナウイルス、狂犬病ウイルスなど。他にも、黄熱病やデング熱、日本脳炎、エボラ出欠熱の原因ウイルスなどもRNAを遺伝物質に持っています。





※RNAポリメラーゼ=『RNAのポリマー+ase』。
aseは酵素を意味します。ポリマー=重合体=同じものが繰り返し結合して並んでいるもの、です。

ポリマーのポリはポリエチレンのポリです。ポリエチレンはエチレンが繰り返し結合して並んでいるものです。

つまりポリメラーゼは「重合体を作る酵素」という意味です。

DNAを複製するものはDNAポリメラーゼです。ちなみにつづりは polymerase(=polymer+ase)です。

あと、RNAポリメラーゼはRNAを作るというのが定義なので、RNAポリメラーゼにはRNA→RNAを作るものとDNA→RNAを作るものがあります。

上で取り上げたのが前者で、転写で使うのが後者です。






※逆転写酵素=『転写の逆をする酵素』
転写とは単にDNAからRNAを作ることです。

アミノ酸の“一本鎖”であるたんぱく質を作る時は一度ハンディーな設計図となる“一本鎖”のRNAに読み直します。

これを転写といいます。

この逆の反応RNA⇒DNAを起こすので逆転写酵素です。



◇参考図書(amazonへのリンクです)
DNA (上) (ブルーバックス)

DNA (下) (ブルーバックス)

DNA複製の謎に迫る (ブルーバックス)



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DNAの収納

人間のDNAの長さをご存知ですか?

約1.8mです。これが直径0,000006mの核の中に入っています。

これは、直径6cmの球に18kmの糸をつめる様なものです。

野球のボールが直径約7cmですので、野球のボールに18kmの糸をつめていると考えてみてください。

その糸をほぐしたり戻したりしているのです。(たんぱく質を作る際には必要な部分がほぐれます。このしくみが面白いんですが、ちょっとややこしいので書くのは諦めます・・・)

それでいて絡まらないのですから凄いですよね。



クロマチン構造.jpgDNAはヒストンという円盤型のたんぱく質に(約1.7周ずつ)巻きついています。

これが沢山寄り集まって太めの糸を作り、これが更に折りたたまれて核の中にあります。(これらの形成方法についてはあまり分かっていません)

細胞分裂のときにはそれがぎゅっと集まって染色体が出来ます。

その染色体が22対と(性染色体)2本の計46本分で1.8mです。


凄いのは複製です。

DNA複製の時はこれが綺麗に複製されます。

細胞は毎秒1000塩基対(※)も複製する能力を持っています。

驚異的な速さです。

1秒に1000文字を解読するのも大変なのに、同時に同じものを作り並べているのですから・・・。

それでいてミスは10億塩基対に1つ程度といわれています。

しかも、そのミスも修復する機能がいくつも存在していて滅多にミスは見逃されません。

これだけを見ても、生物がどれだけ綺麗に出来ているかがわかると思います。



※塩基対
DNAは、リン酸という酸とデオキシリボースという糖が交互に連なった鎖の、その糖の部分に一つずつ塩基という物質がついてできています。

塩基は4種類(AGCTと略されます)あり、この塩基同士が相互作用をして2本のDNAをくっつけているのです。

ですから、塩基対の数はDNAの繰り返しの数ということです。

人間は30億塩基対の設計図を持っていますが、実際は両親それぞれから来た二組がある(二倍体)ので60億塩基対あります。

複製の際はこの60億塩基対を綺麗にすばやく複製します。


◇参考図書(amazonへのリンクです)
DNA (上) (ブルーバックス)

DNA (下) (ブルーバックス)

DNA複製の謎に迫る (ブルーバックス)



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2005年06月05日

生物の寿命について

私たち人間は平均寿命の極めて高い生物です。

長生きする種は沢山いますが、私たちほど安定的に生き残る種はいません。

屋久杉が何千年生きようと、それは何千何万もの中の1本に過ぎないのです。

最高年齢というのはその種においてほぼ一定なのですが、最高年齢に達する割合は環境によって変化します。

日本人の平均寿命は1世紀前までは40歳くらいだったのですが、今では80歳近くにまで達しています。

しかし、だからといって、1世紀前に90歳や100歳を越える人が居なかったわけではないのです。

江戸時代にも平安時代にも90を超える老人はいました。

ただ、今と違うのは90を越えるような人は殆どいなかったということです。

還暦(60)以降、古希(70)、喜寿(77)、傘寿(80)、米寿(88)、卆寿(90)、白寿(99)など沢山こまめに祝うのはそれだけ長寿が稀だったからです。古希の語源が『古来稀』であることからも分かるでしょう。

しかし、今の日本人であれば、親戚に1人くらいは90歳以上の人がいるものです。

日本の90歳以上の人口は100万人を越えています。

また、子供の生存率も同様です。

昔は子供がすぐ死んでいたので、日本ではとりあえず3年間生きたら祝い、そして、男の子なら5歳、女の子なら7歳で再びお祝いしました。

七五三です。

基本的に7歳までは子供は神の子であり社会の構成員ではないとまでされていました。

それくらいに不安定な生き物だったんです。


今の人間の平均寿命が極めて高いのは、生存率が高いからです。

世界の平均寿命は65歳程度、先進国で75歳弱、途上国平均も60歳を超えています。

勿論、感染症や食糧難の影響で平均寿命が40歳を下回る地域もあります。特にエイズの影響は大きいようです。


ただ、他種では生存率が全然違います。

よく自然をテーマにした番組で言われていますよね。『この何千匹の稚魚の中から大人になって戻ってくるのは数匹です』などと。

勿論、子供を少ししか生まないで大切に育てる種もありますが、それでも今の人間に比べれば遥かに低い生存率です。

しかし、生存率が低いから最高年齢が短いわけではありません。

猫や犬は20年弱しかいきませんが、他の種の中には人間に引けを取らない寿命の持ち主が沢山います。(そういえば、人間に飼われている動物の生存率は人間並みに高いですね。)

魚類では、うなぎや鯉は50年以上、キャビアの親のチョウザメは150年も生きたものがいるそうです。

両生類でもヒキガエルは30年以上

爬虫類ではゾウガメが150年以上生きます。

鳥類では、ワシやダチョウ、アヒルは50年ほど、スズメでも10年以上生きます。

哺乳類では、チンパンジーやオランウータンは60年ほど生きますし、サイやキリンも40年ほど生きます。データは少ないのですが、シロナガスクジラでは116年生きたものが見つかっています。コウモリも20〜30年ほど生きるそうです。

勿論、これらは全て最高年齢です。

繰り返しますが、人間と違い、他種の場合は、それ以前に死んでしまう個体が圧倒的に多いのです。ですから、平均寿命と最高年齢は天と地ほど違うのです。

人間のように最高年齢が平均寿命の1.8倍程度しかないというのはそれくらい生存に適した環境で生きているということですね。


寿命という点では、単細胞生物は面白いですね。

寿命がないんです。

基本的に、病気や環境の異常などによってしか死にません。

まぁゾウリムシなど、比較的高度な単細胞生物では遺伝子異常が蓄積し生体システムに不具合が生じて死んでしまう場合がある(=寿命がある)ようですが、機能の低い細菌などは基本的に寿命という概念はありません。

永遠の命を持っているといえます。

つまり、今私たちの体の中にいる大腸菌は私たちより長生きなのです。


大腸菌などの単細胞生物は、基本的に細胞分裂で増えます。

細胞分裂したら普通は均等に分かれますので、どちらが新しい個体かという区別はありません。

つまり、同じ年齢なんです。

だから、もし寿命というものが存在していれば、それは絶滅が予定されているようなものなのです。

あと、よくDNAの両端の“テロメア”の長さが寿命のカギだといわれますが、大腸菌にはテロメアがありません。

なにしろ、大腸菌のDNAは環状です。

端がないんです。


ちなみに、環状DNAでなくても、無限に増殖できるものはあります。

ガン細胞です。

ガン細胞がガン細胞たる所以は無限に増殖する能力を持っているということです。

しかも、生体システムのコントロールに関係なく増殖します。そして、生体システムに不具合を生じさせるのです。

しかし、ガン細胞とはいえ元々は普通の細胞です。

ガン細胞になったらDNAが環状になるわけではありません。

テロメアを伸ばす仕組みがガン細胞にはあるのです。


テロメアーゼというテロメアを伸ばす酵素です。

この酵素は生殖細胞の発生などには利用されています。

当たり前ですね・・・細胞を0歳にリセットされる為に使うのです。リセットしないと生殖細胞の意味がありません。

あと、血液中の細胞を作り続ける造血細胞などにも同じ酵素が少量ながら存在します。


因みに、植物細胞ではテロメアーゼが広く存在し、何千回何万回もの細胞分裂を行うことが出来ます。

そして、テロメアーゼにより再生しているので、植物の生殖能力は老化しませんし、組織の老化も少ないです。

樹齢1000年の杉も樹齢100年の杉も同じような葉をつけています。

殆どの種で年齢に応じた繁殖能力の変化はありません(一年草などは1回しか繁殖能力がありませんので比べようがありませんけど)。

確かに、テロメアーゼを用いたテロメアのリセットは細胞の長命化には役に立ちますが、テロメアーゼを持たないからこそがん化しにくくなるのです。

細胞がガン細胞になる為にはテロメアーゼを復活させないといけないのです。

また、寿命が長くなるとDNAのミスが蓄積されてしまいます。

それが更に分裂して増えてもらってはこまります。

単細胞生物と異なり、私達多細胞生物は連合国家のようなもので一部が変化し離反すると崩壊の危険にさらされます。

更に追い討ちをかけるのがDNAの長さです。

30億もの塩基対を持つ人間がその情報を維持していくのは至難の業です。(勿論、成長の過程でどんどん変わって行っています。)

高度化した生物が行う有性生殖という仕組みは、本来、遺伝子の修復が目的だったと考えられています。

有性生殖の際、効率的な遺伝子修復が行われています。

先ほど出した高度な単細胞生物ゾウリムシも他の個体との接合によって遺伝子を修復しています。

他個体との接合なしにはゾウリムシでも最高で40年ほどしか生きていけないようです。


あと、植物が何千年も生きられるのに動物は長くても150年くらいしか生きていけない理由は他にもあります。

DNAの損傷だけであれば年齢に比例するのです。

となれば、動物だって何千年も生きられるはずです。

ここで問題になるのは、細胞の寿命です。

植物の細胞は果たして何千年も生きるのでしょうか?

実は違います。植物の殆どは死んでいて、生きているのはごく一部の細胞だけです。

長寿の植物でも細胞の寿命は大体30年ほどで、長いものでも150年ほどです。

つまり、多細胞を作るような高度な細胞が行き続けられるのは150年くらいが限界だということです。(動物では脳の細胞や心臓などは生まれてから死ぬまで同じ細胞です)

植物が何千年も生きていられるのは、動物以上に精密なDNAの複製やテロメアの伸張などによる古い細胞から新しい細胞への効率的な機能の受け渡しによるのです。

あと、植物の場合、細胞壁がありますので細胞へのダメージも動物細胞より少ないです。



次に寿命の原因についてはですが、これにはいろいろな説があり、完璧に正しいというものはないのですが、ある程度の説明が出来るものはいくつかあります。

たとえば、「厳しい環境を乗り越える為に死ぬ」というものです。

多くの被子植物や昆虫に見られる“一年”だけの寿命などがこれで説明できます。

これらは厳しい冬の環境を種子や卵、さなぎなどで乗り切るのです。

生体機能を極限まで下げて悪環境を生き抜くのです。

これは動物の“冬眠”と同じ理由ですね。

また、サケが海から川に上って、それからまた海に戻るのが(又は2度川に上るのが)きついのでそこで死んでしまうのも、似たような理由ですね。

戻る体力を残すくらいなら、精一杯川を上って出来るだけたくさんの子孫を残すという作戦です。

ただし、これらはごく一部の生物にしか適用できません。

他には、「子孫に場所を受け渡すため」も有名な理論です。

子孫の方が環境への適応力の高い個体がいる確率が高いという理由で、“古い”親世代は死んでいくのです。

この理論も、全てを説明することは出来ません。

種の繁栄、つまり、拡大を目的とするならば、親が死ぬ必要まではないような気がします。現に、細菌は死にません。

勿論、細菌に比べ大型生物には生息する場所が限られているということは確かにいえますが。


生きていく過程において、度重なる細胞分裂や紫外線・発がん物質などの外部刺激によってDNAが変化し、正常な機能を果たさなくなり老化するのですが、老化の詳しいメカニズムなどははっきりとは分かっていません。

まぁこれくらいで。今回は寿命を取り上げましたが、間違ってないかなぁって不安です・・・・

まぁいつものことですけど。

しかも、今回は特に長いのでところどころ間違ってるかもしれません。私も間違いに気付けば訂正しますが、読んでいて間違いに気付かれたら教えてください。

今までも何度か間違いを指摘されたことがありますし・・・。
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2005年05月25日

鎌型赤血球

鎌型赤血球というものをご存知ですか?

これは、アフリカの人などに多く見られる異型の赤血球です。鎌形の赤血球を持つヒトはマラリアにかかりにくいため、貧血になりやすいという生存に不利な条件があっても淘汰されていないんです。

ところで、鎌型赤血球は普通の赤血球と何処が違うのでしょうか?

まぁ結構専門的な話になってしまうのですが、実は、赤血球のヘモグロビンの一つのサブユニットのたった一箇所のアミノ酸が違うだけなんです。

ただ、一カ所とはいえ、違い方が問題なんです。

ヘモグロビンはαとβの二種類のサブユニットが2つずつ集まって出来ているのですが、そのうちのβの一つのアミノ酸がグルタミン酸からバリンに変化すると鎌形になります。

重要なのはグルタミン酸は親水性であるのに対しバリンは疎水性であるという事です。

以前にも記事に書きましたが、たんぱく質は変性すると“凝集”するのです。

ただ、この1箇所だけである為、ぐちゃぐちゃにからまるようなことはないのですが、その1点で周囲のヘモグロビンとくっついてしまうんです。

ヘモグロビン同士でぺたぺた凝集するんです。

それで血球が円形を取ることができなくなり、形が崩れてしまいます。

貧血になるのはその形の変化により血管などに引っかかりやすくなり、血流が悪くなるからです。

一方、その変形によってマラリア原虫は宿主(赤血球)の中に安定して存在することが出来なくなり、結果的にマラリアへの抵抗力が増すことになるのです。
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2005年05月24日

エイズウイルスの遺伝子数

たった、9個です。

この遺伝子数は作れるタンパクの種類と同じです。つまり、エイズウイルスは最大で9種類のたんぱく質しか作れないのです。

ヒトは1遺伝子で複数のたんぱくを作れますが、細菌などにこの機能はありません。この、たんぱく質を9種類しか作れないウイルスが感染するだけでヒトの生体システムは致命的なダメージを受けるのです。

因みにヒトの遺伝子数は3万弱といわれています。

話がそれますが、『ヒトの遺伝子は3万弱しかなかった』と聞いたことがありませんか?

これは1遺伝子=1たんぱく質の原則から予測されていた10万という数字が頭にあったからです。タンパク質は10万種類くらいと予想されていたのに、遺伝子は3万しかなかったんです。

つまり、実際は原則の3倍以上の効率でたんぱく質を作っていたのです。

1遺伝子は平均で3000程度の塩基対からなっています。遺伝子は3万個なので塩基対は1億弱ということになります。

ところが、ヒトのDNAは約30億もの塩基対を持っているのです。

つまり、残りの97%はたんぱく質を作る部分ではないのです。今でも、その97%の部分の機能は分かっていません。その部分が作るRNAが何らかの機能を持っているのではないかと予測されたりはしていますが、まだ分からないことだらけです。


話がそれましたが、それだけ複雑なシステムを持っている私たちですが、たった9種類の道具しか持たないエイズウイルスに致命的な打撃を与えられてしまうのです。
posted by new_world at 11:45| Comment(7) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月20日

細胞の品質管理

工場において、不良品が製造されるようになったらどうするでしょう。

1.まず、生産ラインを一時止めて
2.不良品の分析・修理を行い
3.直らない不良品は廃棄し
4.最悪、原因が分からなかったら工場を閉鎖する。

実は、細胞の中での品質管理も同じ方法です。

細胞は「たんぱく質」を作る工場と見ることが出来ます。

もし、たんぱく質を作る過程でミスが生じ、不良品が出来てしまったら、まず、細胞は「たんぱく質の合成をストップ」します。

そして、構造を「組み立てる物質」(分子シャペロン)を増やし、「不良品の修理」を試みます。

ただ、不良品が多すぎたり、修理できない場合は、そのたんぱく質を「分解」します。

それでもタンパク質合成が上手く行かないようであれば「細胞は自殺」します。

まさに、細胞は人間の工場と同じようなことを行っているのです。これが自然にできている訳ですから、凄いですよね。
posted by new_world at 12:15| Comment(2) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月18日

ゆで卵を生卵に? +プリオン病

ゆで卵が生卵になるような、焼いた肉が生に戻るような、そんな反応が最近発見されました。もちろん、そのような反応であって、今のところゆで卵を生卵にすることは出来ませんけどね。

一般に、熱を加えるとたんぱく質が凝集して固まります。ゆで卵になる現象で、これはたんぱく質の構造的な理由から生じる現象です。

たんぱく質はアミノ酸の鎖です。アミノ酸には親水性のものと疎水性のものがあるのですが、水に満たされている細胞内では疎水性アミノ酸同士は集まろうとします。

油が水の上で丸くなるのと同じです。

そのため、細胞内でたんぱく質を合成する時には疎水部分をカバーしながら組み立てる(分子シャペロン)のですが、出来上がったらカバーは外れます。

出来上がったものは“内側”に疎水部分が来るようにできています。

ところが、熱を受けてアミノ酸の鎖が動いてしまい、疎水部分が表に出てしまうのです。

細胞内には大量のたんぱく質が存在し、たんぱく質内には疎水部分は存在します。

そのため、表面に出てしまった疎水部分が互いにくっつきあってしまうのです。

そして、大きな塊になって固まります。

凝集によって、アミノ酸の“鎖”であるたんぱく質は“鎖が絡まった”ような状態になってしまうのです。


勿論、それの防御・再生システムも存在します。

多少体温が上がっても体が固まらないのはそのためです。

ところが、強力に熱ストレスが加わると、防御・再生システムが間に合わず固まってしまいます。

これまでは、“正常な折り畳みが解かれた”状態から再生するシステムの存在は明らかになっていましたが、“凝集してしまった”ものを再生するシステムは見つかっていませんでした。

ところが数年前、HSP104という分子シャペロンが大腸菌から発見されたのです。

これはいわば“ゆで卵”になったものを“生卵”に戻す、“ぐちゃぐちゃに絡まった糸をほぐす”ようなことを行っているのです。


どうやって解いているのかはまだ分かっていないそうです。


たんぱく質の性質は中身よりも実は形が大きな役割を果たしています。中身より外見なんです。ですから、熱運動によって形が崩れたら正常に機能しなくなるのです。

私も最初に習った時は違和感を感じたのですが、実際、アミノ酸配列が80%以上異なるたんぱく質が形が似てるという理由で同じ機能を持っていることはよくあります。

それに同じアミノ酸配列でも性質が全く異なるものもあります。形が違うのです。

その代表が“プリオン”です。

聞いたことがあると思いますが、クロイツフェルト・ヤコブ病や狂牛病の原因とされるたんぱく質です。

今の所、DNA(RNA)のない唯一の感染症です。細菌・ウイルスとは違います。

人間を含め、プリオンと呼ばれるたんぱく質は体内に存在します。

プリオン病を起こす異常プリオンは正常プリオンと同じアミノ酸配列ですが“形が違う”のです。

しかも、仕組みはよく分かっていないのですが、この異常なプリオンが正常なプリオンに接触すると正常なプリオンの形も異常なプリオンと同じものになってしまいます。

正常プリオンは脳に多く存在するので脳の働きに悪影響を及ぼすのです。

まぁ病原菌よりも毒薬に近いですね。しかも、体内で“増える”毒薬です。


このようなたんぱく質の形の変化による病気をフォールディング病といいます。フォールディングとは折り畳みという意味です。

一般に変性したものは凝集し、体積が減ります。しぼむのです。だから、狂牛病の牛の脳などは小さくなっています。

プリオンの機能や異常プリオンの増加のシステムは判明していません。感染方法も分かっていません。

牛to牛であれば脳の一部を1mg食べさせても感染するのに対し、牛to人の場合はそこまで感染力はないと考えられていますが、よくわかっていません。

アメリカ人がインタビューで『オレは強いからかからないよ』とか言っていましたが、普通の病気とは異なりますので、強い齢の話ではありません。

いくら健康でも、フグを食べればしびれます。
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2005年05月16日

胎児の肺の中の水

胎児の肺は肺水という液体で満たされています。
しかし、生まれてくるときには肺に肺水はありません。

生まれるときに吐き出すのでしょうか?

実は違います。

昔は出産時に吐き出すとも言われていたのですが、肺が吸い込むことが分かっています。ヤギで実験も行われました。

実験は単純です。胎児の喉をふさいでおくのです。

喉をふさいだヤギの胎児が生まれたとき、肺は空だったそうのです。

更なる研究の結果、生まれる際だけ、肺でAQP4という水を通す膜タンパク(水チャネル)が大量に発現して肺水を取り込んでしまうことが最近分かったそうです。

生き物って、ほんと、うまくできているものです。
posted by new_world at 19:01| Comment(3) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月27日

植物に不要な光

植物が生きていく上で不要な光の色は何色か分かりますか?

答えは緑色です。

勿論、全く要らないというわけではないかもしれませんが、赤や青の光に比べて必要量が少ないのは明らかです。

なぜなら、多くの植物が緑色だからです。

緑色ということは緑色を反射しているということで、使っていないということです
考えれば誰にでも分かることですが、案外抜けている常識です。
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2005年04月19日

ミトコンドリア

ミトコンドリアという名前はよく知られています。また、それが元々は別の生物だったことも多くの人が知っていると思います。

これは10年ほど前の映画“パラサイト・イブ”で取り上げられたからでしょう。しかし、ミトコンドリアが、“よそ者”だと考えられる理由は知らない人が多いでしょうね。まぁ結構ここまでくると専門的になるので。

今回は、その理由を簡単に紹介したいと思います。

1.独自のDNAを持つこと。
独自のDNAを持ち、(たんぱく質を組み立てる)リボソームやRNAを自前で作ることが出来ます。(ただ、多くを宿主に依存し、必要最低限だけを残しています)

2.膜が二重であること。
まぁ膜自体は脂質二重膜なのですが、それが更に二重にあるんです。そして、内側の膜だけミトコンドリア由来の物質でできています。

3.自分で細胞分裂する。
まぁそのまんまです。宿主の分裂周期に関わらず独自に分裂します。

こんな感じです。独自の遺伝子を持ち、境界があり、宿主とは別の周期で増える・・・まるで別の生物が体の中に入ったみたい、と思えますよね。
posted by new_world at 22:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パスツールの白鳥の首

150年前まで細菌は自然に生じるものだと思われていました。というのも、当時の技術では菌が入ってこない容器を作ることが出来なかったからです。

食べ物からは“自然と”カビが生えるのです。

この、細菌の自然発生説、すなわち、生命の自然発生説を否定したのがパスツールの白鳥の首型フラスコです。

白鳥の首.jpg


この長い首のお陰で細菌も入り込むことが出来ないそうです。(ちょっと信じられませんが・・・)


これが決めてとなり、生命の自然発生説が否定され、“Omnis cellulae e cellule”(細胞は細胞から生まれる)の細胞説が確立されます。(細胞説は以前からあったものです)

余談ですが、パスツールの作った白鳥の首型フラスコは現存し、今でも細菌は進入できていないそうです(本当かどうかは定かではありません)。

難攻不落というわけです。
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2005年04月18日

目の性能

今度は目の性能について書きたいと思います。

人間の目と高性能カメラ、どちらが光に対して敏感だと思いますか?

実は、人間の目です。

人間の目はなんと“光子一つ”を認識できるのです。いくら高性能カメラとはいえ、そこまでの性能はまだありません。

それに、人間の目は1μs(100万分の1秒)のコマ送りです。その点もカメラは追いつけていません。

では、なぜ暗闇で人は見えないのにカメラは見えるのでしょうか?それは情報の処理の仕方に違いがあるのです。

人間の視覚はほぼリアルタイムに情報を処理していきます。つまり、1μs(100万分の1秒)ごとの映像をそれぞれ処理しているのです。

ところが、カメラは違います。

カメラはその何万倍もの時間、光を蓄えるのです。

ですから、人間より何万倍もコマ辺りに光を捉えることができるのです。

人間も光り情報を蓄えることが出来れば夜中でも目が見えるかもしれません。そういえば、カメラの中には赤外線が感知できるのもありますね。赤外線は人間には見えませんね(この表現はちょっと変ですね・・・見えないから赤外線です。)
posted by new_world at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 生命の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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